ビール傘③/毎週ショートショートnote
急な雨に慌てて、シャッターの下りた軒先に駆け込む。
時計を見ると夜の10時過ぎ。
また今日もこんな時間。諦めて濡れて帰ろうか。
ふと横を見ると、傘立てがあり、何本か傘がある。
借りて帰ってしまおうか。
早めに返しておけばわからないだろう。
そう思って手を伸ばした。
チカッ!…ガシャッ…
小さな稲妻が走ったかと思ったけれど、雷の音もせず、明るいまま。
防犯用のセンサーライトか。
ちょっと驚いて、シャッターにぶつかってしまった。結構大きな音がしたけど…
「誰かおるか?」
玄関灯が付き、シャッター横の扉が開く。頭に光が反射する。
「あ、いや、すいません、ちょっと雨宿りです。」
「ありゃ、気の毒に。そこの傘ええよ。ついでにこれ持ってきな。」
そう言って手渡された350ml缶ビール。
「え?あ、ありがとうございます。」
「今度、店が開いている時においで、8時までやから。」
扉が閉まる。
ビールなのになんだかあったかい。
今度仕事を早く切り上げて、寄ってみよう。
あ、これ賞味期限、ぎりぎりだ。
(426字)
久しぶりに3本目の参加です。
ありがとうございました。
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