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ムチと十字架、そして婆

今はすっかりスポーツジム経営に勤しんでいるコナミですが、諸兄もご存知の通り様々なロングランのシリーズを抱えていて、その中でも一際老舗となるのが「悪魔城ドラキュラ」シリーズです。

ファミコンディスクシステムへの参入第一弾として初代が発売されてから34年が経ちますが、その間に出た関連作品数は優に30本を超えて、その時代ごとに装いを変えながら連綿と続いています。

初代からFC三部作を経てアーケード、GB、SFC、X68K版までのゴシックホラーを基調とした初期群。

ゲームグラフィックが鮮やかになり、パッケージイラストもアニメ調の絵柄を採用、基本システムは踏襲しつつ方向転換を感じさせる中期作品。

イラストレーターに小島文美さんを採用して印象を一気に耽美へ寄せつつ、ゲームシステムも探索型へと大きく変貌した中後期。

そして、ハードウェアの進化による3D化に伴い、ゲームシステムも根本から様変わりして試行錯誤が伺える後期。

長く続くシリーズには仕方のないことではありますが、度重なる方向性の見直しにより、それまでのファンに「コレジャナイ感」を感じさせつつも、時折リメイクやアーカイブなどでフォローしてくれているのはとても有り難いところ。さすがは商売上手のコナミさんです。

さて、前置きが長くなりましたが、この悪魔城ドラキュラシリーズ、私がもっとも好きなゲームシリーズのひとつです。もちろん、世代的に初代から遊んでいる訳ですが、実は一番思い入れの深い作品は「MSX2版 悪魔城ドラキュラ」です。

恐らくは大多数の、MSX2版をご存知でない方にどういうものかを紹介しますと、基本的には初代FC版に準拠したアクションゲームなのですが、MSX2というハードの制約上、画面はスクロールせず画面端まで行くと切替える方式でした。

ゲームシステムも以下の点がFC版と異なります。
・メインウエポンが切り替わる(鞭、短剣、十字架、斧)
・サブウエポンは常時2つ装備可能(聖水、砂時計)
・幾つかの装備品がある
・次ステージへの扉は鍵(白)が必要
・鍵(黄)で開ける宝箱
老婆のアイテムショップ
・2周エンド

敵を倒しながらゴールまで進むシンプルなFC版に比べると、アイテムを探したり装備を選んだりと考える要素があり、純粋なアクションゲームというよりは探索型のRPGに近いゲームとなっています。近年の月下の夜想曲以降のMetroidvaniaと呼称されるシステムの元祖ともいえるかもしれません。

当時小学生のPanasonic A1ユーザーだった私は、このゲームをさんざっぱらやりこみ、鞭のみで2周クリアできるまでに至りました。このわかりにくい偉業を例えるなら「スーパーマリオブラザーズ フラワー取らずにクリアしてみた」になるかと思います。

FC版もそれなりに遊んでいたのですが、このMSX2版に関してはなぜだか異常にハマってしまい、お手製のサントラテープ(疑似ステレオ)まで作る始末です。何がそこまでお前を駆り立てたのか……

ところでタイトルにある通りMSX2版を語る上で欠かせない"婆"の存在。
悪魔城内の至るところに偏在し、主人公シモンとムチによる対話(攻撃した回数で対応が変化)で愛をやりとり(ハートが通貨)する関係性。今考えても、なんでそんな仕様に?と思う静かな狂いっぷりですが、当時は特に疑問もなく老婆をピシピシと鞭打っておりました。

システムの都合か人道的な問題か、その後のシリーズに老婆は登場しませんでしたが、きっと今もあの悪魔城の片隅で老婆たちはシモンの訪れを待っているのです。

この動画は海外版ですが、基本的には同じものなのでご参考までに。2周前提なので、とても効率のいいプレイをされてます。そしてムチクリア。

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