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ぼくらのバトル

小学生は戦う

「ヤスくんとまっちんのバトル、今日の昼休みだって!」
情報通の片岡くんが休み時間に慌てて教室に入ってきて、特ダネを披露すると、教室内は一気に騒がしくなった。

「まじで? あのふたり、どうやって戦うの?」
「ついにやるんだ!」
「えー、給食ゆっくり食べられないよ!」
「男子、うるさい! 聞こえないじゃん!」
みんな、好き勝手に反応してるけど、ワクワクしてるのがわかる。

「まぁまぁ、みんな落ち着いて」
片岡くんがもったいぶるように両手でグイグイと押すしぐさ。

「バトル種目は……聞いて驚くなかれ、200m走VS書道!!」
片岡くんのよく通る声が教室に響くと、みんなは一瞬静かになった。少し遅れて、また一斉に騒ぎ出す。

ヤスくんは走るのがめっちゃ早いから、種目は陸上だとは思ってたけど、まっちん、書道で戦うのか。ていうか、書道上手かったっけ?

200m走 VS 書道

バトルはいろんな理由で始まる。ちょっとしたケンカだったり、なにかを掛けた勝負だったり、単に戦ってみたいっていうだけだったり。
始める時は先生に言わないといけないから、戦うふたりで相談しなくちゃならない。ちなみに勝手にバトルを始めるとめちゃくちゃ怒られる。

まずはなんで戦うかを決める。同じ競技ならいいけど、得意なものはみんな違うから、そうじゃないことも結構ある。今回のバトルもそうだ。そういう時は、それぞれの得意なもので戦う。実際の戦い方は公平にAIが決めてくれる。

クイズと鉄棒の勝負とか、料理とダンスの勝負とか、ゲームと勉強の勝負もあったし、バレーとバスケの変則球技の時もあった。ぼくが一番面白かったのは野球と家庭科の勝負。本気の試合でボロボロになったユニフォームをどこまで元に戻せるかっていう勝負だったけど、家庭科で戦った広重さんが元々のユニフォームよりもカンペキに仕上げてきて、勝負相手の山田が思わず「ありがとうございます」って完敗した時。広重さんはしばらくみんなからお母さんって呼ばれてて、それも面白かった。

今日のバトルは陸上と書道。書道のまっちんの代わりに走るのは身代わりロボだ。まっちんの書いた文字のきれいさや正確さ、速さをスキャンしてロボの速度に変換するらしい。

バトルのそういう仕組みはAIが決めてくれるんだけど、実際に動かすプログラムや準備は先生や用務員さんがやってるっていう、片岡くん情報。確かによく考えてみたら、バトルのある日は何だか自習が多いかもしれない。

昼休みになってバトルが始まる時間になると、校庭はもう人がたくさん集まってて、後から行ったぼくとケンはかなり遠くから見ることになった。前の方のやつとか給食食べてないんじゃない?なんて、ケンと話してたら、スピーカーからバトルの始まる合図。

「これより、5年1組西島くん、斎藤くんのバトルを開始します!」
放送部が昼休みの放送からそのままアナウンスを担当してるけど、やっぱり少しテンションが上がってる。

もう二人(というか、ヤスくんと身代わりロボ)はスタートラインに着いてて、先生のピストル待ち。まっちんはコース脇に置かれた机でスタンバってる。遠いからよく見えないけど、かなり集中してるみたい。

「位置についてーよーい」
パンッと乾いた音がしてクラウチングスタートからヤスくんが走り出す。身代わりロボも走り始めはゆっくりだったけど、どんどん加速していく。まっちんの手がすごい勢いで動いてるのが、遠くからでもわかる。コースの半分、100mを過ぎたところでヤスくんにまっちん(の身代わりロボ)が追いつく。ヤスくんも更にスピードを上げて、抜きつ抜かれつのデッドヒート。校庭中に応援の声が響いて大盛り上がりでゴールテープが切られた。

結局、勝負はまっちんの勝ち。バトルの日程が決まってからは、とにかく早く正確に書く練習をずっとしてたらしい。逆にヤスくんは楽勝だと思ってたみたいでいつもどおりに過ごしてた。ウサギとカメのお話みたいだね、とケンが言った。

表彰台の上のまっちんは、書き上げた半紙を掲げて誇らしげだった。ヤスくんはヤスくんで悔しそうだったけど、表彰台のまっちんに向かって、絶対リベンジするからな!って言ってる。まっちんも、受けて立つぜ!と、やる気まんまんだ。

昼休みの終わりのチャイムと共に校庭の人だかりが校舎の中へ吸い込まれていって、バトルのあとの熱い空気だけが残ってるみたいだった。

きっかけは休み時間

親友のケンは絵がうまい。こういうの描いて、って頼んだらほんの数分で描いてくれるし、頼んだものよりずっといい感じになる。今日も昼休みにケンがタブレットでイラストを描いていたら、隣で見てたぼくを押しのけて敷島が邪魔してきた。一緒に取り巻きたちも周りに来る。

「学校のタブレットで何書いてんだよ、先生に言うぞ?」
「別にいいだろ、休み時間なんだから」
押しのけられたのもムカついたけど、ケンが言い返さなそうだったから、つい代わりに言ってしまった。
「は? チヒロは関係ないだろ。ひっこんでろ」
「関係あるよ。ぼくが頼んで描いて貰ってるんだから」
「あーそう、仲良しだもんな!ハハハハ!」
ムカつく!!

「先生来てるよー」
廊下側に座ってる櫻井くんが、こっちに向かって教えてくれた。慌てて自分の席に戻る敷島たち。席に着いてもニヤニヤしながらこっちを見てる。
あームカつく!!ムカつく!!ムカつくー!!

だったら戦おう!

「今日だけじゃないんだ」
ケンが一緒に下校しているとき、ぼそりと言う。
「え? どういうこと? 何回も嫌がらせされてるの?」
「何回もっていうか……何回か」
ケンは下を向いて、隣のぼくになんとか聞こえるくらいの声でそう言った。

ケンはどちらかというとおとなしい方だから、敷島みたいなやつは苦手だ。ぼくは立ち止まってしばらく考えた。急に止まったぼくに、ケンは少し不安そうな顔でどうしたの?と聞いてくる。

「じゃあさ、だったら戦おうよ! バトルだよ!」
ケンの方を向いたぼくは握りこぶしを固めて、強く強く言った。

「バトルで勝って、あいつに嫌がらせをやめさせよう!」
「え?!無理だよ!敷島くん怖いし……」
「大丈夫!ぼくに、いい考えがあるから!聞いて!」
周りに誰かがいたわけじゃないんだけど、なんとなくそうした方がいいような気がして、ケンの耳元でコソコソ話。

次の日、朝の会の前にケンと二人で敷島の席へ。
「敷島、ちょっと話があるんだけど」
「なんだよ」
「ケンとバトルして」
「は? ケンが? オレと? ハハハハ!!」
一緒にいた取り巻きたちと笑い出す敷島。振り向くとぼくの後ろにいたケンが居心地悪そうな顔をしている。ごめん。

「真面目に聞いて」
笑いが止まるのを待って、ぼくは静かにそう言った。敷島がニラんでくる。
「……タッグバトルでやろう。ぼくがケンと組む!」

バトルを始めるその前に

ぼくがバトルを申し出て、なんだかんだで敷島も受けることになって(ニヤニヤしながら!ムカつく!)その日の内に、教頭先生にバトルのお願いをしに行った。敷島と一緒に。

「おーそうか、実藤と敷島の勝負か。わかった、ちょっと待っててな。……じゃあこの紙にふたりの名前とクラス、あとはー、それぞれの得意なことと戦う理由、書いてくれ」
そう言いながら、教頭先生は用紙を探して渡してくれた。
「あのー、すいません、実はタッグバトルなんですけど……」
用紙には名前を書くところがひとつしかないから、一応聞いてみた。
「タッグ?それは珍しいな。じゃあ、えーと、あー、こっちだこっちの紙」
先生は色々と用紙の入った引き出しを開けたり閉めたり、ようやく見つけてくれた紙には、ふたり分の名前を書くところ。敷島の方も受け取って、後で提出することになった。

放課後にケンのうちへ行き、用紙の記入と第一回作戦会議をすることになった。改めて用紙を見ると、ちょっと緊張してきた。

名前とクラスは普通に書いた。バトルの理由は決まってる。
休み時間の嫌がらせをやめさせるため、だ。そう言えば、敷島は何を書くんだろう。休み時間のイラストをやめさせる、かな。考えただけでムカつく。

ケンの得意なことはイラストで決まりなんだけど、それについてはぼくなりの勝算があった。実はケン、漫画家志望なので何でも描ける。

そのことはぼくとケンだけの秘密で、今は漫画をネットで連載してて、謎の小学生漫画家ってことで、それなりに注目されてる。休み時間に描いてるのも、ほとんどがその下書きとかだったりするのだ。

そして、敷島は家が道場っていうこともあって、フルコンタクト空手っていうのをやってる。当たる寸前に止める「寸止め」じゃなくて、ほんとに当てるらしい。小学生で一番長くやってるのはこの町ではたぶん、あいつだと思う。得意なこと、バトルも絶対それを選ぶはず。

そうなると、戦う種目はイラストVSフルコン空手。たぶん、AIが決める戦い方は空手の動きをイラストで正確に描く、とかになる気がする。でもそれじゃあ面白くない。ぼくが面白くない!

だから、こちらからAIにお願いして方向性を変えようと思っている。そのためにタッグバトルにしたようなものだし。
その提案。ケンが描いたイラストの技を、ぼくが実際に使って敷島を倒す!これだー!

作戦会議の次の日。
申込用紙を教頭先生に持っていく時に、バトルについてのお願いも伝えた。実際にぼくが戦いたい、ということを。

教頭先生は少しだけ困った顔をしたけど、少し考え込んで、うん、わかった任せておいて、と言ってくれた。やった!

それからしばらく経ってバトルのやり方が決まって、教頭先生から教えて貰ったのは、ぼくがお願いした通りのやり方だった。それはつまり、やっぱり敷島は空手を選んだってことでもある。これは負けられないぞ!

いよいよ開幕!!

それから、いきなり数週間後だけど、ついにバトル当日がやってきた。

会場は体育館。特別に準備して貰ったリングで戦うことになる。
今回は珍しいタッグバトルということもあって参考にするため、近くの学校の先生も見に来るらしくて、いつもより観客が多い気がする。緊張する!

敷島は妹と組むらしい。敷島の妹は美咲っていうんだけど一年下なのに、敷島より背が高い。自分ちの道場には行かずに、合気道っていうのを習ってるらしい。

「今日はよろしくお願いします」
あの敷島の妹とは思えない礼儀正しさで、こっち側まで挨拶にきてくれた。
「私、お兄ちゃんのセコンドをやることになったんですけど、おとうさんから、お兄ちゃんがむちゃしたら止めろって言われてます」
「お前さぁ、オレを止められると思ってるの?」
なぜか妹に着いてきてた敷島がチャチャを入れてきた。
「思ってるよ、お兄ちゃんわたしに勝ったことないじゃない」
「あ、お前それは、おま、兄として手加減して」
「こないだなんか、負けてぐずぐず泣いてたくせに」
「や、やめろー!!」
この兄妹、なんだかんだ言って仲良さそうだな。二人のやりとり見ながら、ケンも笑ってる。少しは緊張がほぐれたかも。

ぼくは割と運動が得意な方だけど、格闘技は全然やったことないから、プロテクターを付けることになった。それと、ケンの描いたイラストをぼくの動きに変換するマッスルスーツも着るから、結構ゴテゴテした姿になる。

「今までで一番手間もかかってるからな、頼むから壊すなよー」
用務員の近松さんからそう言われ、それは向こうに言ってよと思いながら、リングに立つ。

今日のバトルの仕組みなんだけど、敷島は普通にフルコンタクト空手の試合と同じ形式で戦う。ただ、セコンドの妹からの指示も受けられるようになってて、よくわからないけど、いつもの試合より手強いんだと思う。

こっちはケンがタブレットに描いたイラストに合わせてマッスルスーツが動きを補助してくれていろんな技が出せる、はず。近松さんの提案で、基本的な動きは先に何枚か描いてあって選ぶだけになってるらしい。防御については基本的にぼくがやるしかないんだけど、ケンの方でも補助できるらしい。
近松さんは「まぁケンくんから見たら、要は対戦格闘ゲームだな」と言ってたけど、実際に戦うぼくにしてみれば、それはそれでどうなのって思うんだけど。

戦え!タッグバトル!

ともかく、バトルは始まった。
何日か前からマッスルスーツと動きの訓練はやってて、スーツの動く方向に素早く合わせられるように特訓した。その甲斐あって、それなりに動けてるつもりだったけど、実際に敷島の前に立ってみると、動きがめちゃくちゃ速い!突きとか蹴りとか、見てから避けられる訳ない!甘く見てた!

敷島は楽勝と言わんばかりにニヤニヤしながら打ってくる。

ぼくは防御でいっぱいいっぱいだから、攻撃のタイミングはほぼケン任せ。ぼくはスーツの動きに合わせて技を出すだけなんだけど、ケンの操作で決めておいた技名が聞こえるし、周りから見るともう完全に格ゲーだ。

『鉄鋼拳!』
踏み込みからのシンプルな左ストレート。敷島は余裕でかわす。ガラ空きになった右脇腹に蹴りが飛んでくる。プロテクター越しだけど十分痛い。
「あー!ヒロ、ごめんー!」
「だ、だいじょぶ」
体勢を立て直しながら、構えを取るぼく。敷島はもう次の動きに入っていて、今度は左足へのローキック。ヤバいと思った時、ケンの操作を感じた。

『霞裂脚!』
近距離の飛び膝蹴り。声が聞こえた時には跳んでいた。もうキックの動きに入っていた敷島のアゴへ当たるかと思ったけど、手で防がれた。惜しい。
これは流石に敷島も驚いたのか、少し距離を置いてくれた。
「お兄ちゃん、相手なめすぎ。ガード忘れない」
後ろから敷島妹が声を掛ける。敷島は応えずに舌打ちだ。

向こうもうかつな攻撃はできないと思ったのか、お互いに間合いを測る感じになってきた。後ろにいるケンがタブレットで必死に描いてる音がする。なんとなくそうした方がいいかもと思って、構えを取ったまま、少しづつ距離を詰めてみる。

あと数歩というとこで、敷島が動いた。合わせるようにケンの操作。
『鉄鋼拳!』
さっきの技だけど、ちょっと動きが変わった。踏み込みが少し深く、体が少し開いて当たる距離が伸びた気がする。たぶん、ケンがさっき描き換えたんだ!パンチは間合いを詰めた敷島の頬をカスめて、よろけさせた。よし!

よろけながらも、また蹴りを出してきたけど、バランスが取れてないし、さっきより威力もない。見てからよけられた。
「何やってんの。我慢が足りない。息整えて」
敷島妹が淡々とよく通る声でアドバイス。敷島が言うこと聞くの?と思ってたら、素直に深呼吸を始めた。顔はイラついてるけど。

こっちも技が当たる自信が出て、気持ちが落ち着いてきた。
勝てるかもしれない。

「お兄ちゃん、向こうはカウンター狙いだよ。小さく当てていって」
敷島妹の声が聞こえる。確かにケンとそういう作戦を立ててた。経験者に素人が確実に攻撃を当てるには、技のスキを狙うしかない。
「こっちをなめてるだろうからきっと大味になるはずだよ、漫画で読んだ」
作戦会議の時のケンの言葉が思い出される。そう、相手がなめてくれてないとなかなか成り立たないのだ。短気な敷島なら、それは十分に狙えたはずなんだけど、まさかこんなセコンドが付くなんて。やばい。

「わーってるよ!こっからだ!」
息を整えた敷島は後ろも振り向かずに妹に答えると、はっきりと構えをコンパクトにして、ジリジリと間合いを詰めてきた。

的確な左右のコンビネーション、早くて正確なローキック。一発一発は軽いけど、ガードしててもだんだん当たった場所がしびれてくる。敷島はもう笑ってない。そこからは完全に防戦一方だった。

バトルはクライマックス

お互いのプロテクターにはヒットポイントが決まってて、ダメージを受ける度に減っていく。ある程度以下になると強制終了、負けだ。たぶん、ぼくの方はあと数回くらいは耐えられると思うけど、それ以上はどんなに頑張っても終わりになる。

できるだけ、距離を取って当たらないようにしながら、ケンが技を出すタイミングを作りたいけど、敷島は確実に当てられる距離を保ってくる。このままじゃもう負けるしかない。

「ケン! アレ、やるよ!」
ぼくはそう叫んで、敷島から一歩飛びのいた。敷島は寄せてこない。前半の敷島なら確実に来たんだけどなぁと思いながら、とにかく距離は取れた。

『爆裂・鉄鋼拳!!』
大仰な構えから一気に距離を詰めての浴びせ蹴り、からの突き上げ。
もちろん、今の敷島に当たるわけない。
結果、ちょうどいい位置にあるぼくの顔に、振り下ろした敷島の正拳突きが飛んでくる。
そして、拳が当たる直前、ぼくの頭はずり落ちた。

はい、突然ですが、ここでぼくの特技を紹介。
ぼくの特技、それはマジック!

実はプロテクターに仕掛けをして首落ちマジックができるようにして貰っていたのだ。本物と比べると縦の動きが制限されるけど、目の前の敷島からは完全に首が落ちた姿になれる。

周りからはタネが丸見えだけど、今このマジックのたったひとりの観客である敷島は、動きが完全に止まった。チャンス!!

『断空裂波破山掌!!』

踏み込みからみぞおちへ肘打ち、下段回し蹴りでよろけさせて、最後は両手の手のひら(掌底っていうらしい)を叩き込むコンボ技。肘打ちが浅かったけど、逆に敷島が動こうとしたお陰で、敷島の正面から完全に顔面へ攻撃が入った!!

吹っ飛んだ敷島は、そのまま倒れて動かない。慌てて駆け寄った近松さんが両手でバッテンを作る。

ぼくらのバトルは終わった。 ケンとぼくが勝ったんだ!!!

それからぼくらは

失神した敷島は念の為、保険の先生が診てくれたんだけど、敷島妹がこのくらい大丈夫ですよ、と言いながら喝を入れたらほんとに起きた。

リングも片付けられて静かになった体育館で、回復した敷島と話した。
少し腫れた顔で敷島は、羨ましかったんだ、と言った。色んな格闘技漫画を読んで憧れてて、自分でも描いてみようとしたけど、ヘタだから全然思ったように描けない、だから、絵のうまいケンが憎らしかったらしい。
だからって、ケンが絵を描けないようにしたかったわけじゃないみたい。バトルの理由も「売られたケンカは買う!」だったらしいし。

「敷島くん、めちゃめちゃかっこよかった。 さすがだった」
ケンの嘘のない言葉に、敷島は面食らって、ちょっと照れてた。

敷島は下を向いてもじもじしていたけど、バッとケンを見て言った。
「今日の必殺技、めっちゃ良かった! オレの必殺技も、考えて欲しい!」
最初は驚いた顔をしたケンだけど、すぐに笑って、いいよと応える。
「じゃ、僕もお願いがある。実は……」

ケンは自分の秘密、漫画家志望であることを話した。お願いは、次に描く漫画のアイデアを一緒に考えて欲しい、ということだった。今日のバトルで格闘漫画が描きたくなったと、興奮した顔で言った。敷島も負けず劣らずの興奮顔で、うん!うん!と頷いている。
ケンの親友はぼくだけど、敷島も仲良くするのは、まぁ許してあげてもいい。

そのまま、敷島とケンがスキな漫画の話をしてると、敷島妹がやってきて、今日はありがとうございました。楽しかったです、と笑った。きみのお陰でこっちはめっちゃしんどかったよ、と言いたい気持ちもあったけど、なんだかその笑顔でまぁいいか、って思っちゃった。

とにかく、ぼくらの初バトルは終わった。もう当分は懲り懲りだけど、また戦う日が来るなら、のぞむところだ。

ぼくらは絶対勝つ!

あなたのリアクションが何よりのサポートです。