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「タイポグリセミア」が減っていく社会

町中で見かけたこのカラオケ屋の看板。一瞬「レバノン」って読みませんでした?読みましたよね?
このカラオケ屋さんの店名「ノレバン」最近「レバノン」は、元ルノー・日産・三菱アライアンスの社長兼最高経営責任者(CEO)カルロス・ゴーンさんが日本から出国した先で、ラジオでもネットでもテレビでもよく聞く単語。年明けから「レバノン」「レバノン」とよく耳にするので、この「ノレバン」の4文字を見るても、脳内が「レバノン」に変換したのかもしれない。

これとよく似た現象で「タイポグリセミア」というのがあります。単語を構成する文字を並べ替えても、最初と最後の文字が合っていれば読めてしまう現象のことである。

こんちには みさなん おんげき ですか?

これは脳の中で「こんにちは みなさん おげんき ですか?」と変換され読めてしまうという現象である。しかしこの「タイポグリセミア」は語彙力がないと発生しない。上記の日本語のあいさつ文も当たり前だが日本語を知らないと読めないし、タイポグリセミア現象も起こらない。
そこでふと昨日読んだこの記事が頭をよぎりました。

経済協力開発機構(OECD)が2019年12月3日に発表した国際的な学習到達度調査「PISA2018」の結果。参加国の中で日本は「読解力」15位、「数学的リテラシー」6位、「科学的リテラシー」5位といずれも前回調査時より低下。「読解力」は、調査開始以来過去最低となった日本の現状ついて国立情報学研究所教授であり「教育のための科学研究所」代表理事・所長も務める新井紀子さんのインタビュー記事です。

「読解力とは何か」については、ご宗旨がいろいろあり、ひとつに決めることはできません。ただ、PISA調査で目指している読解力は、複数の情報、複数の長文を批評的に読んで、自分の立場を明確にすることが求められている。15歳が今後生き抜いていく上で目指す読解力としては正しいと思います。
ですが、このレベルの読解力に突然持っていくことはできないわけで、その前に基本的な読み書きができないと困るのです。グループディスカッションをさせるにしても、クラスメートの話を聞きながらまとめるとか、メモをするとかいう能力は必須になるわけですから。改めて文章が読める、とはどういうことかというと、まず字が読め、その次に単語レベルで読める。教科書が読めるためには、読むために必要な語彙量の95〜98%くらいはなくてはなりません。
例えば「徳川家康」などの初めての言葉に出合った時も、他の言葉が分かっていれば、「徳川家康っていうのは、徳川幕府を作った人で……」と分かり、新たに徳川家康という語彙を獲得できます。まず「これは人の名前なのか、物の名前なのか?」という分類が大体できなければ厳しい。分類ができるためには、幼児期の、字を書かない段階で、耳から聴く語彙が相当量ないと厳しいでしょう。
私たち世代(40代以上)は主に家庭の会話とテレビとラジオから語彙を獲得してきました。例えば「水戸黄門」を見ていたから、印籠とかお代官をある程度共通認識として知っていた。「まんが日本昔話」の視聴率は30%程度でしたから、就学援助を受けている家庭も含めてほとんどの子どもが見ていました。ラジオとテレビには、階層に依らずに語彙量を揃える上では、メリットがあるんですね。ラジオとテレビ離れがここ10年で一気に進み、みんなが同じ語彙を持っているという前提は、瓦解したと言っていいと思います。

この記事はとてもすばらくし、後ろの方にこう結論がかかれている。

浜田:新井さんは、AIの時代になるからこそ、人間は「読解力」が必要だとおっしゃっています。なぜ「読解力」なのか改めて教えていただけますか?
新井:読解力は目標ではありません。読解力は、よりよく学んでいくためのスキルです。学び続けることが求められる21世紀社会に必須なスキルだという位置づけです。
先ほどもお話ししたように、読み書きは人類にとって不自然な行為ですが、21世紀の知識基盤社会においてはその能力の質によって、人生が大きく左右されてしまう。だから、どうしても全員に身に着けさせなければならない。
浜田:読解力があって教科書をきちんと読める状態であれば自力で学ぶことができると。それができれば親の経済力の格差も都市と地方の格差も乗り越えられるとおっしゃっていますね。
新井:そうです。日本の公教育以外で格差をなくす平和的な方法はないと思っています。格差を解消する手段として、経済学的なデータでよく言われるのが、「戦争が起これば格差が減る」ということで、、もう1つ希望があるのが公教育です。戦争をしないことを選ぶのであれば、公教育をしっかりするしかないんです。
ちなみにアクティブラーニングは格差を広げてしまいます。それは、戦後最初のアメリカ主導の学習指導要領である、デューイ式の「生活単元学習」の失敗で明らかになっています。

なるほどなと納得する自分と、語彙力が落ちた世代の子は知ってる語彙が減るのだから「タイポグリセミア」も減るのかなと本題とは別のことにものすごく引っかかる自分がいました。

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