【短編】サボテン

男はいつまでも思いを引きずる生き物だと聞いたことがある。

かくいう私にも愛した人はいたことがある。

いまでもその人は夢に現れるし、瞼を閉じれば目の前にいる。

かけがえのない存在だった君はいつのまにか手の届かないところにいってしまった。

「別れましょう」

君のはなった言葉は今でもとげとなって心に刺さっている。

別れてから数年たって人伝に聞いた君の話。

病気で亡くなったなんて受け止めきれない。

ドラマみたいな話が自分に起こるなんて誰が予想できるのだろうか。

彼女の友達に聞いた話。

どうやら彼女は末期のがんに侵されてしまっていたらしく、死ぬことを待つしかない状態で私に迷惑がかかる前に縁を切って、私に幸せになってほしかったようだ。

私のことを思って自ら別れを切り出してくれたそうだ。

そんな話を聞いたら新しい恋にはまだまだ踏み出せそうにないな。

君が放った言葉の数々は僕の心に永遠に刺さり続けるだろう。

サボテンの花言葉は「枯れない愛」

私は愛した人の言葉のとげがある、サボテン。

いつまでも一人の人を愛し続ける存在。

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