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【読書感想】六人の嘘つきな大学生/浅倉 秋成

こんにちは!
ゆうやけです!

今回は、「六人の嘘つきな大学生」の感想を書いていきます。

六人の嘘つきな大学生

「2022年本屋大賞」と「このミステリーがすごい! 2022年版」にノミネートされていたので、とても気になっていました。
刊行されてから一年以上経ってしまいましたが、ようやく読むことができました。

あらすじはこちらから

成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。

簡単な感想

この本を読んで感じたことは、
・人は、自分が思い込みたいように辻褄を合わせて考える
・少しの情報だけで、イメージは簡単に変わる
というものです。


以下からネタバレありの詳しい内容に入っていきます。








ネタバレあり感想

人は、自分が思い込みたいように辻褄を合わせて考える

本書は、犯人がどうやって最終選考の事件を引き起こしたのかのトリックよりも叙述トリックが素晴らしい作品でした。

先入観を使った叙述トリックの流れとしては、

最終選考で〇〇さんの悪事がバラされる

8年後の〇〇さんにインタビューをする」

というものです。

悪事がバラされた直後なので、「この〇〇さんは良い人ではなさそうだな…」という先入観が読者の中で作り出されます。
その状態で8年後のインタビューを読むと、些細な言動も悪い方向に捉えてしまうんですね。

具体的に登場人物の一人、森久保公彦を例に挙げると、

最終選考で、高齢者向けに悪徳商品を売りつけていたことが告発される

8年後のインタビューで、「詐欺に騙されるほうが悪い」と発言する

結果的には、最終選考で告発されたことも、それなりの理由があるのですが…

そして犯人が最終選考で事件を起こそうと思ったきっかけも先入観から生じていました。

これらはまさに、「自分が思い込みたいように辻褄を合わせて考える」ということだと思います。

少しの情報だけで、イメージは簡単に変わる

最終選考前に過ごした一ヶ月で作り上げてきた友情も、犯人から告発により、いとも簡単に崩れ落ちてしまいます。
そして、私たち読者もこの本に登場するキャラクターのイメージを転々と変えてしまうのです。

読み終えた後には、登場人物に対して悪い感情をそれほど抱かなくなっていることでしょう。
しかし、これも切り取り方次第なんですよね。

これは物語だけに言えることではないと感じました。
例えば、法を犯してしまった人にもなにか事情があったのかもしれない。
ニュースや報道される一部だけを切り取ってその人を判断してはいけないと感じました。

伊坂幸太郎さんの「サブマリン」を少し連想させますね。

最後になりますが、とても素晴らしい本だったと思います。
ネタバレなしで内容を説明するのは難しいですが、周りの人にも勧めたいと思いました。

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