私のコンセプト

こんにちは。理学療法士のyuzuです。
 
本日はブログを読んでいただきありがとうございます。
 
これまで理学療法士として主に整形外科疾患の治療に携わってきましたが、自らの専門性を痛みや痺れに対する徒手療法と位置付け数多くの研修会に参加してきました。免許取得後の約20年間で経験してきた様々なテクニックのどれもが魅力的でしたが、その中でも整形徒手療法の国際コースで学んできたことが今日の私自身のコンセプトの中心となっています。今回は私が臨床で実践している評価・治療技術の一部をご紹介します。
 
痛みや痺れの評価について
 
痛みや痺れは病理学的な所見が似ていてもいくつもの要因が複雑に絡み合って症状を引き起こしていることから『この疾患の場合はこうすれば治る』といった決まった方法はないものと思います。確かに画像診断や様々な検査技術の進歩より診断能力は飛躍的に向上しています。しかしそれだけでは多様性のある症状の要因を解明するには十分とは言えません。更に必要となるものは痛みの場所を特定し、患者の訴える症状と体の徴候(検査所見)との関連性(表1)を導き出す評価であると思います。
 
         表1 体性機能障害の一般的な特徴
●症状(病歴):

・疼痛、筋力低下、硬直、知覚麻痺、頭痛、めまい、嘔気など
徴候(身体の検査所見)
 A.軟部組織の変化
  ・組織の緊張の変化、弾力性、形態、皮膚の手触り、色調、温度など
 B.機能的変化
  ・筋力低下、耐久性、協調性
  ・可動性の異常
    ・関節(Hypermobility/Hypomobility)
    ・軟部組織(たとえば拘縮)
    ・神経と血管の要素(絞扼によるもの/神経の過敏状態)
(Frddy M Kaltenborn 著、富雅男 訳:脊柱の評価とモビリゼーション.医歯薬出版株式会社,東京,1997.より一部改編.)
 
評価の流れ
 
現在のJAOMPT(日本運動器理学療法学会)の前身であるJOMTA(日本整形徒手療法協会)が当時滋賀県で開催していた『Kaltenborn-Evjenth International:KEI』を軸とする『整形徒手療法Orthopaedic Manual Therapy:OMT』認定コースの手順(表2)に従い評価を進めていきます。KEIでは、痛みの部位の特定のために他の整形外科テストとともに『症状の局在化テスト』といった独自性のある評価法を用います。このテストは痛みの境界でわずかに関節を動かすことで痛みを誘発あるは緩和することで痛みの発生源を特定するものですが、論理的な思考能力、正確な手順、検者の技術の3つの要素がそろわなければ臨床で用いることは難しい方法です。しかし、病巣を局在化し、評価をより特異的なものにするのに非常に有効な方法となりますのでおすすめしたい評価法の一つです。
 
           表2 KEIによる評価手順
1.問題のある大まかな部位を特定する:
 
 スクリーニングテスト/病歴聴取/視診・触診・自動運動
2.問題のある関節やセグメントを特定する:
  症状局在化テスト(誘発・緩和テスト)
3.問題のある組織(神経・筋・靭帯など)を特定
  機能テスト(自動・他動運動/並進性のJoint play/抵抗運動テスト)
4.総合的に理学的診断:
  神経と血管の検査、医学的診断としての画像診断・臨床検査・電気診断      
  なども考慮
 ※診断に基づき試験治療を実施し、治療効果が認められれば、診断が正し
  ものと考えられるためさらに複数の治療手技を実施

症状の発生源となっている関節や脊椎分節がわかれば、さらに当該部位やその周辺領域の関節や軟部組織の機能テストへと進み、症状との関わりのある徴候を明らかにすることにより組織を予測することができます。最終的に評価により知りたい内容をまとめると表3のようになります。
 

              表3 評価のまとめ
1.姿勢や動作によりどこに疼痛が生じるか?
2.神経学的徴候
3.領域の特定
4.問題の脊椎分節はhyperかhypoか?
5.組織の特定
6.影響を与えている因子(生体力学的因子/行動的因子/中枢神経による処理過程の不適合など)

※例:頸椎伸展時の痛みの原因が、C2/3・C7/T1のhypomobilityに伴うC6神 経根の刺激症状(C5/6:hypermobility)。長時間のデスクワークによる習慣的頭部前方偏位姿勢が影響している。
 
また近年は世界の徒手理学療法はクリニカルリーズニングに基づき、エビデンスの高い評価方法がより重要視されるようになっています。クリニカルリーズニングとは医学的に原因と結果を考える診断的推論と心理社会的にみていく物語的推論の両方から情報を得ることで総合的な診断を行うものとされています。症状が組織の状態(徴候)と一致しない場合は、脳による痛みの情報を処理するシステムや出力システム(自律神経系、内分泌・免疫系など)などの不具合が生じている可能性についても評価が必要となります。
 
アプローチについて
 
IFOMPT(国際徒手理学療法連盟)は特定の手技に偏るのではなく、エビデンスに基づく幅広い徒手理学療法を推奨しています。私は『KEI』(表4)のDiploma、『Mulligan concept』(表5)のCertified Mulligan Concept:CMPを取得したこともありこれらのテクニックが中心となっておりますが、神経系、筋系、関節系に対するテクニックや深部筋のトレーニング(スタビライゼーション)、セルフエクササイズなどバリエーションに富んだ内容となっているため幅広い症例に柔軟に対応することができます。また他にも様々な徒手療法やリンパドレナージなどのテクニックも学んできましたのでそれらの個性を生かしつつ、軸は運動器徒手理学療法ですが様々なテクニックを適宜用いています。
 

           表4 KEIのテクニック
1.軟部組織モビライゼーション(マッサージ/ストレッチ)
2.関節モビライゼーション
3.神経モビライゼーション
4.関節スタビライゼーション、リハビリテーショントレーニング
5.スラストテクニック
6.自己治療のテクニック(Evjenthによるオートストレッチングなど)    

        表5 Mulligan conceptによるテクニック
1.NAGS(椎間関節自然滑走法)
2.REVERSE NAGS(逆椎間関節自然滑走法)
3.SNAGAS(持続的椎間関節自然滑走法)
4.MWMS(四肢運動併用モビライゼ-ション)
5.SMWAMS(上肢運動併用脊椎モビライゼーション)/SMWLM(下肢運動併用脊椎モビライゼーション)
6.PRPS(疼痛解放現象テクニック) など

 

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