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自然数の累乗の和の公式:「覚える」ではなく「導く」力を身に付ける

1 はじめに

 自然数の累乗の和の公式
・$${1+2+3+…+n=\frac{1}{2}n(n+1)}$$
・$${1^2+2^2+3^2+…+n^2=\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)}$$
 この2つの公式は、高校では覚えさせられます。
 ではこの公式を覚えた人が、次の問題を解けるでしょうか?九州大学で出題された問題です。

(問題)
 $${1^3+2^3+3^3+…+n^3}$$の答えを、$${n}$$を使って表しなさい。

 おそらく解けないでしょう。理由は、累乗の和の公式がどのように導かれたのか理解していないからです。

 この記事では、上の公式がどのように導かれるのか、それを使えば
$${1^3+2^3+3^3+…+n^3}$$の公式を導けるのか考えていきます。
 よければ最後まで読んでいただければ嬉しいです!!
 また、この2つの公式
・$${1+2+3+…+n=\frac{1}{2}n(n+1)}$$
・$${1^2+2^2+3^2+…+n^2=\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)}$$
については、足す順番や図形を使って導くこともできます。それは以下の記事で書いてます。

 今回は、式変形を使って公式を導く、という考え方で記事を書きます。

2 超重要!!数字が打ち消し合ってくれる式

 まず、この式だけは覚えてください。
 $${f(k)=k(k+1)}$$ ・・・①

3 超重要!!の式を使って、 1+2+3+…+nの公式を作る

 ①の式に、$${k=1}$$を代入すると、
 $${f(1)=1×(1+1)=2}$$
 ①の式に、$${k=2}$$を代入すると、
 $${f(2)=2×(2+1)=6}$$

 次に①の式の$${k}$$を$${k-1}$$に変えます。
 $${f(k-1)=(k-1)k}$$ ・・・②
 ①-②を計算すると、
 $${f(k)-f(k-1)=k(k+1)-(k-1)k}$$ ・・・③

 ③の式の右辺の$${k}$$を$${1, 2, 3,  … ,n}$$と変化させると、
 $${k=1 1×2-0×1}$$
 $${k=2 2×3-1×2}$$
 $${k=3 3×4-2×3}$$
・・・
 $${k=n n(n+1)-(n-1)×n}$$

 すべてたすと、1×2や2×3などはそれぞれ打ち消し合うので、
 $${n(n+1)-0×1}$$だけ残る。

 よって、
 $${\displaystyle\sum_{k=1}^n k(k+1)-(k-1)k=n(n+1)}$$ ・・・④

 さて、④の左辺は
 $${\displaystyle\sum_{k=1}^n k(k+1)-(k-1)k=\displaystyle\sum_{k=1}^n k^2+k-k^2+k=\displaystyle\sum_{k=1}^n 2k=2\displaystyle\sum_{k=1}^n k}$$
 ④の式は、
 $${2\displaystyle\sum_{k=1}^n k=n(n+1)}$$
 だから、
 $${\displaystyle\sum_{k=1}^n k=\frac{1}{2}n(n+1)}$$
 できましたね!!めちゃくちゃ手間がかかって大変だし、こんな式変形したくないと思います。ですが、これが$${1^3+2^3+3^3+…+n^3}$$の公式を作る場合は役に立ちます。なぜなら、$${1^3+2^3+3^3+…+n^3}$$はこの式を使わないと、公式を作れないからです。

4 超重要!!の式を使って、1^3+2^3+3^3+…+n^3の公式を作る

 では、改めて超重要の公式に登場してもらいます。
 $${f(k)=k(k+1)}$$ ・・・①
 しかし今回は、少し形を変形して
 $${f(k)=k(k+1)(k+2)(k+3)}$$ ・・・⑤
 を使います。これは、$${k^3}$$を作るためですが、後で示します。
伏線回収します!!

 この後の流れは、「3 超重要!!の式を使って、1+2+3+…+nの公式を作る」で示した流れと同じです。
 ⑤の式の$${k}$$を$${k-1}$$に変えます。
 $${f(k-1)=(k-1)k(k+1)(k+2)}$$ ・・・⑥
 ⑤-⑥を計算すると、
 $${f(k)-f(k-1)=k(k+1)(k+2)(k+3)-(k-1)k(k+1)(k+2)}$$ ・・・⑦

 ⑦の式の右辺の$${k}$$を$${1, 2, 3,  … ,n}$$と変化させると、
 $${k=1 1×2×3×4-0×1×2×3}$$
 $${k=2 2×3×4×5-1×2×3×4}$$
 $${k=3 3×4×5×6-2×3×4×5}$$
 ・・・
 $${k=n n(n+1)(n+2)(n+3)-(n-1)n(n+1)(n+2)}$$
 すべてたすと、1×2×3や2×3×4はそれぞれ打ち消し合うので、
 $${n(n+1)(n+2)(n+3)-0×1×2×3}$$だけ残る。
 よって、
 $${\displaystyle\sum_{k=1}^n k(k+1)(k+2)(k+3)-(k-1)k(k+1)(k+2)}$$
$${=n(n+1)(n+2)(n+3)}$$ ・・・⑧

 さて、⑧の左辺は
 $${\displaystyle\sum_{k=1}^n k(k+1)(k+2)(k+3)-(k-1)k(k+1)(k+2)}$$
$${=\displaystyle\sum_{k=1}^n k(k+1)(k+2)(k+3-k+1)}$$
$${=\displaystyle\sum_{k=1}^n 4k(k+1)(k+2)}$$
$${=\displaystyle4\sum_{k=1}^n k(k+1)(k+2)}$$

 よって、
$${\displaystyle4\sum_{k=1}^n k(k+1)(k+2)=n(n+1)(n+2)(n+3)}$$

あとは、式変形です。
$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k(k+1)(k+2)=\frac{1}{4}n(n+1)(n+2)(n+3)}$$
$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k(k+1)(k+2)=\frac{1}{4}n(n+1)(n+2)(n+3)}$$
$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k^3+3k^2+2k=\frac{1}{4}n(n+1)(n+2)(n+3)}$$ 
※この$${k^3}$$を作るために⑤の式にしたんです!!(伏線回収(笑))

$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k^3+\sum_{k=1}^n3k^2+\sum_{k=1}^n2k=\frac{1}{4}n(n+1)(n+2)(n+3)}$$
$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k^3+3\sum_{k=1}^nk^2+2\sum_{k=1}^nk=\frac{1}{4}n(n+1)(n+2)(n+3)}$$

$${\displaystyle\sum_{k=1}^nk^2=\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1), \sum_{k=1}^nk=\frac{1}{2}n(n+1)}$$だから、
$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k^3+3×\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)+2×\frac{1}{2}n(n+1)=\frac{1}{4}n(n+1)(n+2)(n+3)}$$
$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k^3+\frac{1}{2}n(n+1)(2n+1)+n(n+1)=\frac{1}{4}n(n+1)(n+2)(n+3)}$$
$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k^3=-\frac{1}{2}n(n+1)(2n+1)-n(n+1)+\frac{1}{4}n(n+1)(n+2)(n+3)}$$

右辺を共通因数でくくる。絶対展開しない!!因数分解できなくなります!
$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k^3=\frac{1}{4}n(n+1)(-2(2n+1)-4+(n+2)(n+3)}$$
$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k^3=\frac{1}{4}n(n+1)(n^2+n)}$$
$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k^3=\frac{1}{4}n(n+1)n(n+1)}$$
$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k^3=(\frac{1}{2})^2n^2(n+1)^2}$$
$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k^3=(\frac{1}{2}n(n+1))^2}$$
公式を導きました。(ふぅ~)

計算疲れました。。。

5 一般化できるの??

$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k}$$の公式を導く過程で出た式
$${\displaystyle\sum_{k=1}^n 2k=n(n+1)}$$
$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k^3}$$の公式を導く過程で出た式
$${\displaystyle\sum_{k=1}^n 4k(k+1)(k+2)=n(n+1)(n+2)(n+3)}$$

 では、$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k^a}$$の公式を導く過程で出てくる式を考えます。
$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k(k+1)(k+2)…(k+a)-(k-1)k(k+1)…(k+a-1)}$$を用意します。

これを計算すると、やっぱり相殺して残るのは、
$${n(n+1)(n+2)…(n+a)}$$だけです。

相殺し合う

 では、左辺の$${k}$$の式を変形します。
 $${k(k+1)(k+2)…(k+a)-(k-1)k(k+1)…(k+a-1)}$$
 $${=k(k+1)(k+2)…(k+a-1)(k+a-k+1)}$$
 $${=k(k+1)(k+2)…(k+a-1)(a+1)}$$

 よって、$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k^a}$$の公式を導く過程で出てくる式は、
$${\displaystyle\sum_{k=1}^n (a+1)k(k+1)(k+2)…(k+a-1)=n(n+1)(n+2)…(n+a)}$$
 この式を利用すれば、$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k^a}$$の公式を導くことができます。

6 おわりに

 今回の記事では、自然数の和や2乗の和の公式は、ただ「覚える」のではなく「導く」ことで、その公式ができた本質の式$${f(k)=k(k+1)}$$があることが分かります。「1 はじめに」に書いた入試問題は、自然数の累乗の和の公式の「本質の式」を理解しているかを知りたかったんですね!!
 ちなみに、今回は自然数の自然数乗の和で考えました。「自然数乗」を「負の整数乗$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k^{-1}}$$」や「有理数乗$${\displaystyle\sum_{k=1}^n k^\frac{1}{2}}$$」にするとどうなるのか気になったので、理解できたらその内容を書きたいと思います。
 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!

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