嘘をつく


「僕は嘘が嫌いだ。」


という書き出しから始まる過去のブログを読んだ。
2020年7月。もう一年半ほど前に書いたものだ。

誰にも見せていない、リンクもどこにも貼っていない、自分の為だけのブログのひとつ。

その内容は、「嘘は嫌い。でも、それで人を幸せにできるなら僕は嘘をつこう」みたいな話だった。

つまり、一昨年の僕は、嘘をつくことを「妥協」し始めていた。
そんな自分も、嘘で作った笑顔も、嫌いだと思いながら。


そんな過去の僕を読み返して、再会して。
そっか。と、僕は思った。

もう何も迷わずに嘘がつける今の僕は。


もう「大丈夫」も、「すごいね」も、「面白い」も。
「何か嫌なことあった?」に対する「なにもないよ」も。

機械のように、躊躇いもなく、レトルトのように、そこにあるものを取り出すように、用意することができる。

もはやそれを嘘だとも思っていないかのように。


一年半で随分変わったんだなあ、と感慨に耽ってしまう。

全ての真実を共有しなければ愛じゃない、と。
幼くも純粋に、言い張っていた過去の自分がやけに遠く見えて。


自分も大して意識しないまま尖った部分が削られていって、どんどん「普通」になっていく。


変人であることがいいことだとは思わない。
空気を読めない人はあまり好きではないし。

でも、普通になっていけばいくほど、変わらず「子供」を飼っている「変人」への憧憬は募るばかりで。


頑固でこだわりの強かった私も、社会に溶け込んでいく。

透明になっていく。




私は、今日も嘘を吐く。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?