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幸せな仕事をしたので見てくれ2

「わたし今、ちはやふるのお仕事してるんですよ」

ある夕食会で、旧知の友(と勝手に思っている)エッセイストの紫原明子さんが言いました。

「えっ」

「ユニ・チャームのシンクロフィットのお仕事で、ちはやふるの世界観と合わないことがないように、意見を言わせてもらうみたいな感じで・・・。今ちはやふるを最初から読み直してます」

「えっ」

そう、6月11日にユニ・チャーム「シンクロフィット」とのコラボサイトがリリースとなりました。

このコラボのきっかけになったのは、こちらのnote。

わたしのnoteがというよりは、これを読んでたくさんの方が関心を持って「女性の生理」について考え、言葉にして語り、意見を交わしてくださったから。

シンクロフィットのチームの方からコラボの声をかけて頂いたのですが、わたしが新たに何か描くという仕事はないと聞いていたので、どんなふうなアプローチでのコラボなんだろうと待っていたのです。

そうしたら、これまでの漫画の既存のコマからたくさんの絵がチョイスされ、かなちゃんが千早にシンクロフィットをお勧めするというストーリーラインが出来上がっていました。

シンクロフィットxちはやふる

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すごい。

すごいんですよ。

わかりますか。

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コマを抜き出す、と簡単に言いますが、作者である自分でも「いい感じに使えるコマが○巻の▲ページにある」なんて覚えてるわけもなく、46巻の中から絵を抽出し、物語を編む膨大な作業は「鉱山46個からダイヤを20個見つけて王冠を作れ」と言われてるような大事業。

それをまた、ちはやふるを深く理解してくださってる紫原明子さんや編集者、ユニ・チャームのみなさんと「このキャラはこういうことは言わないんじゃないか」「この流れはちはやふるらしくないんじゃないか」と検証を重ねて磨き上げてくださって、

ほんとうに王冠ができた気持ちになるお仕事に・・・!

このシンクロフィットのストーリーを読んで、ほんとにもう…どれだけ自分が競技かるたをメインで考えていたか、「個々人の体調やかるた以外の個性」を脇に置いてきたかを感じました。

男女同じルールで試合ができることが競技かるたの魅力だと今でも強く思っているけど、やっぱり「ああ、試合の日に生理が当っちゃった」と思うのは女性だけです。

貧血や生理痛の状態で決勝戦に挑むという経験をした選手もたくさんいることだと思います。でも取材をしててもそんな話をしてもらうことはなかった。わたしの引き出し力と想像力が足りなかったことを痛感しました。

そうです。女性である自分でさえも、「本筋に関係ない」と排除していたんです。「試合に影響しない」と切り捨てていたんです。生理痛のない、生理もまるでないかのような女性キャラばかりを描いていたんです。スムーズに進む物語のために。

そりゃあ男性が「よくわからん」と思うのも当然です。

女性には自明すぎて少女漫画では語られず、男性には縁遠くて少年漫画でも語られない。

でもせっかく「老若男女に読まれたい」と思って書いていた拙作ちはやふるであるならば、もっとちゃんと生理について描くべきだった。

物語の中でその辛さを描くことができたら、男性読者や男性のかるた選手にも伝えることができたのに・・・と今になって後悔します。

そんなわけで、シンクロフィットのサイトは女性向けでしょう、と男性の目にはなかなか届かないかもしれないけれど、ぜひ見てほしいです。

千早たちにも生理はあるよ(2度載せる)

このコラボが発表になってから、たくさんのコメントやRTで反響をいただきました。それらをもらうにつけ、女性にとっては生理は切っても切れない生活の一部であることがよくわかりました。

そしてその感覚の多くを男性にはまだ伝えきれてない。

病気をすれば「早く治るといいですね」「こうすれば良くなるよ」と言われます。一般的な「健康」状態がデフォルトでない人もたくさんいるのに、「元気になってね」と言われる違和感。

そして生理も。

「生理の影響のない状態」なんて女性には月の半分程度なのに、そちらを基準にして制度設計がなされ、生理を隠して「普通」の顔をするのがオトナであり社会人であるとされています。

まるで「健康」や「生理のない状態」や「普通」の線が足元にあって、「早くこっち側に来られるといいね」と言われているかのようです。

でも、「生理」という名前がついていることからもわかる通り、この体の現象は病気ではなく「生活の一部」です。睡眠と同じように逃げられないサイクルであって、月の半分にその影響があるならば、もうタブー視してる場合じゃない。

不調がある時も、ない時も、健康にもたくさんの形があり、押し付けられるものではない。

「ひとりひとり体調はいつも違う」ということ、「目の前の人の体調は、今はどうなのだろう」と一瞬でも思えることを、自分自身大事にしていきたいと思います。

物語の中で競技かるたに集中して頑張る千早にも詩暢にもかなちゃんにも「生理がある」とコラボストーリーで描いてもらえたこと、それをサポートするシンクロフィットの後押しをさせてもらえたこと、幸せなお仕事をさせてもらえたことを深く感謝します。

読んでくださったみなさんのおかげです。


シンクロフィットがわたしの生活に登場して、一軍ポーチの常備品となりました(小さくてかさばらないから。それまでは生理用品用のポーチを別に持ってました。)
これだけ持っていればどんな時でも最低限なんとかなる、と思っている精鋭を揃えたポーチの中身を公開します。特に、このカッターとハサミが一体になった真ん中のやつが優秀なんです!手離せません。(でももう買った文具店に置いてなくて探せない・・・。商品名をご存知の方はコメントください。

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ポーチの中の小ポケットに入っていたために写真に取り損ねたグッズがあとちょっとあったので、定額メンバーさん向けにこっそり下に貼ります。どうでもよすぎる情報です。でも私らしい品々です。


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