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Festival Chopin a Paris
6月からやっていたFestival Chopinのラストを飾るエルバシャさんを聴きに。パークバガテルの会場は、森と美しい庭に囲まれた瀟洒な建物だ。しかし中はかなりしょぼく、公民館みたいに造花で囲まれた小さなステージと、パイプ椅子が並んでいる。植物園なんだから花ぐらい本物使えばいいのにと思うが、インスタ見てると前からこうだ。
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プログラムはベートーヴェンのソナタ12番「葬送」、15番「田園」。それからショパンのノクターンとポロネーズ2つ。
30度近い温室みたいな室内で、聴衆もエルバシャさんも汗だく。客層は裕福そうな白人のご老人ばかりで、演奏が始まってもなかなか静まらない。補聴器が鳴り止まず、キーホルダーと鈴が音を立て、誰かがコインをひっくり返す。私は鼻息の荒いおじさんと、軽やかな曲になると手でパタパタとリズムを取ってしまう香水の濃いおばさんに挟まれた。
スタインウェイも湿度を含んでボテボテだが、それをどうにかすごい技術でコントロールし、高音域だけを繋ぐようにしてかろうじて美しさを保っている。演奏者がハンデの多い環境でいかに集中を保つかの修行みたいだったが、前半のベートーヴェンが終わる頃には、調整したようにほぼ全部の音が整った状態になっていた。
公民館的空間に異常なレベルの音楽がシュール。休憩を挟んだショパンは力強さよりもナイーブさを重視した演奏。最後の英雄ポロネーズは集中が切れた気がした。熱中症になってもおかしくないような状況だったからかもしれない。
バスティーユデイだったので、アンコールで革命を弾いてくれた。最低限しかペダルを使わない、たぶんショパンの時代の音に近い響き。
前半行儀が悪かったのに、最後にはお客さんも音楽に引き込まれて静かになり、すごく反応が良かった。
日本からわざわざ行って、そんな環境でいいのか、と思うかもしれないが、折込済なので驚かない。そもそもエルバシャさんの演奏は、ベヒシュタインでなければ2割減なのだ。私の知る限り、専属の阿部さんという人に調律してもらったベヒシュタインの時がベスト。それが無理だからこうして来ているのである。ヨーロッパに聴きに来ると、地方都市にまでレベルの高いピアノが行き渡っている日本がいかに恵まれているかよく分かる。聴衆も総じてちゃんとしている。
日本ではコロナ以降サイン会はないのでさっと帰ろうとしたが、どうもサイン会があるみたいだった。サイン会に参加して、少しお話できました。日本から来たというと、ちょっとひいていた。
(2022.7.14)