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令和のお雛様はこうなんだよ

「令和のお雛様はこうなんだよ」
10歳の娘が、やっと出された我が家の雛人形を見て手を加えました。

扇をお内裏様に、刀をお雛様に。

手に持つ小道具を一つ入れ替えた、ただそれだけのことなのに、禁断の行為のようにどきりとしました。


思えば節句人形はたいへんな価値観の固定装置です。

3月3日、雛人形飾り「女児の成長を祝う」。
5月5日、鎧兜の人形を飾り「男児の成長を祝う」。

これ入れ替えたら成り立ちませんよね?女児の祝いに鎧兜飾ること、男児の祝いに雛人形飾ること。今のところ「それは違う・・・」と言われそう。

めっちゃジェンダー問題真正面だな、と感じてから、「雛人形を女の子のお祝いの日ということで何も考えずに出していいのか??」というのを悩んでました。

しかも「雛人形をしまうのが遅れたら、嫁に行くのが遅れる」みたいな変な呪いまでついてくる。

じつは興味があって今年に入って雛人形の歴史を調べていたところでした。
平安時代からあった「ひいなあそび」は女児&男児とも「とおにあまる(11・12歳ま)」までやっていた、今よりよほど簡素なお人形遊びだったようです。

紙が貴重な時代、紙を人形の形に切って遊ぶ、というだけで殿上人しかできなかったものでした。源氏物語や枕草子にも「ひいなあそび」として記述があり、本格的に「上巳の節句(じょうしのせっく)」に使われ出したのは江戸時代。

平安時代の華麗な宮中の様子を模した人形や嫁入り道具、御殿飾りや、豪華な十五人フルセットの七段飾りなどが流行したのは昭和に入ってからでした。

ありありとわかります。どこからか、自然発生的に子供が人形遊びをしていたものに大人の手が入り、「子供はこういうものを喜ぶのだろう」と豪華な人形を買い与えはじめ、華やかな段飾りの雛人形があることが家の権勢を示すことになり、「お子さんの成長のお祝いに」と業者が段飾りの雛人形を売り込む・・・。親や祖父母の義務みたいになっている。

でも、それが悪いとも思えないというか、「孫や子供になにかしたい」という思いが何かに向くのは仕方がないことです。

しかしそれが伝統として固定化されるのは、雛人形でさえ「時代によって結構変わっていく」ものと知った身には窮屈です。

「扇をお内裏様に、刀をお雛様に」

これだけで走る緊張感。

お雛様怒らせたらめっちゃ怖い、とお内裏様が思っているのが聞こえてきます。刀という暴力装置をこれまで持っていたのはお内裏様なのに。「お内裏様が刀を持つ」ことがいかに透明化されていた権力だったのかがわかります。私たちは無条件に受け入れすぎていたな、と思わずにいられません。

二人で刀を持ってもいいし、二人で扇を持ってもいい。その自由をお雛様にあげるのなんて簡単なことと、10歳の娘がさらりと実行します。

そのうち、3月3日に鎧兜を飾りたい、と女の子が言い出してもいいし、5月5日に雛人形を飾りたい、と男の子が言い出してもいい。「シンデレラ城を飾りたい」でもいい。そんなに古い伝統ではないのに、大事にしすぎているものが私たちには多すぎます。

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「灯りをつけましょ ぼんぼりにー」と末娘がおじいちゃんと歌うのは非常にエモい景色ですが、嫁に行くことが最上の幸せでは絶対にないとこれまでのお雛様は全員知っていると思います。

どうか、時には刀を奪い、家族を守ったり自分を守ったり、自分で決められる子供達に成長できますように。どちらかの権力がやたら強い、みたいな友人関係や上下関係や家庭を作りませんように。

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ほら、我が家の雛人形で言えば、どちらもとても美しく「我こそが主役」と男雛も女雛も言っているように華やかです。

私は長女のために祖母が買ってくれたこの雛人形のデザインを、従者のいない二人だけの気高さを、とても気に入っています。


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漫画家 https://comici.jp/users/yuyu2000_0908/storeItems/講談社BE LOVEにてちはやふる(2008年スタート)連載中に結婚→四人の子供を出産→家事・育児・漫画連載を2:4:4の比率でこなす日々。