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2年ぶりの「らーめん大尊」を一人きりで食べて

皆様方、いかがお過ごしでしょうか。2月に入ってから初のエントリになります。僕の方はもうすぐ春夏の植付が始まります。二週に渡る会議の結果、植付の場所も詳細も詰められたので急ぎガントチャートやマニュアルを作成している日々です。新しく入ってきて下さったスタッフさんもいらっしゃるので、そうした方々も作業をスムーズにこなしていけるようにアシストするのもこれからの僕の役割ではないかと思いますし、これからの農場を考えれば必要な業務であり、僕のやるべきことだと見定めているところです。

通り過ぎていった日々はもう戻ることはありませんが、去っていった人たちの分も続けていく。これが僕が背負うべき十字架なのかもしれないと思うことがあります。誰が言ったわけでも、お願いをしてきた訳でもありません。僕自身が勝手にそう考えているだけですが、改めて自分自身が今どこにいて、これからどうしていくべきなのか。考えさせられることがあった場面がありました。相模原市の橋本にある、とある醤油味のラーメン屋での話です。

先日、納品先であるA社に行く日がありまして、かつて農場にいたKSさんとよくお昼休みの時に一緒に車を走らせて向かっていた橋本にある「らーめん大尊」さんが通り道にあったことを思い出しまして、久しぶりに二人でよく行っていたこのラーメン屋へと行きました。毎週土曜日に行っている行きつけの農場近くのラーメン屋ではなく、あえてこの「大尊」へと来ました。一人で来るのは初めてでした。何だか懐かしい気持ちになったのは言うまでもありません。

ドアを開けて暖簾をくぐればあの時と同じ店主とその奥様。そして、カウンターに腰掛けた時に「ああ、KSさんもこうして隣に座ってたっけ」と思い出さずにはいられませんでした。変わったといえば机の両端に置いてある飛沫防止のアクリル板があることくらいでした。

ラーメン大盛りを頼ませて頂きました。いつも行っている常連のラーメン屋の醤油ラーメンと比べたら醤油の味は濃く、喉が渇きます。けれども、相変わらずの美味しい味でした。食べ終わった時に幾許か、寂寞の思いが込み上げてきました。ここには詳しくは書けませんが、KSさんが諸事情で「退職します」という連絡をしてきてから、悪いことなのか、それとも何と言えばいいのか分かりませんが、Oさんも年が明けてから契約が満了して抜けることとなりました。

Oさんが抜けて考えたのは「自分たちがやるしかない」ということでした。自分の中の錆び付いたエンジンが回り始めた瞬間だったように今ならば思えてきます。今はもう居ませんが今もたまに会う、かつては農場にいた、信頼しているとある方には

「自分がやったらしくじって終わるかもしれない。そうなってしまったら関係者の皆さんには申し訳なく思う。だけど、全力でやってみる。誰もやれないのであれば、俺がやるしかないと思ってる。誰かが望んでいるわけでも、感謝してくれる訳でもないだろう。言うなれば誰も俺には期待すらしてない状況であることは間違いない。バカだなと笑われるのも分かってはいるけれど、俺はやるよ。このまま舐められ続けて終わるつもりはない」

と本音を吐露していました。その方はただ一言「お前ならやれる」と言ってくれました。言葉は短くとも、その言葉の温度は今までの時間軸の中から感じ取ることが出来ました。あの時の僕にはそれだけで十分でした。

そんな状況下でしたが、それが良かったかもしれないと僭越ながら考えています。自分でやれる自信も付きました。誰も期待していないならその分思い切ったことが出来る。ただ、それだけでした。烏滸がましいことこの上ありませんが、今ならKSさんに対して僕なりに作業指示も出せるかもしれない。そんなことを考えたりもしました。

夏野菜の出来栄えは僕が全てのことをやった訳ではないにしろ、周りの方からもスタッフの皆さんからもお褒め頂くことが多くなり、初めて自分もやれたのだという実感を手に入れることが出来ました。今までは何もかもをマイナスに考えがちでしたが、ようやくこの1年間で「これだけのことができるようになれた。やろうと思えば何とかなる」という感触を得られたことは大きかったです。

自分のような人間でもやれたのだから、誰かしら人生を1cmずつでも変えようと思ったら、何か一つだけでもいい。打ち込めるものが出来たら変えていけるはずです。KSさんも含めて何もメッセージが送れないかもしれないことは重々、承知しております。KSさんを含めた、かつて農場を去っていった方々もこのエントリやSNSを見て下さるかもしれない。いや、もう既に見て下さっているかもしれない。そういうことに思いを馳せながらも辞めていった方々のこれからの人生を僭越ながら、心より応援していくと同時に、僕も変えるところは変え、変えてはならないところは変えないというメリハリを付けながら進んでいきます。来ることは無いかもしれませんが、会える時が来るのであれば何か一つ土産話を持っていけるようにしたいと考えています。

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