現代ライターのための「AIとの分業ライティング」講座
現代において、AIライティングツールの活用を視野に入れない物書きは、まずいないでしょう。最近では芥川賞作家ですら、AIの利用を宣言しているくらいです。
「AIを使うまでもないよ」という方もいるかもしれません。
しかし、特にフリーランスやスタートアップなど、リソースの少ないコンテンツクリエイターにとって、AIとの分業は時間と労力の効率化を図るための強力な手段です。
そこで本稿では、AIとライターがどのように分業すると最適なコンテンツが生み出せるのか、また、高品質な仕事ができるか、その具体的な方法について考察したいと思います。
1. ライターの役割と独自性をどこに見出すか
1.1. 意見・最新・具体的・取材
AIがいくら強力になったからといって、人間の仕事が全てなくなるわけではありません。
むしろ「AIは誰でも使える」ので、AIに作業を任せられない部分についてはより競争的に動かねばならないのです。
例えば独自の視点や洞察を提供することが求められます。
ご存じのように、現在のLLMのアウトプットは「いかにもありそうな話」を生成することに特化しているからです。
したがって、次のような項目を文章に入れることが、ライターに必須の要件となってきます。
・経験を基にした、業界課題について独自の意見
・発表されて間もない最新のニュースやトレンド
・細部に至る具体的な事例
なお「AIはストーリーや感情を揺さぶる文章は苦手」という方もいますが、
実際にはそうではありません。「感情を揺さぶるように書いて」と命令すれば、ストーリーを執筆することはさほど難しくはないのです。
例えば以下の文章を見てください。これはChatGPTに「ショートストーリーを書いてくれ」とお願いした結果の一部です。
最新のLLMは、わずか数秒で、ショートストーリーを生み出す能力を持っています。したがって、LLMが「ストーリーを苦手とする」という言説はウソです。
では何を苦手とするのかと言えば、これらがみな「どこかで聞いたような話になる」という点です。
ジョーゼフ・キャンベルの「千の顔をもつ英雄」は、古今東西の物語を研究し、物語の基本構造が共通していることを提唱しました。
ですからもちろん、突き詰めれば、「すべてのストーリーは似ている」のです。
しかし、似ているストーリーの細部を工夫し、新しく見せることが作家の腕の見せ所なのです。
そういう意味で「細部」「具体的」が苦手なAIには、物語の骨格を記述することはできても、名作が生み出せずにいるのです。
また、AIはその動作原理上、最新の知識を取り入れることができません。
できるのは「人間が書いた最新の情報をまとめること」だけです。
そういう意味では、インタビューや現地取材など、一次情報の収集はライターにしかできない重要な作業です。AIは既存の情報を処理することは得意ですが、新たな情報を収集することはできません。
・現場におもむいての状況報告
・関係者の声
・現場の撮影
上の3つは、どんなにAIが発達したとしても、AIだけでは生成し得ないコンテンツです。
つまり「行く」「使う」「見る」という基本的な動作に加え、「細部に至る具体的なコンテンツの生成」という仕事は、人間の領域になるでしょう。
一般論は、生成AIに任せておけば、適当に話を作ってくれます。
AIに話を作らせるのではなく、優秀なアシスタントして、ライターが新しいアイデアを生み出す際のインスピレーション源として機能させましょう。ユーザがインプットした内容から、関連する情報を提供し、ライターが新しい視点を得る手助けをするでしょう。
2. AIライティングツールとの分業方法
ここまでは、ライターの領域について扱ってきましたが、逆にAIの領域はどこにあるのでしょうか。
2.1. 構成における分業
AIが最も得意とすることの一つは、雑多な情報の構造化です。
例えば、数十ページに及ぶ手書きのリサーチ資料を要約し、必要な情報を抽出することが可能です。また、異なる情報源からのデータを統合し、矛盾を解消することにも役立ちます。
つまり、
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生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書
ビジネスマガジン「Books&Apps」の創設者兼ライターの安達裕哉が、生成AIの利用、webメディア運営、マーケティング、SNS利活用の…
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