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犬っこまつりをしんこ細工から考える(前)

0.初めに 犬っこまつりとは

秋田県湯沢市で毎年2月の第2日曜日とその前日に行われている雪まつりです。
雪で作ったお堂と犬が会場に並びます。
http://akitayuzawa.jp/event-w-04.html

この雪のお堂の中には犬や鶴、亀のしんこ細工が供えられます。
今では雪像の方が主役となっていて、
しんこ細工の方がオマケのようになっていますが、
まつりのはじまりはしんこ細工と言われています。

1.しんこ細工とは

しん粉(うるち米を粉にしたもの)を水で混ぜて蒸し、
一部は採色して、動物や縁起物などの形を作ったものです。

遣唐使が唐菓子(からくだもの)とともに中国から伝えたと言われています。
最初は供物の1つとして使われてきましたが、
江戸時代後期には大衆化して、縁日や大道芸でよく見かけるものでした。

湯沢市と同じように犬を主としたしんこ細工は
新潟県十日町で行われる「チンコロ市」、
石川県輪島市「犬の子まき」等、伝統行事として残っています。
犬以外では愛知県で桃の節句に作る「おこしもの」などあるそうです。
いずれも縁起物やお供え物として受け継がれています。


2.湯沢でしんこ細工が供えられるようになったはじまり

公式には次の盗賊退治が由来とされています。

《元和(1615−1624)のころの佐竹南家の盗賊退治》
湯沢に「白討」と称する大盗賊がいて、人々にとても恐れられていました。
当時の湯沢の殿様が一味を退治し、再び泥棒が現れないようにと
番犬を飼うようになりました。それがいつからか、小正月の夜に
玄関や窓際、裏口や座敷にしんこ細工を飾るようになった、
と言われています。

別説として、
京都から嫁入りした奥方が小正月に始めた遊び雛という説もあるそうです。

3.江戸時代の旅行家が残したしんこ細工の記述

東北を旅した菅江真澄が残した記録(天明5年(1784年)1月)に

15日。‥‥ 犬・猫・花・紅葉などの様々な色をした形代を餅で作り、
わりこ(割り木の弁当箱)に入れて子供たちが家ごとに持ち運んでいた。これを鳥追い菓子という

という記述があります。(一部省略・意訳)
しんこ細工が鳥追い行事と混じって江戸時代後期に続いている様子が窺えます。


4.小正月行事について

大正月(1/1−3) 新年に歳神様を迎える
小正月(1/15)  豊作や家内安全を祈願する

小正月行事は家庭や農業に関するものが多く、
昔は今より小正月行事を大事にしていました。

行事の例として 豊作祈願 (かまくら)
        吉凶占い (刈和野の大綱引き)
        悪霊払い (どんど焼き・鳥追い・なまはげ)
等があり、主に上の3つの意味が含まれる行事が全国で今も行われています。

  それぞれの行事補足
   かまくら:雪室を作り水神様に五穀豊穣を祈願する
   鳥追い :作物を食い荒らす鳥を追い払うため、
        「鳥追い歌」を歌いながら、子供たちが夜に集落を練り歩く
   なまはげ:元は小正月行事。包丁で災う

しんこ細工に焦点を当てると、先に記述したように江戸時代後期には
鳥追いと混じりながら受け継がれています。
玄関や窓際に飾っていたしんこ細工を戸外に供えるようになったのも江戸時代後期のようです。


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