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【SS】はじめての鬼/#毎週ショートショートnote

「せんせーい、まつのくんのおめんがないでーす」
「えっ、嘘!」

今日は節分。
子供たちが前々から作っていたお面をかぶって豆まきをするのが、うちの幼稚園の恒例行事。
鬼が豆撒くっていうのもなんか変な気がするけど、今年度入職したばかりの私がなにか言えるわけがない。

「松野くん、お面どうしたの?」
「おれこないだまでおやすみしてたもん、つくってないもん」

そうだった、松野くんはおたふく風邪になっちゃってたんだ。
行事に間に合ったのはいいけれど、お面がなくて半べそかいてもう顔は真っ赤かだ。

「何、泣いてんの!」

しまった、立山主任に見つかった。園児をはじめ、私だって苦手な怖い怖い先生だ。

「あー、もう、これでも被っときなさい!」

え、それはちょっと…

松野くんは紙袋に穴を開けただけのお面をかぶってしょんぼりしてる。
ひどい、あんまりだ。

私はそっとポケットの中のスマホを手に取った。

次の日

保護者からのクレームのメールや電話が止まらない。
立川主任はさっき園長室に呼ばれて行った。
対応に追われつつ、私は心の中でガッツポーズ。

やっぱり鬼は退治しなくちゃね。

(461字)

参加させていただきました。
季節外れですみません。

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