【SS】サラダバス/#毎週ショートショートnote
ああ、今日もダメだ。
小さなサラダボウルは、食品サンプルのように完璧なビジュアルで、そのままテーブルにある。
娘の夢生はサラダを食べてくれない。
「俺も生野菜嫌いやからなぁ」
夫ののんびりした声。背が高いがゆえに伝家の宝刀「お野菜食べないと大きくならないよ!」も全く歯が立たない。
おまけに夢生は保育園ではお残しせずに食べているらしい。まだ4歳だと言うのに、外面と本音を使い分ける術を覚えているというのか。
「自分も野菜とか嫌いやなかった?」
はっとした。そういえば、私も苦手だった。
食べられるようになったのは……
「ほら、飛行機飛んでくるよ、ぶ〜ん、飛行場は…あ、見つけた!お口飛行場だ!」
記憶が蘇る。年の離れた姉が遊びながら食べさせてくれたんだった。
そうだ、夢生はバスが好きだ。今度、お口停留所目掛けてサラダバスを出発させよう。
後日
「そういえば、そうやって私が食べれないもの、あんたに押し付けてたわ、あはは、ごめんね」
ちくしょう、姉も偏食だったのか。
(419字)
姉とかってそういうとこありますよね、笑。
たらはかに(田原にか)様の企画に参加させていただきました。
ありがとうございました。
そして、最後までご覧下さり、ありがとうございました。
何かしらでも、あなたの琴線に触れることができたのなら、サポートいただければ幸いです。 いただいたサポートはありがたく活動費(つまりは書籍費、笑)にさせていただきますね。