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その座右の銘、疑問形にしてみない?

あなたには座右の銘はありますか?

「石の上にも三年」「罪を憎んで人を憎まず」「急がば回れ」「李下に冠を正さず」・・・。
自分が生きていく上で大切にしている言葉は人の数だけありそうです。

最近某高校の図書委員さんから「座右の銘などを色紙に書いて返送してください」とのご依頼があり、自分に座右の銘ってあったかな・・・?と考えました。

この新聞記事にインスパイアされて「じゃあ私たちも蔵書の中で貸出を良くされる作家さんにお願いしてみよう」と図書委員さんの中で企画が立ち上がったそうです。光栄。図書室に漫画も置いてあるんですね。

しばらく考えてハッとしました。私の座右の銘って言ったらあれしかない。

『トリック』は、テレビ朝日系列放送の日本のフィクションテレビドラマシリーズ。シリーズ第1作は2000年7月7日から放送。その作中の上田教授の出版した本という設定。
本家本元。アメリカ合衆国39代大統領ジミー・カーターの著書。

「なぜベストを尽くさないのか」

「原稿がなかなか終わらずもう眠い・・・もうここのコマはこれでいいんじゃないか・・・」
「時間がないからもうこの約束はキャンセルしてしまうしかないんじゃないか・・・」

そんなふうにがんばりの崖から転げ落ちそうになる時があります。逃げ腰の視界はいつも暗いものです。

そんな時に流れ星のようにキラッとこの言葉が飛んでくる。

「なぜベストを尽くさないのか?」

・・・・・なぜ・・・・ベストを・・・・なぜ・・・?

いや尽くすし。まだここはベストじゃねーし。

何度そう思って顔を上げたことか。
搭載した頑張りタンクは全てからっぽになったような気持ちから、「そんなこともあろうかと」と予備のタンクが出てくるのを幾度体験したか。

なぜこの言葉がこんなに自分にクリティカルに響くのかと考えたのです。
「ベストを尽くせ」ではどうだったでしょうか?

「○○であれ」という形のクラシックな標語はたくさんあります。「整理整頓」や「不撓不屈」など背中を押す系の言葉に励まされる人もいるかと思うのです。
でも私はそれでは自分の頑張りが引き出せなかった。

「なぜ〜なのか?」と疑問系であることが非常に効果を上げていると思うのです。
「なぜ」と問われることは、背中を押されることではなく答えを引っ張り出されること。

その問いの答えは、正直者ならば「もう疲れたから」とか「もう無理だから」とか差し出したでしょう。

でもそうじゃなくて。
原稿を「これで終わり!」と放り出して一刻も早くベットに転がり込んで泣きながら寝てしまいたい自分を、意地っ張りな自分が「いやまだやれるし!」と言い始める。

「ベストを尽くせ」と言われたら「無理〜!」と言えるのに、「なぜベストを尽くさないのか?」と言われたら「ぐ・・・・・や、やれるよ、もっと」と返してしまう。

某高校の図書委員さんに書いたお返事イラストはこれ。よしここにサインを書いて・・・と思ったときに、流れ星が言います。

「なぜベストを尽くさないのか?」

ぐぬ・・・・・!?

尽くす・・・・尽くすよ!!!

いろんな座右の銘っぽいものを疑問形にしてみよう

座右の銘は疑問形の方が励まし力が強いのではないか・・・・?
そんな仮説が浮かんだのでちょっと考えてみました。

「石の上にも三年」→「その石の上に三年いたっけ?」

「罪を憎んで人を憎まず」→「お前が憎んでいるのは罪か?人か?」

「急がば回れ」→「急いでるのになぜ遠回りしない?」

「李下に冠を正さず」→「ここ李下じゃない?なんで冠正してんの?」

ム、ムカつく〜〜〜〜〜〜〜〜。

ムカつくけど、疑問形にした方が態度を改める確率が上がる気持ちがしませんか。

みなさんの座右の銘、ちょっと疑問形にしてみてください。

こんなことを考えてる時に夫に座右の銘を聞いてみたら、「降りてきたマイナスを自分のところで止める」という言葉が出てきました。

ど、どういうこと・・・・?

部活動や PTA活動などで、先人が行ってる理不尽な慣習や効率の悪い手順があったらそれを止めて後ろの世代に渡さないということを、自分の中で決めているというのです。

なんか・・・・

そのくらい自覚的に自分の指針が決まっていたら、もう疑問形にする必要なんかないかも・・・・と思わされました。

ム、ムカつく〜〜〜〜〜


ベストを尽くすってなんて怖いことなんでしょう。
「これがベストだ」と言ってしまったらもうそこで成長が止まるのです。だから絶対にそうは言えない。どんな時も「ベストを尽くしたのか?」と問われたら、「ノー」と言うでしょう。どれほど努力を重ねても。

でも一番怖いのは「なぜベストを尽くさないのか」の声が聞こえなくなることです。
その声がするということが、自分の暗闇の中の一等星なのだとじんわりと感じます。

いつまでも、「ノー」を重ねて立ち上がれますように。

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