熱性けいれんについて


小児科医ゆうと言います。
昨今、色んな情報が手に入れられるようになったメリットは大きく、保護者の方々は皆さんとても病気について勉強されているように感じます。ただ一方でそのデメリットも出てきているような気がして、それが
「心配」
です。もちろん困った病気があるのも事実で、「心配」することは大事ですが、「心配しすぎる」ことによって本人が受ける影響も少なからずあって、バランスは大事だと思うんです。そこで、皆さんの心配が少しでも和らげられるような投稿をしていければと思っています。

「熱性けいれん」って聞いたことありますか?
「けいれん」と聞くとかなり怖いという印象を持つと思います。
「我が子に熱が出た時に熱性けいれんが怖くて夜通し本人の様子を見ていた」という話も聞きますが、そういう時こそ「自分も休む」必要はあると思います。一緒に風邪をもらってしまったら困ると思うので。。

熱性けいれんについて、現役小児科医から実際に受診をされた患者さんにお話しするような内容をお伝えします。医学的な知識についても触れていますので、よければ参考にしてください


熱性けいれんとは?

インスタに書いた通り、熱性けいれんとは
・乳幼児に起こる
・熱が出た時にけいれんする
病気です。

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ご了承いただければと思います

ただこれには補足があって、ガイドラインには
・中枢神経感染症
・代謝異常
・てんかん
・その他明らかなけいれんの原因(頭の外傷など)
がないもの、と書いてあります。どういうこと?という感じですが、要するに「なんかヤバい病気は除いてください」ということです。
逆に言うと、熱性けいれんとは
熱が出た時のけいれんのうち重症ではないもの」ということになります。
さらに言うと、熱が出た場合のけいれんは「熱性けいれんかどうか」が大事なのではなく、「熱性けいれんではないやばい病気じゃないか」ということの方がよっぽど大事です。

では、僕らがどうやって重症か重症でないかを診ているかというと
・けいれんが続いた時間
・けいれんの様子:全身だったか体の一部だけだったか
・けいれんが止まった後の意識の状態
この辺りで判断をしています。もちろんこれらがあれば即重症というわけではなく、これらの情報をもとに検査をし、診断をしていくということになります。


熱性けいれんの治療

基本的には「ダイアップ」という坐薬を使います。ただこれ、使うか使わないかはまだ賛否両論があるので、「あそこの病院では使ったけどあそこでは使ってくれなかった」という状況が発生します。その場合はどちらの病院も間違いではないです。
薬のメリットとしてはけいれんを起こしにくくなるということです。
デメリットとしては「眠くなる」です。
なぜこれがいけないのかというと、「その後の意識が悪いのか、ただ薬で眠いだけなのか分かりにくい」からです。
先ほど言った通り、けいれんの時に大事なのは「ヤバい病気じゃないかどうか」ということで、「ヤバい病気」の時はけいれんを起こした後の意識の回復が悪いことが多いです。そうすると、ダイアップを使ってしまったばかりに「ほんとは意識が悪いのに薬のせいで眠いだけに見えてしまう」ということが起こりうるわけです。
それを避けるために使わないで様子を見るということもあるんです。

また、ダイアップの使い方ですが、「8時間空けて1個ずつ入れる」という使い方をします。「2回使うだけで終わり?」と思うかもしれませんが、そうなんです。それは、熱性けいれんが熱を出した1〜2日のところで起こることが多いからです。その時期を薬で乗り越えられればあとはダラダラ薬を使う必要はないということです。

予後について

これに関しては、
・熱性けいれんを起こしてもその後てんかんを発症しないのが9割以上
・発達が遅れるなどのデータはない
ということになります。
たとえ起こしても「頭がやられてしまう」ということはあまり考えなくていいと思います。

つまり、熱を出した時のけいれんの大多数が熱性けいれんで、その熱性けいれんの大多数が「頭になんともない」ものなので、熱を出した時のけいれんの多くは大丈夫、ということになります。

まとめ

熱性けいれんについて話してきました。
けいれんが起こったらと考えたら心配にはなるかもしれませんが、意外と大丈夫な病気なんだよ、ということが少しでも伝わればいいなと思っています。

なお、この投稿はあくまで「必要以上の不安を和らげる」という目的のために書いています。残念ながら「けいれんが起こっても全然大丈夫」とまで言うことはできません。ただ、「熱が出たらけいれんが心配で心配で夜の間も休めない」というほど追い詰められているなら、その不安が少しでも取れればと願っています。

ゆう


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