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ターゲット文型を練習するための話題設定

1. 文型と話題をリンクさせよう

1-1. 自己紹介

こんにちは。
フリーランス×オンラインで日本語教師をしている ゆうゆう です。

日頃、マンツーマンでオンラインレッスンをしていると、「話す練習がしたい!」というざっくりな注文を受けることが多々あります。

なので、改めてヒアリングをして、もうちょっと具体的なレッスンプランに落とし込んでいくのですが、それでもやっぱり、「雑談」や「フリートーク」をお願いします!という生徒さんがいらっしゃいます。

これが、上級レベルまで勉強してきた生徒さんなら、そんなに細かい設定をしなくても、話の中でいろんな取っ掛かりを見つけることができ、追加の文型練習などに派生させやすいのですが。

初級〜中級ぐらいの場合、どうしても、あらかじめ設定された話題、ターゲット文型(その練習で扱いたい文型)、といったものがないと、なかなか一定の時間ずっと喋り続けるというのが難しいし、会話練習から実際どれだけのことが学べて定着させられているか?というのが心配になります。
簡単なことだけ、自分が言えることだけをだらだら話していては、新しいことが学べないと思うのです。

というわけで、このような場合、わたしは、「次回扱いたい話題と使ってほしい文型」を、事前にざっくり設定しています。

決して、すべてを網羅してください!というわけではなく、目安として考えてください、という伝え方です。

ここで重要になってくるのが、「文型と話題がきちんとリンクしているか?」という点だと思います。

都度、ターゲットとなる文型が「どんな場面で」「だれが」「だれに」「どんなことを」「どんな気持ちで」話すための文型なのかを分析し、それが練習しやすい話題を設定することが大事だと考えています。

今回は、上記のような状況で、どんな話題を使ってみたか、ご紹介していきたいと思います😄


1-2. この記事で書くこと

この記事では、今までにわたしが実践してみた「ターゲット文型を練習するための話題」について、N3レベルを学習中の生徒さんを例に、ご紹介していきたいと思います。

※ この生徒さんとのレッスンは…
 「みんなの日本語 I」「みんなの日本語 II」を使って独学で勉強したあと、わたしとのオンラインレッスンをスタートし、「新完全マスター文法 日本語能力試験 N3」の 12課 まで 勉強を進めている生徒さんです。
 1時間レッスンのうち、冒頭3割ぐらいは話す練習、残りは文法練習、というレッスンプランです。
 話す練習は、もともと「フリートークで」とのリクエストでしたが、だんだん「ちょっと事前に準備して、言いたいことを的確に言えるようにしたい」というお互いの思いが合致したので、事前に、練習したい文型とそれに合った話題を設定することにしました。


具体的には、以下のような話題をピックアップしました。

  1. もしアニメの世界に入れるなら、どのアニメがいい?(条件表現の練習)

  2. 自分と恋人の、合うところと合わないところ。(対比表現の練習)

  3. 母国語の、オノマトペやフィラーを紹介。(受身+頻度表現の練習)

  4. 魚以外の寿司ネタは、アリ? ナシ?(主張を述べる練習)

  5. 明日も早い。飲みすぎてはいけない。そんな飲み会、どうする?(習慣やマイルールなどを述べる練習)


何かひとつでも、為になる情報がありましたら幸いです。
それでは、始めましょう!



2.ターゲット文型を練習するための話題例

2-1. もしアニメの世界に入れるなら、どのアニメがいい?(条件表現の練習)

この生徒さんは、アニメが大好きとのことで、普段のおしゃべりや文型導入の例文などでもしばしば取り上げています。

そこで、あるレッスンで、このようなお題を提示しました。

話題:「もしアニメの世界に入れるなら、どのアニメがいい?」
使ってほしい文型:〜なら、〜たら、〜ば など

翌週、生徒さんの答え、お披露目タイム。

S:もし、アニメの世界に入れるなら、「斉木楠雄のΨ難」に入りたいです!この世界に入ったら、わたしも超能力が使えるかもしれません。使いたいです! 超能力を使えば、いいことも、悪いことも、できます😄
T:お〜! ナイスアイデア👍  わたし、アニメは見ていなくて、実写の映画は見たんだけど…。確かに、みんな超能力を使っていて、楽しそうでした!
S:はい!  Yuさんは、アニメの世界に入れるなら… どうですか?
T:うーん。悩む… けど、「ぼっち・ざ・ろっく」の世界に入れたらうれしいですね。音楽がすごくかっこいいから、ライブを見に行きたいです✌
S:楽しそう! 
……

といった感じで、「こうだったら…」「ああだったら…」「別のアニメも選べるなら…」と、話が広がりつつ、日本語学習者にとって混乱しやすい条件表現の文型をたくさん練習することができました。

ただ、練習してみて、「〜たら」と「〜ば」の使い分けが難しいようで、後件とマッチしていない場合もあったので、フィードバックをする機会も取れてよかったなと思います。


2-2. 自分と恋人の、合うところと合わないところ。(対比表現の練習)

この生徒さんには、同棲中の恋人がいらっしゃいます。
わたしも、同棲を経て結婚したので、共通の話題も多く、毎度 恋バナが盛り上がります。そこで!

話題:「自分と恋人の、合うところと合わないところ」
使ってほしい文型:〜に対して〜、〜一方〜、〜反面〜 など

翌週、生徒さんの答え、お披露目タイム。

S:わたしと恋人は、いっしょに住んでいるので、毎日会って話します。だから、ときどき、けんかもあります。
T:わかります。わたしも同じでしたよ。
S:はい。そして、わたしと恋人の「好きな料理」が合います。だから、いっしょにごはんと食べるのが楽しいです。
T:うんうん。「好きな料理」は「味の好み」「食の好み」「食べ物の好み」っていう言い方をよく使いますよ!
S:あ、そうですか。わかりました。わたしと恋人の「食の好み」が合います。でも、「映画の好み」 は 合いません。わたしはロマンスやコメディが好きなのに対して、恋人はゾンビやホラーの映画が好きなんです。
T:あ〜、合いませんね笑  
S:Netfilixをつけるたびに、けんかします💦
……

このあとも、「こんなところが合う」「こんなところは合わない」という話が続きましたが、最終的には「大好きなんです」という惚気までいただき、ハッピーな会話練習でした😄

また、「〜たびに」など、こちらで指定していない他のN3文型も使用できていることが確認でき、うれしかったです。


2-3. 母国語の、オノマトペやフィラーを紹介。(受身+頻度表現の練習)

ある日、日本語のオノマトペについて生徒さんから質問があったことをきっかけに、フィラーなどにも興味を持っていることがわかったので、このようなお題も試してみました。

ちなみに、フィラーとは、日本語の場合、「えっと」とか「あの」とかに該当します。発話と発話の間を埋める、「つなぎ言葉」のことです。

話題:「母国語のオノマトペやフィラーを教えてください」
使ってほしい文型:〜と言われる、〜が使われている、〜ことがある、〜ときがある、など

翌週、生徒さんの答え、お披露目タイム。

S:ロシア語で、電車の音は「チュフチュフッ」と言われます。
T:「チュフチュフッ」? 何か、かわいいですね。
S:日本語では、どうですか?
T:「ガタンゴトン」とか「シュシュポポ」とか、かなあ?
S:それもかわいいですね😄 そして、ネズミの声を言うとき、「ピーピー」が使われています。
T:え!? 日本語と全然違う!ねずみは「チューチュー」です。だって、「ピカチュウ」の名前…
S:あ、ピカピカのねずみ!? おもしろいアイデアです✌ それから、ロシア人は、「ごめんなさい」を言う前に「オイ」と言うことがあります。あと、忘れるとき、失敗するときも「オイ、〜〜〜」と言うことがあります。
T:へえ〜。日本人が「オイ」って言うと、怒ってる?って感じです。
……

他にもたくさん、動物の鳴き声や身の回りの音についても紹介してくれました。
ちなみに、馬の鳴き声は「イゴゴ!」で、ロバの鳴き声は「イーアー!」だそうです😄

2-4. 魚以外の寿司ネタは、アリ? ナシ?(主張を述べる練習)

この生徒さんは現在、日本に住んでいらっしゃいます。
ある日、最近印象的だったことについて聞いてみると、その一つが「回転寿司に行ったら、ごはんの上に肉が乗っていた!」でした。そこで…

話題:「魚以外の寿司ネタは、アリ? ナシ?」
使ってほしい文型:〜べきだ、〜と思う、〜ほうがいい、など

翌週、生徒さんの答え、お披露目タイム。

S:魚以外の寿司ネタは、「アリ」だと思います。日本の回転寿司で、牛肉の寿司と、ミートボールの寿司を食べました。まあまあ、おいしかったです。
T:わたしも食べました。わたしも「アリ」だと思いました。
S:はい。でも、チーズの寿司とデザートの寿司は売るべきじゃないです。
T:…それは、どんな寿司?
S:わたしの友だちは、フランスに住んでいます。フランスの寿司の店で、クリームチーズの寿司と、チョコレートの寿司を食べたと言っていました。でも、おいしくなかったと言っていました💦
T:なるほど…。
S:日本で、日本の寿司を食べるべきです!
T:はい。お友だちによろしくお伝えください🙇‍♀
……

わたしもフランス留学時に、現地のお寿司を食べました。
チーズとアボカドとサーモンの巻き寿司を試しに食べてみて…、これはまあまあでした。でも、チョコレートが入ってる?のは想像しがたい💦

でも、異文化体験として、またフランスに行く機会があれば試してみたいと思いました。

2-5. 明日も早い。飲みすぎてはいけない。そんな飲み会、どうする?(習慣やマイルールなどを述べる練習)

この生徒さんは日本の会社で働いていて、同僚には日本人もいらっしゃるそうです。なので、たまに、いわゆる日本らしい「居酒屋での飲み会」があるとのことなんですが…。
飲み会好きが多く、次の日も仕事なのに夜中まで続く😿 ということもあるので、最近、自分のルールを作ったそうです。

この話を聞いたので、早速、会話練習のために拝借しました。

話題:「明日も早い。飲みすぎてはいけない。そんな飲み会、どうする?」
使ってほしい文型:〜ようにしている、〜ことにした、〜ことにしている、〜ている、など

翌週、生徒さんの答え、お披露目タイム。

S:飲み会があって、次の日も仕事があるとき、午後10時までに帰ることにしました。そして、お酒を飲むとき、「お冷」も飲むようにしています!
T:それは大事!次の日のために、早く寝たほうがいいですよね〜。
S:はい。このルールを作ったら、次の日の仕事はだいじょうぶです。
T:お酒は、何が好きなんですか?
S:ビールとワインが好きです。でも、同僚は日本酒が好きです。でも、日本酒は強いので、あまり飲みたくない… 飲まないようにしています。
……

生徒さんの習慣やマイルールがある場合、「〜ようにしている」や「〜ことにした」といった文型を練習する絶好のチャンスなので、会話練習にうまく持ち込めてよかったな、と思いました。

生徒さんの身の回りの状況や、趣味嗜好、過去の経験などを、文型練習の場面として使うことができると、練習が効果的になると思います!



3. まとめ

この記事では、わたしが今までにやってみた「ターゲット文型を練習するための話題設定」について、N3レベルの生徒さんとのレッスンを例に5つご紹介しました。

今回のような練習の流れは、N3に限らず、どんなレベルの生徒さんにも応用できます

日本語教師として、文法分析という難解な作業がある中、場面や心情と文型がマッチするような練習を考え、いろいろ試していきたいと思っています。

いつもフォロー・スキ・サポート、ありがとうございます。
とても嬉しいです!
最後まで読んでいただきありがとうございました😉

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