見出し画像

剣劇『三國志演技~孫呉~』観劇感想

2024年4月11日(木)明治座にて剣劇『三國志演技~孫呉~』を観劇してきましたので、個人的な備忘録を兼ねた感想をまとめさせていただきました。

  • ネタバレ含むオタクの正直感想です

  • 三国志は小2から呉が推しだけど所詮オタクのにわか知識

  • 1μもマイナス意見を目に入れたくない方にはおすすめできない忖度なし感想かと存じますので、閲覧注意でお願いします




はじめに(諸注意)

私が演劇素人なあまりに、自分の感性と体験から出た感想を素直に書き記す形になってしまいました。
演劇に対して造詣が深いわけでもない私が受け取った感想は、演劇に精通している方からすれば浅慮でうすっぺらで無粋な感想だと思います。
ただ心をざわざわと波立たせてよくもわるくも印象に残った作品ということに偽りはないので、備忘録として書き残しておこうと思います。

失礼にあたらないような表現リーガルチェック(当社比)を通したつもりですが、1μもマイナス意見を目に入れたくない方にはおすすめできない内容かと存じますので、閲覧注意でお願いします。あとオタクというだけで世界史専攻ではなかった人間なので、独学で得た知識に誤りがあったら申し訳ございません。また、実在する人物や病名を出していますが貶す意図はございません。

荒牧慶彦さん×梅津瑞樹さんW主演!


子供の頃から三国志が自分なりに大好きでした。
プレイヤーだけでなくプロデューサーとしての側面も信頼している荒牧慶彦さんが「三国志」をテーマにした演劇を企画するとの発表があったときは、心からうれしかったです。
『剣劇三國志』がシリーズ化して色々なパターンの三国志の世界を見れたら素敵だな、とその時点でウキウキで妄想していました。

でも現地観劇してみて、このテイストならば次回は現地に足を運ばないかも?(いや孫権と太史慈がメインキャストでペア出しされるなら爆速現地集合か……)という悩ましいところに落ち着いた、オタクの私欲にまみれた感想です。

『剣劇三國志』の、掴めそうなのに掴めないこの感覚はなんだ?と気になって仕方がないので感想をまとめてしまいました。
感想ブログにはポジティブなことを書くと普段から決めていて、マイナスなことを書くくらいなら沈黙を選ぶのですが、今回はネガティブな動機ではないので書いちゃっていいかなと感想をまとめる手が止まらない。
不快にさせる人がいたり荒牧さん陣営から嫌われブラリ入りしてしまうかもなぁ(ごうなき)というリスク覚悟で書かせていただこうと思った次第です。

私の感想まとめは個人を好き嫌いどうこうの話ではないので、あくまで商いのプロファイルの要素のひとつとして実験的に捉えていただければと思います。
今後少しでも商業としてプラスの風向きになるように、また私に近い立場、似たような感覚を持っているお客さんとなりうる潜在的顧客に対しどういったアプローチを向けたらいいか?という参考になるかもしれないなと考え、正直な所感を含めて感想備忘録を残そうと思います。

これはあくまで私のエゴですが、見切りをつけるのでなく今後も推しや好きなコンテンツ分野と歩み寄っていける可能性があればいいな、という願いを込めて公式アンケートもお送りさせていただきました。

アミアミが入る、悲しみの電子モニター


三国志の思い出

〜オタクのどうでもいい三国志遍歴〜
小学生の時に横山みつてるを図書室で読みまくる→父の三国志のゲームを勝手にプレイする→三國無双を買って箱を壊して肉まんをいっぱい出す(呉が好き、孫尚香と陸遜推し)→オタク中抜け時期も含めて三國無双~7くらいまで通る(王元姫推し)→蒼天航路で漢を学ぶ→キングダムで中華ブーム再来(ちょっと違うけど)

子供の頃にやってた三国志のゲーム、私の作る国は治安が荒む野蛮な国家だったためイナゴが襲来し飢饉に国を潰された記憶しかない。今は仕様が違うかもしれませんが。ゲーム『三国志』のユーザーであると公言されていた荒牧さんとて、イナゴに大襲来されながら思春期を駆け抜けてきたのかと想像すると、わろてしまう。きっちり管理できそうな荒牧さんは国を荒らさないだろうが。
治安が低下し国の風土が荒れれば、人が死に国全体が滅ぶ。治安は組織維持において重要なのだ。世の摂理を小学2〜3年生程度で充分学べる、優秀な教材はコーエーテクモゲームスによるロングセラータイトル『三國志』であった。

点心・エビ蒸し餃子みたいな飲茶が好き。それら飲茶を筆頭とした広東料理発祥の中国南東部で今から1800年ほど前に栄えたのが呉の国だ。

三国志をテーマとしたメディアミックスの中で、呉は長江南東部の温暖で資源豊富な土地柄を反映し、"豪傑、おおらか、炎"のようなイメージで描かれることが多い印象がある。
長江付近の勢力だから強い水軍がいて、三国の中では自分の国の勢力を守れれば国盗り合戦はいいかなぁみたいな風潮が強い(個人的主観)そんなふうに、呉のカラーたる広東料理や風土が子供のころからなんとなく好きだった。

荒牧慶彦×三国志の商業的センス

子供の頃から大好きな『三国志』をエンタメ提供側として推している荒牧慶彦さんが企画から手がけるとのことで、オタクとしては大歓喜の期待たっぷりで現地参戦した。

結果的にお出しされた舞台を拝見した所感としては、「三国志には色んなオタクが潜んでいるんだなぁ」だった。

非常に無粋な視点ではあるが、三国志という題材が多角的な見方ができていろいろな層のファンが群発するほど魅力的なコンテンツだと気付かせてもらった機会でした。

正直なところ自分は『剣劇三國志』の世界観には入り込めず、熱狂を傍観する立ち位置でぼんやり眺めてしまい、演劇を観たときのパターンとしては残念な結果に終わったが、、、

現地で観劇、またSNSの反応をチラ見し、商売としては成功の一例なのでは?という感覚に腹落ちした。SNSに伏せなどで感想を書いてくれている方々のおかげで、私の見てる呉と、世間(女オタ界隈)が見てる呉が違うことがくっきりとわかった。
三国志好きなつもりだったけど"そういう意味"では見てなかったから、知らん界隈があったんや!(伝われ)という。私の従来の感覚からするとかなりびっくりという意味で。

当たり前なのですが、三国志って超絶二次創作ですよね。乱暴に言えば歴史書『三国志』の500年越しの二次創作が『三国志演義』なので、別にどんな三国志も描こうが文句言われる筋合いはないし、間違いではない。さらに500年後の今、演劇で『剣劇 三國志』っていう二次創作やったってええやんって話ですね。歴史って記録資料は残っているけど、誰もその史実をリアルタイムで見聞きしたわけではないし。

三国志って意外と、創作や演劇すべてに当てはまる「これはこの村の解釈だから」という理論が罷り通りやすい。しかもそれは女性オタク層に受け取られやすそうですね。
だからこそ三国志の思想の偏りが(私のように)こじれていない、三国志を知らなかった末原拓馬さんに脚本演出を依頼したのかな?と考えました。

男(無双おもしれ〜みたいなノリで見ている私のような層はたぶんこれ)が見てる三国志と違う、いわば"女三国志"があるのかぁ。
時代的にナンセンスな語彙でおおざっぱに表現するならば"乙女向け三国志"みたいな人口分布があるんだなぁと。その"女三国志"界隈は見落としてた!と本気でハッとしてしまった。

この剣劇『三國志演技〜孫呉』というコンテンツを商いとして成立させるという大前提で今回のテイストでお出ししてきたとしたら、やはり荒牧慶彦さん陣営は市場分析が上手すぎないか?大好きなテレビプロデューサー佐久間宣行さんの仰っていた『ファン層が被る、近しい別界隈との新規開拓コラボ』の成功例だろう。

非常に乱暴な言葉で表現をするが、『早乙女兄弟』『ヅカ』『刀ステ』『三国志(「山河令」「李陵山月記」みたいなお耽美系統が好きな派閥)』系のファンの方々には刺さっている感覚がある。つまり刺さった人が一定数いるならば、商売としては正解な気配がする。

荒牧慶彦さんは『三国志』が子供の頃から大好きで、舞台でやってみたかったとのことだ。
女の子って基本的に「三国志」自体にはとっつきにくいし、興味ないよね。当たり前だけど。綺麗に食べやすく、お料理してあげなきゃだよね。

ビジュアルは2.5次元っぽく華やかに打ち出す、シェイクスピアオマージュ、それなら末原拓馬さんの演出でお耽美に繊細に……となる全体の流れは商いとしてすごく理解できる。
まるで漫画編集さんみたいな視点だなぁと一連の流れを拝見して感じました。女性が興味薄い「三国志」をテーマに、なんとかチケットを売るためには?って試行錯誤されている。


少ない顧客を奪い合うレッドオーシャン・舞台観劇市場分布図の中で原作ものではないオリジナルのテーマで演劇を打ち出すって素人目ながらに相当難しいと思う。でも原作モノに頼り切りでは将来への展望が薄い。確かに、ある要素に特化しすぎると、そりゃあ来場者数は偏っただけ減るよなぁとしみじみ考えてしまった。
成り立たせるためには複数の要素(に紐づくオタク)を引っ張ってくるのが手堅い。
身近な2.5界隈の演劇を例にして申し訳ないが、"植木豪さん"のノリノリなエンタメテイストの味付けをしつつテーマを三国志として据えたとて、『三国志(ワイルド)』×『植木豪(情熱系ワイルド)』で構成しても、テーマと潜在的な客層が被るわけではないし「そもそも見ない」と判断されやすい。『三国志(ワイルド)』を前面に出したとて三国志の顧客(私のような男三国志好き)が舞台観劇や若手俳優に興味があるか?と問われればNOだろうし、新規顧客への訴求効果も弱いだろうな。
私は男くさい三国志がとっても見たかったけど、それってすごく少ない消費者ゾーンなわけで、私みたいなオタクしか喜ばないなら戦略としては悪手だろう。

つまり、今作のようにせめて『三国志(ワイルド)』×『末原拓馬(文化系マイルド)』くらいの味付けにして中和しないと、元素たる『三国志』というテーマがそもそもワイルドで男性向けゆえに、女性の多くはそそられないのだろう。そんな根本的な商いの方程式を、仕上がった演劇を拝見して気づかせてもらった。

あくまでビジネスで他者が関わっている時点で最低限の数字を残さねばならない、なおかつ持続可能な土壌で種をまき育て続けねば、という考えを荒牧さん陣営は持っていると感じている。ファンの私としても賛同できて応援できる考え方なので、商売の読みとしては正しいと思った。

なんか裏の神社


ビジュアルの完成度が良すぎた故に生じたギャップ

正直、ビジュアルや写真クオリティがよすぎた。
『まるでコーエーテクモゲームス』みたいな顔したビジュアルにしたから騙されたお客さんはある意味、いっぱいいただろう。
吉と出たか凶と出たかは不明だが、逆に本編の内容が演劇っぽい文学演劇だったからそこが意外!って声が多く見受けられて、激烈にハマってる人はいるので成功かもしれない。
違うな、とそっと離れた人の数<文学演劇が刺さった人、ならばそこの顧客層を掴めていて商売と刺しては正解すぎるのでは?


個人的にはパッケージと中身を合わせて欲しかったなぁというのが本音です。頭ではビジュアルは大切な戦略ってわかっているのですが、ちゃんと淡くて儚くて乙女的でそういう感じの演劇やりますよー!ってのビジュアルからアピってくれててたら、こっちもちゃんと避けたり覚悟して挑めて変なギャップが起きない。
『まるでコーエーテクモゲームス』みたいなビジュアルが好きなオタクなので、中身も好みのエンタメ寄りのテンポのいいでも深い台詞が散りばめられている、的な演劇を勝手に期待してしまったかもしれません。


”金を断つほど”の孫策と周瑜の交わり

この2人が三国志好きの方々から『策瑜』として公式ペアのような扱いをされている理由は、オタクとしてなんとなく理解できる。このペアに滾る本能や嗅覚を残念ながら持ち合わせていなかったが、オタクの勘で理解はできる。そして「伯符」と「公瑾」あざな呼びにこだわる荒牧慶彦さんのオタクぢからには脱帽です。

「孫策と周瑜って仲良しだよね?」
「コーエーテクモゲームスさんからも推されてたやん!」
「この女畜生腐ぶりやがって!にわか腐めが!」
と三国志好きの知人らにおしぼりを叩きつけられながら指摘され、「性癖が王道じゃなくて、ごめんなさい」とごうなきで床に頭を擦り付けたが、幼女時代の私の視界には孫策と周瑜が入っていなかっただけの模様。

だって当時からすると2人とも清潔感ないおじさん(ロン毛萌え属性なし)だったしなぁ。純粋な女児にとっては大人の男相方のあれそれが興味なかっただけ?しかしここのマブ友ペア感はやっぱり一般男性にも有名なんだな。

こうして書いていると、同じ視点で三国志の話に付き合ってくれるのは基本的に男性しかいないことに気づく。歴史の話はおじさんとする方が楽しいからね。じゃあやっぱり策瑜を推さねば、対女性に「三国志」は弱いか……(再放送)
ていうか女オタクの方っていい意味でこだわり拗らせてなくて、仕上がりがいい感じならテーマが何であれ受け入れてくれるのかもしれないな。

あらまとん、抱拳。


孫策←周瑜への感情は、主成分が執着だろうか。
本来は性的欲求のわきあがらない同性同士という関係上での拗らせた執着が、一層エロティックな空気を醸し出しているように思えた。
合理性に欠いており、感情論だし征服欲が滲んでいる様が幼稚さすら感じてしまう。軍師の周瑜まで病んだら孫策も潰れて共倒れだぞい?こんなのは共依存で本当の愛ではないなどと極めて非・文学的かつ現実的な感想を観劇中に胸中で早口オタクしてしまった(あくまで剣劇三国志の味付けですが)。

『剣劇』の周瑜は本来弱い人だなと思った。顔が良くて優秀でエリートとしてもてはやされてきて、孫策の躁鬱(現代の病で例えるならば境界性パーソナリティ障害に近いような状態だったと察する)を見抜けない浅はかな部分もあって女々しいし、中身の成長がちょっと遅れちゃった人。

孫策の父・孫堅は戦上手な男だった。孫策の武芸の才覚は父親譲りで上手に領土拡大をすすめられたのに、王として民を統治することは一向に上手くならなかった。王の重圧に押しつぶされて心が壊れていく若き王の姿を周瑜はなんとなく感じていたのに、親友を上手に慮ることができずに目を背けてしまったんだろう。

でもそれって周瑜にとって孫策が必要だからの裏返しの行動で、大喬小喬を攫ってオソロで嫁にしたり(作中には諸事情※ により出てこなかったが)、月夜の下で一緒に寝たり(史実のみならず夜伽のメタファーも含まれているのだろうか?)、孫策を自分の元に圧倒的な何かで繋ぎ止めておけるならば、なんでもよかったのでは。

世間ヅラはまともな顔をしておきたいというエリート周瑜の本音が覗きつつも、結局は孫策が大切、という歪んだ磁石のようなべっちょりとした関係値ですね。美人オソロ嫁を孫瑜ミームにすな。

月夜の元、天蓋のベッドで添い寝って、けっこうオタクっぽい露骨さがありすぎて胸焼けしそうな描写なんだけど、頭と足を互い違いに寝るという三国志オタク荒牧慶彦さんの譲れないこだわりが出ていたのがトンチキで「山小屋の宿泊客?!」っておもろ空気になって本当に好きだった。普通に寝ないの?とキョトンとされたという周囲の方々の反応はかなりまともだろう。こっちはハナからまともじゃないので、これでいい。

※2.5次元(で人気が出た人が出ている舞台)怒られポイント
基本的に薔薇でも百合でも同性だけのユートピアに美を感じる嗜好があるため、異性が透明化されているのが助かった。文科省に献上するような大層な演劇ならばもちろん平民のマジョリティの皆様に向けた味付けとして男女の俳優さんが混在していてもいいのだが、いやここってさ地底の王国だからちょっとだけ世の中が生きづらい人の避難場所のユートピアだからそういう光じゃあねぇんだよなぁだからこれでいいんだよ、と口元をむにゃむにゃさせながら透けている大喬小喬に想いを馳せた。
三国志に出てくる女の人やノマカプ(?)は好きなので、妄想の余地が広がって楽しかったです。まぁどんな言葉を並べようがキモオタの主張にしかならぬ。

現実だって、性的欲求の向こう側に積み重なる独占欲だったりしみったれた何かが、人を好きという感覚の正体なのかもしれない。
三国分かれ目の戦乱の時代、文字通り命をかけて背中を預けて惚れた男と刎頸の絆を結んでナンボの世界なのだから、そりゃあ武将に男色の文化が流行るようなヒリヒリの世界線よ、と納得感すらある。

どうせ明日生きるか死ぬかもわからん人生で、側室だの男色の嗜みだの、細かいこともう関係ないよね、って私がその立場だったらそんな極論に行きついてしまう可能性は否定できないなぁと思う。歴史好きとしては彼らの弱弱しさに想いを馳せてしまった。

ただ、「こんな時代に生まれたくなかった」という、まるで国を担う武将が言わなさそうな乙女の台詞が周瑜の口から出たのが衝撃だった。私は「武将」みたいな男性向けフェーズの物語を期待してしまっていたため、周瑜の台詞がファンの皆さまに刺さって絶賛されることが異様だった。でも冷静に考えれば少女向けノベルのような文脈そのものなのだ。

ずっと主語がでかくて申し訳ないけど、「愛する者を本当に守りたければ、王になり政治をして戦争をなくさねばならない」これは男性向け作品に多い傾向で、「世界なんてどうだっていいから側にいたい、大切なあなた」が女性向け作品の流派だと思う。これになぞって受け取れば剣劇は女性向け三国志だったんだろう。

四畳半で愛する人と過ごすことが幸せな乙女の感覚まで落とし込んであげて、感情でわかりやすくする愛。しかも文芸っぽい演劇を愛する人たちってやっぱり感情派の人が目立つ。きっと人が好きなんだろうなぁと感じることが多い。

『こんな時代に生まれたくなかった』とか言うかなぁ?周家のエリート息子さすがにもうちょい覚悟ありませんか?って早口でつっこみたくなったけどまぁそこがいい意味での2.5っぽい大衆や女性ファンに理解できる感情に訴える落とし込みで受け入れられやすい商業的要素だったのかも?
せっかく国を背負う武将の話なのになんでそんな俗っぽい人間にまで縮小するんだろうってとても不思議に思ったけど、きっと多くの女性的感性には「共に生きて、伯符と一緒にずっといたい公瑾」が響くんだろうな。

今回は、私の中の三国志観や武人像と『剣劇三國志』で描かれていた武将の心情がまったく重ならず、没入できなかったのだと推察。一国の武将がそんな庶民の男の子みたいなこと言うほど弱かったかな?彼らはあくまで武人で、生きてたら嬉しい、死んだら悲しいよりももっと向こう側の価値観の中で生きてきたのではないかと早口オタクの思想が……ごうなき。病弱設定から来てるイメージなのかな?私の知らない周瑜のうじうじエピソードとか史実で眠ってるかもだけどね。
私は基本的に死んだら悲しい、より先の強さや癒しや地獄は存在するのだという視点で三国志を見てしまっている。でもそれはどちらかといえば男性向け作風で好まれるスケール感で、乙女からしたら「で?私の側にいて国も守れよ」なんだな。自分の凝り固まった価値観に気付かされた衝撃の出来事だった。


周瑜(扮する荒牧さん)

剣劇の周瑜って苦労背負い込むタイプの女(と等しい嗜好してる)だよね、大丈夫なの?と無粋な心配をしてしまう、男のセンスに暗雲立ち込める周瑜。孫策好きなのは、好きな男の趣味がいいのか悪いのかわからない周瑜。

今回の"メンタル弱めの周瑜"は、荒牧慶彦さんだからこそよく出力できていたと感じた。
私は荒牧慶彦さんにハマってから、「荒牧慶彦さんは趙雲推しだが彼に合うのは陸遜か周瑜だ」ってずっと言い続けてきたんだが、オタク口調。

周瑜の何代かあとの後継者ポジションである陸遜の方が合ってると個人的には思うけど、世間への知名度や売り方的には周瑜がよさそうだとオタク的にもわかる。周瑜って美周郎だし、上品だし、でも呉の男たる火計ボーボーっぽさもあってめちゃくちゃ荒牧慶彦さんだと思ってた。

荒牧慶彦さんという俳優さんに関してオタクが対岸から勝手に思っていることだけど、『奥底の侘しさ』を持っている人だと見ている。荒牧さんのアウトプットする寂しさは意外と子供っぽくて、親に家に放って置いて行かれた子供を見ているような、胸を締めつけるかげりみたいなものがある(とキショオタは思う)。

あてがわれた芝居をなんでもさらっとこなす器用さはあるけど、奥深いところで向き不向きのある人ではある気がする。クリーンで欠点がないような爽やかな表面のすきまにフッと差す孤独の気が上手い人だと思う。というエッセンスで、私は荒牧慶彦さんというコンテンツが大好きで消費しているんですが。
当て書きだのは明言されていないけれど。演劇における役者当て書きエッセンスは賛成派なので、背負い込んで遺言捏造してあげて孫策のことは胸にしまって戦い続ける未亡人(?)周瑜の弱っぽさはいいと思った。


孫策(扮する梅津瑞樹さん)

梅津瑞樹さんという有能な素材は演劇的な味付けをいきいきと吸い込み、玄人向けの味付けでも私にこの演劇おいしいな!いっぱい食べれる!という感覚を与えてくれた。
梅津瑞樹さんという俳優さんを買い被っているから、孫策の精神的に狂っていく芝居なんかも当然やれる人だなぁってすんなり受け止めてしまってたんだけど、冷静に考えたらけっこうすごいことだなと思い返して新鮮にびっくりした。境界性っぽい人の乾いた感じの突然の切り替えが生々しくてすごいなと思った。

梅津瑞樹さんという人物をお仕事越しでしか知らないからどんな努力をされてきたかは私にはわからないけど、梅津さんからアウトプットされる発言や芝居すべてが、世の中の全ジャンルを観察してて取り込んでるプロファイル数が多いなという印象がある。内側から生産するのではなく、外から俯瞰して構築した芝居っぽくて、共感性羞恥がまったく起こらなくてすごい好き。

だからお芝居の解像度が高くて、キャラクターの解釈がオタク的に間違ってると感じたことがなくて、それを"芝居が上手い"と捉えている。喫茶店で聞き耳立てながらコーヒー飲みに行く人間観察ツアーをする愛好家仲間だから、梅津瑞樹さんは、勝手に信頼してる。。。

梅津さん繊細な芝居がすごいんだけど、なんか遠くまで圧が伝わるタイプではない?気がするのがもったいない。自分の世界観が色濃くある人だから、クリエイティブだしもっと化けるはずって期待しちゃう。業界を俺が全部背負うぜ!みたいなタイプではなさそうだけど、演劇界隈への貢献みたいな方向にステージアップしたらめちゃくちゃもっとすごそう。知らんけど。。。

孫策、私のイメージする像としては、美男子だと称する資料は残っているが男くさい戦っぽい男性という印象だ。
孫策は武として強いが等身大の弱さがあったからこそ、自分の中のモンスターに食われたのかもしれない。

好きな孫策の逸話がある(あくまでも一説だし、荒牧慶彦さんもニコ生で話していたが)
今でいうお坊さんが孫策を占った際、性急に国土を拡大させる孫策に苦言を呈した。孫策は激怒し、僧侶を殺してしまった。孫策は僧侶の亡霊に取りつかれて呪い殺されて(暗殺されて)死んだ、という。

これが史実交じりの作り話だとしても、僧侶を殺すという日本史でいう”信長”のような人物像を持つ孫策らしい逸話。僧侶を殺しちゃうってメンタリティや倫理観ってやばそうという感覚は現代人でもわかる。
孫策を殺したのは宗教勢力を見くびった、または神仏をないがしろにする背徳という驕り=怪物なのかもしれない。こういう驕りが人や国を破滅に向かわせるものだと私は思うので、私もこの説を採用しています(?)
この逸話を元ネタにした物語の展開はうまいなと思ったし、ファンタジー交じりで楽しかった。

これ、いいよね


孫権(扮する廣野凌大さん)

太史慈が宴会に参加せずに柱によりかかっている様子を見に来た孫権が太史慈に声をかけ、「みんなと飲まないの?」「俺はここでいい」というぶっきらぼうな会話を交わしたシーンが一番好きで印象的でした。

捕虜から呉に入り、腕が立つ。クールで群れない態度をとるため周囲からすれば恐ろしいはずの太史慈にガンガン声をかける様子が、孫権の人たらしっぽさを表現していた。
腕が立つ武将を懐柔することは結果的に、将来の心強い戦力、味方となるのだ。君主は信頼できる男からどれだけ忠義を捧げられ好かれるかにある。これは政治家として大切な能力や嗅覚だと思う。

太史慈が孫権にほだされてからは実は甘い優しいパーフェクトツンデレセットを出してくれたのもよかったが、これは廣野さんの能力だと感じる。
狙ってやっているかわからないような、でもあなどれない無邪気S属性っぽい絶妙な雰囲気を含めて、まだ若い孫権の先見の明を示唆していたようでとてもよかった。

個人的に孫権は好きなキャラクターで、呉の中ではいい感じの政治をした人という印象だ。
「国を広げるのは俺のほうが上手いけど、国を治めるのは弟のほうが上手い」と孫策が言っていたみたいな記録があった気がする。

酒に逃げるし弱腰なところはあるけど(いやらしい飲み会みたいなコールしてたし。。。)、戦上手な呉の国の中ではめずらしく政治が上手かった武将ではないだろうか。
現実でも営業職エースが管理職になってマネジメントが上手くできるとは限らず、売上がそこそこでもマネジメントに向いている人は存在する。政治の上手さってきっと、人と穏便に付き合えたり人に動いてもらえる愛嬌のほうが腕っぷしより大切な気がするし、人の懐に入り込むのが上手で人たらしっぽい天性の愛嬌がある廣野さんに、とても合っている孫権像だったように感じる。

インナーはしまむらだったけど、漢気を感じた。服がSTUSSYでイケてるふうに見せてるイキった男よりも、服がしまむらな王子様の方が5億倍好感度が高いので、よかった。時代はSTUSSYよりもしまむらってことか。STUSSYさんが悪いわけじゃないんですが。。。
しまむらみたいな英字ロゴのインナーがめっちゃおもろくてインパクトあって好きだったんだけど、大好きな衣装さんのヨシダミホさんと荒牧さんの案?ってニコ生で話しててここも?!本当にセンスちゅき♡ってなっちゃった。

孫権大好き、大感謝。廣野さんがいなかったら本当に私、新泣(帰りの新幹線で辛くて泣く)しちゃってたと思う。オタクしている中で今この空気キツイなぁ私が場違いだから退場しなきゃなぁってたまにやってくる虚無のしんどさをいつも救ってくれる絶妙な空気読みとキャッチ、アドリブ対応力がすさまじい。廣野さんには感謝しています勝手に。まぁ別にまじでつまらなかったら帰っちゃうけどね!

荒牧さんやマネージャーさんが廣野さんをキャスティングの布陣に入れているということは、私はここにいてもいいのか?と許されているような心地になる。私そんなにいい子ちゃんじゃないから、潔癖!聖の心!光!みたいな価値観や空気で満ちた演劇って長い時間浴びるのキツイんだよー。
でも廣野さんは勝手に悪役かってくれるから、私もまだこのフロアにいて踊ってていいんだって思わせてくれるところが大好き。

太史慈(扮する早乙女友貴さん)

すごいぞ、とかねがね噂に聞いていたけれど、本当にすごくてびっくりしちゃった。太史慈様の殺陣も居方の存在感もすごい。出てくる間はテンション激アゲで蘇生して、情緒のジェットコースターえげつなかった。

しかも孫権とのペア感がかわいいの!!!!!そっち系のエッセンスも神がかりのセンスなのかよと明治座さんのふかふかの椅子の上で腰を抜かしてしまって、新泣(帰りの新幹線で辛くて泣く)しなくて済んだ。ありがたかった。

私の思考だと『強い・憧れ・抱かれて(抱いて)もいい』となり抱かれるのが武将・漢(概念)なので、めちゃくちゃかっこいいもののふだったなぁ。早乙女友貴さん扮する太史慈様と孫権だけは『剣劇三國志』の中でも私の理想的な武将を演じていた気がする。
役者さんに等しく演出がつけられていたんだろうに、彼らの魂の核にはちゃんと武将がいるような、いい役者さんたちだったなぁ。そんな漠然としたよい印象を感覚で受けました。

まぁ私は『剣劇三國志』がターゲット選定した舞台の消費者とは異なるコードで三国志を捉えていたと思うので、孫権と太史慈が刺さったのでは?皆は孫策と周瑜にぞっこんだ!と有識者に指摘されてぐぅの音も出ずごうなきして終わった。

商いとして成り立つのかが不透明だから無責任な発言だけど、孫権と太史慈様はすごく刺さったエッセンスだから、このふたりメインの舞台の続編が見たい!魏から引き抜きにあっても振って孫権についていくスーパー騎士様太史慈様のくだりが見たいよーーー!


黄蓋、程普、韓当(扮する高木トモユキさん、富田翔さん、郷本直也さん)

三国志を描こうとするとどうしても年齢層の高い男性の比率が多くなると思うのだが、全然知らないおじさんじゃなくていい感じに知ってて好感度が高いおじさまで、空気読める系のキャストさんたちでよかった。武器オタクとしては武器がこの3人に対してもキャラクターそれぞれに合ってて解釈合致だったけど、これも荒牧慶彦さんのこだわりらしい。オタクぢから、信頼すぎる。

おじさん3人まとめられてて雇用機会作ってて荒牧さんって懐広いなと思った。おじさんはいつの時代も迂闊な部分はあるが、とてもいい味で愛らしいおじさんたちだった。黄蓋は男の人が好きそうなガハハ系のキャラクター。韓当はセクシーな大人の余裕があってよかった。

程普のキャラデザがよかった。インテリ×メガネ×おじさんなんて私の大好きな要素だから。
インテリってアホは演じられない(演技力があれば覆い隠せるものだろうか?)と考えているので、富田翔さんも知性が高いなと思った。暴投ピッチャー荒牧慶彦さんの奇異な玉(ボケ)をなんでもキャッチしてお世話できる古参スーパーキャッチャー、古参バッテリーでもあった。前の事務所の先輩後輩らしい。

この三國志の世界に女は確実に存在するが限りなく透明化されているため、孫の息子たちは『程普ママが産んだ』という説が濃厚だろう。重湯マウント取ってくるし、姑ムーブの解像度が高すぎる。

孫堅(扮する松本利夫さん)

物語の構成上、亡霊ポジションになるので、ちょっともったいなかった。LDH枠という豪華なキャスティング、様々なご縁とつながりが素晴らしいですね。お父さんっぽさがあって、身体強そうだし、孫堅のイメージと合っていてよかったです。
2部で松本さんがもうちょっと活躍する場面があったらうれしかったかもしれません。


劉表、黄祖(扮する富田昌則さん、玉城裕規さん)

劉表の富田さんはおもしろおじさんとい感じで舞台の空気がよくなっていて、いいポジションだった。台詞飛ばしててそんな短い台詞も忘れるなとか若者からボロクソに言われてたけどノーダメで飄々としているメンタル鬼っぷりは見習いたいと思った。

また黄祖はいいヒールのエッセンスでしたね!
小劇場っぽい演劇にありがちだと思うんですけど、スポット当たって独白長台詞みたいな演出のアレルギーだから、いきなりスポット当たって役の心情街頭演説みたいなの始まるのとかいつもなら怖くて泣いちゃうんだけど、玉城さんの独白長台詞は違和感がなかったし自然と観れたのがすごいなと思った。

演技できない素人が大変恐縮なんですが、あれって実質一人芝居で役者さんの技量が誤魔化せない演出のような気がするんですよね。かなり難しいことを無理強いさせていませんか?と感じて気が逸れてしまうことが多い(だから違和感がない役者さんは技量があると受け取っている)。
しかし玉城さんは悪役っぽい立場から変化して絶望してく過程まで、丁寧に受け取れた。やっぱり玉城さんって芝居上手いんだなと思った。


芝居や演出ってなんだろう

演劇が好きな人にとって、没入できて無心で世界観に入り込める演劇と劇場は最高のご褒美時間だろう。
私は文化的な玄人向け演劇を好んで嗜むわけではないし、今回は残念ながら戦略ターゲティングの轍から外れてしまった悲しいオタクにすぎない。特定の誰かが悪いわけではないし、私が顧客ではなかっただけですが、三国志は好きなので残念だった。

しかし三国志の知識がない状態からたくさん調べて書いた脚本とのことで、なので『シェイクスピア』になぞらえる匂わせをしつつ玄人向けの演劇に寄せたのは、良い選択だったのかなと思いました。

感情に訴えたいわば人間的に咀嚼して寄せた感じの仕上がりだと感じました。武将たるものの精神みたいな概念をよくわからないぞという人にも伝わりやすかったのではないかな。私も武将ではないので理解し切ることはできないが、武将の精神とか言われてもはて?って子も多そうだし。

ぐるぐる戸惑ったから、歴史有識者に取材した。やはり私が認識している三国志解釈が史実や三国志イメージと違うわけでないなと自分の中ではエビデンスが取れたため(?)『剣劇三國志』はおそらくかなり乙女向けの味付けだったのかな。

シェイクスピアみがあるという要素こそが乙女向けっぽかった。たぶんものすごく正解な戦略だとオタクながらに賛同できたし、マクベスの筋のオマージュなんだけど、舞台上で私が受け取った演劇はなんかシェイクスピアではなくて。もっと近い属性のものがあるなと唸って、『宮沢賢治』っぽいかも?となり勝手に腹落ちした。
なんだか演出の情景描写やセンスが美しいんだけどちょっと寂しい感じで不気味さがあって、ピュアで子供っぽい。夜空の銀河を眺めてる子供のような世界観で、等身大。
物語の筋や核はプロデューサーなどが交わって決定されるのだろうけど、端々に散らばる価値観やエッセンスって滲むものだと思ってて、アート的に振った演劇によく見受けられるストレートな正義や優しさや死生観がよくあらわれていた。やっぱりアート的な演劇って純粋な人たちの心に寄り添える救い、優しい正直な人たちを救うコンテンツなのではないか、と改めて考えてしまった。ある種の無菌室のような潔癖性を感じるのだ。

だからこそ観劇趣味って、劇場に訪れる客層に女性が多い分野なのだろうか。
先日観劇した小劇団の演劇、出演者の9割が10代の可愛い女の子だったのに、客層は8:2で女性が多かったもんなぁ。あと固定客をつけるには独特なコミュニティ色や強めのメッセージを入れるのはいいらしいから、THE演劇的な演出効果を入れるのってある種の芸術的センスや技法なのか?と当事者じゃないから分析しちゃいました。


個人的思想

『推しがいるからではなく、心を動かされたコンテンツを評価する』のスタンスを貫いているつもりだけど、やっぱり舞台まで時間や労力をかけて足を運ぶ動機ってそれこそ荒牧慶彦さんが手がけたからとか、好きな俳優さんが出演されているからとか、興味のある題材だからみたいな部分が大きく占めている。

演劇がかくあるべきか伝統とか違いはあると思うんだけど、どんなコンテンツでも貴賤の差はないしお客様の心を動かしたものには無二の価値があると思う。このジャンルだからダメ、こいつが関わっているのはダメとか、そんな線引き自体がナンセンスなのだろうと感じます。

私は友人でも趣味のコンテンツでも推しでも、それぞれを役割で分散化しカテゴリー分けしてる。そうするといろんな価値観や都合がまるっとすべて合う必要はなくなる。この人と合わなくなってきたなあって思うことが少なくなる。
少し冷たい言い方かもしれないけど、推しや推しコンテンツが好きだからと言ってあくまでも別の人間なんだから考えが合わない部分だってあるし、私自身すべてを許容してすべてを肯定できるような聖人ではない。それは申し訳ないけどお金払っている限りは許してほしいなと思ったりしますし、逆に誰に対しても私のすべてを受け入れてなんて思わない。

それはコンテンツでも同じで、推しが手掛けようが好きな制作さんだろうがどの演目もそれぞれが素敵で、まぁときどき合わなかったりダメな時もあるよ。でも人間だもんねそんな時もあるねってお互いの健闘を讃えられる世界にしていく方が、表現の幅や可能性が広がると感じるので私はそのスタンスを貫いていくと思う。

また普段観劇するものは「好きな人がいるから」というきっかけや「自分の趣味嗜好」で選ぶから、どうしても足を運ぶコンテンツが似たものになりがちですが、普段あまり触れる機会のない演出家さんや役者さんにちょうどよく触れることができて、魅力的な人を知るきっかけをもらえること、とても有り難い機会だと思う。
これからも誰に何を言われようが興味を持ったら味見してみるチャレンジはしてしまうんですけども。荒牧さんの活動を通して得られるものがこんなにもたくさん溢れていて、まだまだ幸せにしてもらえるなと思いました。
『編集部満場一致ではじまる連載も、誰も推してないでボツになる作品も、どちらもない』ですからね!観客が何を求めてこの場に来ているか、何が刺さるかで感想が変わるだけという。

演劇ってコンテンツそのもの、その乗算でかけ合わさる板の上に関わった人たちの生き様を丸ごと見て楽しむジャンルなのかもしれないな。

荒牧慶彦さん憧れの男・早乙女太一さんがご自身の大衆演劇に対して仰っていたように"板の上にその役者自体の人生もすべてがのっかってお客さんに見られる"みたいなグルーヴ感のある魅力を体現している人たちが、演劇という分野なのではと改めて思う。

明治座さん最年少座長の早乙女太一さん


感想まとめ

よかったポイント

・2部のドリームマッチ殺陣とハリセン
ハリセンで廣野さん孫権をペシペシペシッてできるの楽しかったし、音が出てると声も出しやすくなって、楽しかった!
太史慈様と孫権の師弟マッチがあって、興奮で爆発して肉片飛んだ、周囲の皆様ごめんなさい。無双でクリア(武将討死)したあとにミニゲームみたいなボーナスステージができるときみたいでよかった。

まぁ松平健様がマツケンサンバ、宝塚歌劇団さんがレビュー、テニミュがサービスメドレーやってるんだから誰に文句言われようが“正解”でしょ。上様に文句つけんのかテメェって感じですよ。
特に悲劇は気持ちがずぅぅんって沈んだまま帰るの嫌だから、スカッと切り替えておうちに返してくれる気づかいが本当に大好き!新泣回避の救済保険ってこった。保険はつけとこ。

戦闘力500、防御力3


・大階段と船

謎に舞台セットオタク属性があるので、ちょっと今作は全体的なセットが好みと合わなかったのはあるんだけど(ごうなき)、この2点はすごく好きでした!大階段の構造と、回転する動きのある感じが殺陣シーンを楽しくしていたし高低差があって好みです。
私は飽き性なので後ろにシーン被るくらいのスピードで場面転換して欲しいから、この二つのアイテムは私的には好きなギミックだったんですよね。忍者屋敷とか好きだからかも、からくりっぽくてどんな構造になっているのか考えるとわくわくする。

・明治座さん
本当に接客のクオリティが高い。階層にそれぞれ企画が盛り込まれていたので私はずっと迷子だったが(カスのため)、スタッフさんの誰に何を聞いてもだいたい把握している。何も言わなくても空になった湯呑にお茶を汲んでくれる。劇場全体がエンタメを作ろうという一体感で包まれていて教育が行き届いている。
劇場の神様がちゃんといると思う(神仏を大切にしていることの重要性はなんだかんだあると思う派なため)。座席も高低差があり被らなくて比較的見やすい。

・ビジュの雰囲気
カメラマンさんとレタッチャーさんの加工が上手くて盛れていた。2.5っぽいコスチュームとヘアメイクが映えるコントラスト強めの加工でインパクトがあったしデザインもちょうどよかった。

・グッズ
お味噌汁、幟旗タオルなど、個性的な発想だが楽しいラインナップが充実していた。先述の通りビジュアルの仕上がりがいいので、それに付随してブロマイドなどの売れ行きがいいように感じた。
荒牧慶彦さんが絡むグッズを明治座さんで買うときは手際がよく在庫調整も上手いが、発注や販売は明治座さん関連の外注先が担っているのか?有能すぎる。これからもこの会社さんにグッズ関連を任せて欲しい。殺陣まつりのときも物販変じゃなかったもん。知らんけど。

・衣装のクオリティ
推し衣装さんのヨシダミホさん他の衣装さんチームで作ったという衣装、ひらみがあってキラキラしててよかったです。衣装のひるがえりって殺陣において大切な見栄えですね、役者さんは動きにくいと思いますが。
早乙女ご兄弟の殺陣の舞台映像を拝見した際も、衣装のひるがえしをすごく効果的に活用されており、衣装まで演出のひとつに完全に落とし込み計算されているプロの仕事ぶりに感動を覚えました。

三国志(もとい三國無双)が好きなオタクの多くは中華系の装飾や衣装が好きなのではないか?かくいう私もチャイナ系のコスチュームが好きすぎて人生で100着以上着てきた異常オタクであるが、とにかく手間がかかり大変なのはオタクの端くれながらに存じ上げているので、通常の10倍くらい手間や工程がかかるであろう衣装製作お疲れ様でした……という気持ちでいっぱい。あと布オタクなので布地の選び方、縫製と製作納期のギリギリの兼ね合いを攻めたあろう跡、細かい部分のバイアスのつけ方など、お疲れ様でした……という気持ちでいっぱい(再放送)

私がヨシダミホさんの衣装好きな理由ってトータルバランスがいいシンプルさにあって、抜け感が作れるセンスのいい人だなと思っていたけど、華美な衣装もやれるのがすごいなと思った。わりと白画用紙系の素材である2.5系の役者さんの顔面に浮きかねない、派手で華美な衣装をよくなじませていて、さすが!と脱帽。

・武器
武器が全部クオリティ高くて、キャラクターと解釈合致で好き♩孫権の双剣さばきがクルクル上手で器用で運動神経が高そうな感じと合っていたのが特によかった。
弓の名手・太史慈が弓じゃないのは笑ったけど、早乙女友貴さんをせっかくお招きした舞台で日本刀の太刀裁きを見たいに決まっているので、おおいにアリなアレンジだった。

・関係性を強調した脚本
関係性厨としてはキャラクターや役柄単体よりも関係性で胸が熱くなるので、オタク向けにいい感じの味付けした関係性の抽出がよかったと思いました。

強いて言うならリクエスト

・ビジュアルと内容の雰囲気のギャップはないほうがいいかも
カメラマンさんorレタッチャーさんの腕が良すぎたので、半リア充向けコーエーテクモゲームス系チャンバラ演劇のテイスト×深い話のダブルミーニング作品が見れると勘違いしてしまい、びっくりした。
→ビジュの周りに小さく赤い花びらや紙吹雪を散らし、『今回はこっそりお耽美演劇ですよ!2~3時間がっつり演劇やりますよ!』という宣戦布告をして欲しかった。覚悟があれば受け取り方も全然違った気がするし、演劇好きな方への訴求力も増したのではないか。

・企画を楽しむ時間が短い
複数回通うことが前提の人は問題ないと思うんだけど、1日でグッズを購入してお弁当を食べて……というコースを回ろうとするとにぎりめしを口に詰め込みながら荒牧慶彦コラボ味噌汁の辛さで気管をただれさせつつ息絶え絶えで明治座さんを駆け回るという、仕事ばりのタスク処理をこなさなければならず、オタク忙しいねん。でも企画はいっぱいあって楽しかった♩

・衣装の露出が少ない
これは完全な私利私欲とお気持ちだが、なぜ私が中華系の衣装が好きかというと、スリットや染物グラデーションの透け感や中華ボタンで遊べるセクシーさが好きだから(?)。
それだけではなく、甲冑や籠手を装備すると全体のシルエットがふくらんで野暮ったくなりやすいので、おなか、背中、足の一部を適度に透けさせたり肌を露出させるのが好き(好き???)これらはコーエーテクモゲームスさんの影響によると思われる。続編があるならば、下品じゃない肌見せデザインへのバージョンアップを期待するです。

『剣劇三國志』を私好みに変えて欲しいどうこうの意見書ではない、ということは念押しで申し上げていこうかと思います。
『剣劇三國志』の感想をまとめてアウトプットすることで、勝手にすっきりさせていただきました。また何億回でも言いますが、私が何言ってても好きな人は好きでいればいいし、私も好きなものが何か言われたからって自分の好き嫌いを変えないし別にというスタンスなので、私の好きな三国志像を貫いた結果の一感想でした。
「それはそれ、これはこれ」至上主義なため何か特定のものを嫌っているわけでも攻撃したいわけでもありません。全体的にいい方向や幸せにつながって欲しいという願いや祈りを込めた一オタクの感想です♩

次回作に繋がるとしたら、孫権と太史慈様のふたりが出るなら現地行こうかな、という感じです!この師弟ペアの訴求力高すぎるンゴ!


剣劇『三國志演技~孫呉~』公演詳細

公演期間:2024年 4月5日(金)~4月16日(火)
会場:明治座

おみそ汁他グッズをオンライン販売中♩


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?