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いじっぱり、年上の彼女

僕の彼女は年上で、ちょっとお姉さんぶりたい人だ。
デートも可能な限り割り勘か、ちょっと多めに払いたい人。
たまには払わせてって言うと、少しだけ安めの食事を誘ったりする。

そんな彼女が可愛いから、黙って言われた通りにしてる。
欠かさないのは、「ありがとう」と「可愛い」ってキスすること。
彼女が一番嬉しがるのは、女の子として扱ってもらうことなんだって知ってるんだ。

先日のこと、話そうか。
植物園で久しぶりのデートしてたら、いつものように彼女は僕の少し前を歩いていた。手を繋ぐのはタイミングをみなきゃ断られちゃうから、とりあえず後ろをついて歩く。
そしたら、彼女の首元に何か紙の札が下がっているのが見えた。
『値下げ20%』
その札は何枚か重なっていて、結局80%引きみたいになってるみたいだった。

(それ、ブランド店の新作で買ったって言ってたよね)
(えーと、どうすっかな)

すぐにタグを切り離してあげたかったけど、それが付いてたって知ったら彼女はすごく傷つくだろう。

「あみちゃん、ちょっと待って」

後ろから抱きついて首元にキスしてやると、彼女は真っ赤になっていつもの余裕を失った。

「ケント! 待って、ここ人が通るよ」
「知ってるよ」

かまわず強めにキスしてやる。その合間にタグの紐を歯で何度か噛んでみるけど、なかなか切れない。

(時間かかると怪しまれるな。ちょっと強引にいくか)

ぎゅっと抱きしめながら、今までで一番強いキスと同時に噛みちぎった。

「っ!」
「ごめん、痛かった?」
「……どうしたの、急に」

戸惑った表情をこちらに向けるけれど、タグを切ったことには気づかなかったみたいだ。

(よかった)

僕は首周りを優しく撫でて、もう一回優しく頬にキスする。

「少しあとついちゃったね。マフラーしっかり巻いて」
「ケントの馬鹿。お店で外せないじゃん」
「ごめん。あんまり可愛いから、僕のものって印つけたくなった」
「……」
「怒った?」

(君が怒ったって、タグのことは言ってあげないけどね)

「……怒ってない」

珍しく素直な言葉を口にし、彼女はそっと手を差し出した。
その手を握って、ポケットに押し込む。
指先がひんやりしてるのが、もっとあっためてやらないとって思わされる。

「寒くなってきたな……カフェ行く?」
「うん。ケントの好きなあのカフェがいいな」
「いいね」

綺麗に手入れされた芝生のうえに、手を繋ぐ僕たちの影が長く伸びた。

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