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自分のために頑張ることと、人のために頑張ること。両輪で登れるといいよね。

ものすごく「今かよ!」ってことを言うので覚悟していただけたらと思います。

あけましておめでとうございます。

今かよ!

年が明けてもう二週間を超え、やっとnoteを書くテーブルにつけました。どこで寝て、どこで息をしていたの?という日々で年末年始は埋め尽くされ、箱根駅伝で例えるならスタメンメンバーじゃないのにずっと給水ランナーとして並走しているような。サポートメンバーなのに、1区も2区も3区もずっと走り続けているような。
100キロマラソンを走らされているのにスタメンじゃない感じ…。

年末年始の大家族の母をこれ以上言い表す言葉はないな!?といま思いついいてフフフッとなりました。フフフじゃねえよ。

私はずっと血圧100(上)-60(下)くらいで推移していたんですが、このところ上がってきて、年末に上が130を記録した時に「これが、無理をするな、というサインか…!」とドキリとしたのです。

実母も義母も年が上がると血圧が上がっていきました。そういうものかなあと思いもするんですが、そんな時に安静にすることが大事だと世間はしつこいくらいに言います。しかし。サポートすべき箱根ランナーがいて、給水スタッフが休めるわけがないのです。寝る瞬間から起きた瞬間まで「あれやらなきゃ、終わったらこれやらなきゃ」に追われます。

これまでだってずっと漫画の連載の仕事をしていたのでもちろん「やるべきこと」に追われていましたが、なんていうかレベルが違う。
と言うのも最近義父と義母の体調不良が続き、とうとう家庭のキープの大半が私の守備範囲になってきたからです。

これまで義母が行ってくれていた義父の病院の付き添いも、晩御飯の支度も、子供達の見守りも、なかなか頼ることができなくなってきました。

ネームが終わらなくて絶望的な時も「こっちはみんなにご飯を食べさせておくから、仕事してきなさい」と言ってくれていた義母。ドアを開けたら美味しい料理と味噌汁を作ってくれていたお義母さん。

もちろん体調が戻ればまたサポートお義母さんになってくれるかもしれませんが、それでも80歳を超える年齢を考えればそんなに頼ってもいられません。 
その襷がわたしに。給水スタッフにも襷があったとは。
目の前を走っていてくれていた給水スタッフ先輩がいなくなって、一番前を走る時、きっとその風の冷たさと重さを感じることでしょう。
ランナーはどんどん早くなり、気がつけば坂道になり、給水スタッフとしてどれだけ頑張れるのか、自分の走りが遅いせいでスタメンメンバーの成績が落ちたらどうしようと言う不安に潰されそうです。

家族を眼科に連れていき、耳鼻科に連れていき、映画に連れていき、おじいちゃんのお薬を飲ませ、おばあちゃんの具合を見て、夕飯の支度を8割終えて、サッカーの習い事に行く家族を送り、束の間のファミレスでコーヒーを飲みながらやっと書くnote。


琵琶湖ホテルは今年も美しい

1月6日に行われた競技かるたの名人位・クイーン位決定戦の前夜祭。挨拶をすることになり、競技かるた世界の強い人や偉い人を目の前に壇上で「また戻ってきてしまいました…」とお話しさせてもらいました。

2年前に「ちはやふる」連載終了のご挨拶をしたのに、なぜまた戻ってきちゃったのか、ということを笑いを交えてお話しさせていただいた時、口にしていたのは
「自分のために思い切りやりたいことをやろうと思って帰ってきました」ということ。


「競技かるたのためにとか、待ってくれる誰かのためにとか、そういう気持ちを一旦脇に置いて、好きなことを好きなようにやろう。 何がしたい?と自分に聞いてみた時に出てきた答えが今描いている物語でした。また競技かるたのお話になってしまったので、また帰ってきました。 健康な体で、強く前向きな意思で、自分のためにとことんやりたいことをやる、ということが ぐるっと回って人を励ますことがあることを、私たちは知っています。

そんなことをお話しさせていただいた後、席に戻って「正直すぎた・・・」と少し後悔していたのです。これは実はとても自分勝手な考え方だとわかっていました。特に公の場では、「応援してくれるみんなのために頑張ります」と言うのが望まれるスタイルです。誰かのためより自分のためを優先しますと言ってしまうのは、この場では傲慢なことではなかったか・・・

円卓に座り遅れてやってくる緊張で手を握りしめていたとき、元名人の岸田諭さんが話しかけてくださいました。
2013−2015年で名人を務めていた岸田さんは、私にとってずっと見守ってきていた優しく強い選手です。

「さっきのお話、なんか胸にズンときちゃって・・・」
岸田さんが、自分の胸の内を見回しながら言葉を拾い上げるように私に話してくださいました。

「そういえば、自分はずっと人のためにしかかるたを取ってこなかったな、って気がついたんですよ。最初は姉がやっていて、メンバーが必要だからとかるたを覚えたし、中学や高校でもかるた部の団体戦のためにと思ってしか頑張ってなかったし、大学でも団体戦のためで・・・
そしてその後期待してくれる人が増えてきて、じゃあ頑張って名人を目指すかなって・・・そんな感じで、自分がやりたくてやると言う感じじゃなかったんです。」

なんですと。

人のためにだけで、あんなに強くなれるんですか。人のためにの延長で、名人位まで行っちゃうんですか。なんて優しい人なんですか。

岸田諭さんは、言うなれば箱根のスタメンランナーなんだけど、給水スタッフがめちゃくちゃ数珠繋ぎでずっと応援をしてくれてて、給水スタッフの熱意がすごくて辞められずに走り続けたタイプ・・・・!

そんな人もいるのかあ・・・・。給水スタッフのリレーも見事に決まったのだなあ。

もちろんご本人の才能と努力も格別のものだったに違いないのだけど、人生の多くで誰かに推してもらってここまできた方なのだなあ。

そして今年も、名人戦のわかりやすくYoutube解説をしてくださって、これも全部人のため。
人のために頑張りすぎて、ふと「自分のためにやってこなかったな」と思うことがあっても、なんていうかそれはもう、まだ開いてないドアが豊かにある希望しかない現実だなあ。ボーナスステージの豊かさだなあ。

人のために頑張りすぎちゃう人は自分の声を無視しがちだけど、山頂に一度立てたあとに向き合う自分自身というのは、もう立派な相棒としての自分なのではないでしょうか。

熱戦は今年も繰り返され、とんでもない戦いととんでもないラストで観客の心拍数は上がりっぱなし。とても楽しくとても怖い名人・クイーン戦でした。私はこの場がとても好きでとても楽しくて、繰り返される厳しい熱い戦いの虜なのです。岸田さんと種村さんの解説のすばらしさも毎年聞きたいくらいでした。

その苦しさと面白さをこれからも伝えていきたいので、漫画も頑張っていきます。物語を編むことの楽しさ、好きなことを好きなようにやることは決して簡単なことじゃないと毎日思うけど、命を燃やして努力していきます。

人生の違う場所で、同じように箱根ランナーであり、マラソンの給水スタッフであるみなさん、どうぞ命大事に走っていきましょう。

時々あなたのための給水スタッフになりたい私であるし、いつもいつでもわたしの給水スタッフでいてくれるファンの皆さんであることを知っています。

今年もどうぞよろしくお願いいたします!


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