NFTバブルの先にあるものは? 真の価値「トークングラフ」という新概念
昨今、注目を高めている「NFT」。何かしらのニュースやSNSなどで、見聞きしたことがある人も多いのではないでしょうか。
今年の3月には、Twitter創業者のジャック・ドーシーが自身の初ツイートをNFT化し、3億円超で落札。また米アーティストBeepleのNFTアートが約75億円の高値をつけたりと、世間の注目を浴びる事例がいくつも生まれました。
それから半年が経ち、国内においても、香取慎吾さんがNFTアートのチャリティ企画を行ったり、ももクロがNFTトレカを販売するなど、多くの著名人や大手企業が続々とNFT市場に参入しています。
その流れは、アメリカや日本などの先進国だけではありません。フィリピンなどの途上国においても、NFTゲームの「Axie Infinity」が人々の生活を支えていたりと実用的に活用されています。
僕も半年ほど前に「少しディープなNFTの話」という下記noteを書かせていただきましたが、その頃と比べても、NFTの勢いが増しているなと日々感じます。
今後あらゆるデジタルコンテンツがNFT化されていったとき、どんなことが起きるのか。個人的には、そうなってきたときにNFT単体ではなくネットワークとしての価値が生まれ、それこそがNFTの真の価値になるのではないかと考えています。
そこで今回は、NFTの基本的な価値を改めておさらいした上で、NFTがマス化していく過程で生まれる「トークングラフ」という概念についてnoteに書いてみたいと思います。
NFTは「所有」と「移転」を可能にする
まずトークングラフの詳細に入る前に、改めて"今"のNFTがどんな価値を持っているか、を最初に説明したいと思います。
従来のデジタルコンテンツは、それが提供されるサービスの中でしか存在することができませんでした。例えば、あるソーシャルゲームの中で獲得したアイテムはそのゲーム内でしか使えませんし、マンガアプリで購入した漫画は、そのサービスが停止されたら読むことができません。
つまり、サービス事業者が提供をやめてしまったら、所有そのものが失われてしまう。それがインターネットの世界です。(以下の記事がわかりやすいかと思います。)
一方、物理的な書籍であれば、購入した本屋が閉店したり、その書籍が絶版になったとしても手元に残り続けます。こうした物理空間の「所有」という概念を、デジタル上でも実現したのがNFTです。
NFTはNon-Fungible、すなわち「代替不可能なトークン」を意味します。この唯一無二のデジタルコンテンツを「所有」できるということは、それをサービスの外に持ち出すなどの「移転」も可能ということであり、ここにNFTの価値があります。
イメージで言うと、あなたがポケモンGOでゲットした「幻のポケモン」やマンガアプリで購入した漫画が、メルカリでも売れるみたいなことです。
「モノ」として扱えるから、NFTは高価になる
また昨今、NFTが高額取引されている背景には投機目的もありますが、この所有と移転ができる「モノ」という性質が、その価格を押し上げる理由にもなっています。
これも物理世界に置き換えると想像しやすいと思うのですが、家でも車でも、ほしいと思ったときに「借りる(消費する)」よりも「買う(所有する)」ほうが当然高くなります。金や時計、電化製品などもそうです。このようなセカンダリー市場での売買が可能な「モノ」は、消費やリースと比べ、所有の単価が高くなります。
さらにNFTは、移転の価格や手数料をプログラミングすることができるので、いままで物理世界でも実現できなかったような、セカンダリー市場におけるクリエイターへの還元も実現することが可能です。
例えばブックオフで中古書籍を販売すると、その権利保有者(出版社、作者など)に適正な収益を還元できる、といったイメージになります。
これと同じような形で、弊社がコミックスマート社と進めている共同プロジェクトでは、電子書籍がセカンダリー市場で売買された際に、その収益がクリエイターに還元される仕組みを構築しています。
また近日公開にはなりますが、オンラインチケットの販売においても同様のスキームを活用することで、適正な収益が還元される流通の仕組みを実現します。
NFTが普及してきたとき、真の価値が生まれる
ここまでの内容をまとめると、"今"のNFTの価値は、
1. デジタルコンテンツの所有と移転ができる
2. 移転におけるルールメイキングができる
がメインになると思います。
NFTにはこうした実用価値があるので、既存のあらゆるデジタルコンテンツは徐々に、でも確実に、NFTに移管されていくと考えています。
そうした状況になると、NFTの真の価値が生まれます。それが「トークングラフ」という概念です。
個人的にもすごく可能性を感じている領域ですが、聞いたことのない方が多いと思うので、どういったものかをご紹介したいと思います。
トークングラフとは経済を拡張する「モノのネットワーク」
トークングラフとは、一言でいうと「モノを介したネットワーク」のことです。
SNSが普及した現代では、人とのネットワークを表す「ソーシャルグラフ」という概念がありますが、トークングラフはそのモノ版にあたります。
"モノのネットワーク" であるトークングラフにおいては、どのようなNFTを保有しているかを参照することで、保有する人の趣味嗜好を特定することができます。
そのため、 "人のネットワーク" であるソーシャルグラフが今、経済活動を促進しているように、そのモノ版であるトークングラフも、これから経済活動を促進するために活用されていくと思います。
トークングラフの概念は、身近な例として「運転免許証」や「学生証」をイメージしていただくと理解しやすいかと思います。
運転免許証は本来「運転できる権利を証明するもの」ですが、口座開設や賃貸契約などにおける「身元確認ができるもの」としての価値もあります。また学生証も、本来「学生であることを証明するもの」ですが、映画館などで「割引が受けられるもの」としての価値も持っていたりします。
これと同じように、所有するモノ(=NFT)に外部の人が新たな価値を付与していくことで、その関係性がモノのネットワーク(=トークングラフ)を形成します。
これは事業者側からみると、新しいマーケティング手法などにも活用できます。たとえば実例としてあるのは、PAINT給付金やLootなどです。
PAINT給付金とは、MurAllというNFTアートを扱うサービスが、新規ユーザーを呼び込むために実施した施策です。OpenSeaというNFTマーケットプレイスで取引をしたことがあるユーザーは、MurAllにサービスログインするだけでお金がもらえるというもの。この施策自体は珍しくありませんが、MurAllがOpenSeaと提携せずとも実行できるのがトークングラフの利点です。
またLootは、冒険者をテーマにした8つのアイテム(文字)をオンチェーン上に保持したNFTです。拡張や派生したプロジェクトを作りやすい仕組みになっていることから、多くのオープンソース開発者が熱狂し、Lootをもとにゲームなど好き好きにモノを作り始める、といった現象が起きています。
どちらにも共通するのは、ある特定のステータスに対して外部の人が自由に価値をつけていくという仕組みです。ここでは外の人だけでなく、付与される側の価値も向上するので、win-winな関係を構築することができます。
ここでのNFTの価値は、単一的な「モノ」だけでなく、そのネットワークが生み出す「価値の拡張」です。僕がトークングラフに注目しているのは、まさにこの性質にあります。
たとえば弊社Gaudiyでも、ライブのNFTチケットが周辺飲食店のクーポン券になったり、キャンペーンで獲得したNFTトレカをゲーム内のアイテムとして利用できたりと、価値を拡張するような仕組みを作っています。
NFTを担保にしたファイナンス「NFT-Fi」も
さらにいうと、NFTはファイナンスにも活用することができます。
たとえば、不動産や株などを担保にローンを組めるみたいなもので、NFTを担保にお金を借りる、といったことが可能になります。これをサービスとして提供しているのが、NFTとDeFi(分散型金融)を掛け合わせた「NFT-Fi」です。
物理世界ではオペレーション上、高単価なものしか担保になり得ませんでしたが、デジタル経済においてはロックアップや価値算定がしやすいため、低単価なNFTを集めることでも担保にすることができます。
つまり、デジタル上のありとあらゆるモノが、生活の支えにもなるような世界線です。ゲームアイテムや電子書籍のような小さなアセットでも、集めることで担保にすることができます。
このように、NFTは無限の拡張を実現し、ただのデジタルコンテンツではなく、デジタル資産として生まれ変わります。
さいごに
まだまだ投機的なイメージが強いとは思いますが、NFTには実用価値があり、今後あらゆるデジタルコンテンツが徐々にNFT化していくと思います。
そうした中で、トークングラフのような概念が生まれ、まだ自分も気づいていないような新しい価値もどんどん生まれてくるのではないかと思っています。今後の展開には僕自身ワクワクしていますし、Gaudiyとして未来を創る一端を担えるよう取り組んでいきたいと思います。
追伸
今回は「トークングラフ」をテーマにお伝えしましたが、Gaudiyではファンエコノミーを実現するため、トークンエコノミーやDID(分散型ID)などのブロックチェーン技術を活用したサービスを開発・提供しています。
まだ30名ほどの組織ですが、エンタメの未来を担う大きな挑戦をしています。「ファンと共に、時代を進める」仲間を絶賛募集していますので、少しでも興味持っていただいた方はぜひカジュアルにお話ししましょう!