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今週の【情報通信をとりまく】気になるニュースまとめ

AIブームで大量のデータが流通することとなり、アクセスが一気に集中する年末には「あけおめメール」の自粛依頼もありうる、と。。そのほか、AIによる「調査報道」や「スキルチェック」など、AIがらみのニュースには事欠きません。また、働き盛りのビジネスパーソンに「孤独」が広がっているという話題や、「嫌な仕事を断り続けたらどうなるか」という実験に真面目に取り組んだ学者チームの記事など、とても面白いニュースが盛りだくさんでした!

①「ライバル潰し」をプラットフォームは黙認

削除要請があればすぐに対応するプラットフォームと、これを悪用し、ライバルの創作物に意図的に攻撃を加える人物が実在する、と。これはクリエイターからしたらたまったものではないですが、プラットフォームの力学では時間をかけて審査・保護するよりも、いかに迅速に対応するか、に重きが置かれてしまいます。

ー多くのプラットフォームが手軽に削除要請できる仕組みを採用し、要請があれば速やかに削除に応じている
ーだが、ライバルを封じるための悪用も少なくない。ユーチューブではウェブフォームなどから削除要請を出せるが、23年7~12月に約17万人から提出があった152万件の要請のうち1割以上が誤りや悪用だった

②大企業は5年で十分?ノーベル学者の言葉

ノーベル物理学賞を受賞した中村修二教授の言葉。反大企業、親スタートアップな主張が痛快です。

ー学術研究が中心の日本の大学教授は、本や論文の知識を学生に教えている。それは歴史を教えているに過ぎない。教授が大学の外に出たことも起業した経験もないので、学生も起業の知識を得られないし、その道があることにも気がつかない
ーもし日本で大企業に勤めるなら、大学のような学ぶ場所だと思って行くべきだ。大企業で5年間ほど勉強したらもう十分で、自信が付いたら自分で起業するなり、スタートアップに行くなりしてほしい

③「選挙」と「ミーム」に関する考察記事

無関心層を惹きつける意味ではポジティブな側面もある、と。

ー以前は息抜き程度だった軽妙な話題や流行が、今や本丸の政策論争を押しのけつつある
ーノーベル経済学賞をとった社会心理学者ダニエル・カーネマン氏は人間は瞬時の直感的な判断と、熟考による理論的な判断の2経路を使い分けていると述べた
ー本来、複雑な政治の問題は熟考の経路を要する。だがミームが次々と去来する今日は、直感に基づく判断の連続になっている

④テレグラム逮捕劇に対する評価は二分

テレグラム逮捕劇に対する評価が二分されている。コンテンツモデレーションへの責任と、プラットフォームを一人の経営者の「所有物」とみなすべきかどうか、という両軸が議論のポイント。

ー社会的な問題を引き起こすテクノロジープラットフォームとその所有者を当局が同一視するようになっている可能性がある

⑤メディアが政治情報を発信する意義

政治的知識と格差問題は直結する、と。政治的情報を、広く発信するメディアの存在意義が問われます。

ー社会的に不利な立場にある人の政治的知識の乏しさは、格差問題を深刻化させかねません。ネット時代にも知識格差は存在します。政治的情報を広く届けることは重要な課題といえます

⑥あけおめメールへの自粛依頼も?

AI同士がデータのやりとりをする大量トラフィック時代・・・だれがどうインフラに責任を持つかが問われている。

ー同時多発的に発生するトラフィックは、仮にテキストであっても通信ネットワークへの大きな負荷となる。年始の「あけおめメール」に対する自粛依頼はそれへの備え

⑦情報の質より注目度に価値が置かれる社会

人と情報の接点が大きく変化しました。それに伴い、心の病や学力低下、社会の分断、ポピュリズムの台頭など様々な問題が指摘されるようになりました。メディアや情報社会のあり方は、喫緊の重要なテーマ。

ーテレビや新聞では、意識しなくても社会の重要ニュースを目にしましたが、ネットでは自分が見たい情報や動画が検索でき、それらの履歴から利用者が好みそうな情報が自動的に提示される
ー情報の質より注目度に価値が置かれ、アクセス数が評判や広告収入を生む状況は「アテンションエコノミー」と呼ばれ、偽情報や誤情報の拡散を容易にしてしまう

⑧AIの力で「言語の壁」が溶け出した

これはピンチでもありチャンスでもある。

ー世界の言語の中でも日本語は複雑で難しいとされ、これまで詐欺の成功率は英語圏と比べて低いとされた
ーしかし大手企業が提供するサービスを中心に生成AIが比較的自然な日本語の音声や動画を作成できるようになり、犯罪組織にとって「日本語の壁」はなくなりつつある

⑨ビジネスパーソンの「孤独」の問題

若者、特に働き盛りのビジネスパーソンの「孤独」。これはポストコロナ時代の、隠れた社会問題かもしれない、と。

ーかつてロマンスを求めたマッチングアプリだが、最近ではロマンスというよりも、友人作りやコミュニティ構築のためのツールとして位置付けられている
ー孤立したリモートワーカーやノマドが人間同士の交流を求めるようになったことも大きな要因だ。人々の間に孤独感が広がり、近所のコミュニティからも疎外感を感じている人が増えている

⑩嫌な仕事を断り続けた研究が面白い

膨大な量の仕事に追われ、燃え尽きそうなほど多忙だった4人が「割に合わないシゴト」を断り続け、その結果どうなったかを追跡した話。めちゃくちゃ面白いです。

ー「やんわり断る」より、きっぱり断った方がよいこともわかった
ー引き受けるべきかどうか迷ったときは「自分の仕事の内容と合致するか」「わくわくするか」「すでに取り組んでいる仕事に支障を来すことなくやり遂げられるか」という判断基準に当てはめるとよいことも判明
ー彼女らは「ノー」と言ったことを全く後悔していない

⑪メディアの質が低下する要因は

「クリックされれば配信先は気にしない」という一部広告主の姿勢が、メディアの質を低下させる圧力となっている、と。

ー私の一番の問題意識は、日本の広告費の半分がデジタル広告になり、8割がプラットフォーマーとの取引だとすると、日本の広告費は4割が海外流出することになるということ
ー日本の記者や製作者が手塩にかけた良質な記事やコンテンツがプラットフォームのグローバル資本主義の搾取対象となる「デジタル広告蟹工船」ともいえる状態になってしまう

⑫AIと人間の連携で調査報道?

AIは人間の記者・編集者と連携することで、調査報道などで威力を発揮する(実際にピューリッツァー賞を受賞した事例も)。メディアのAI活用に関する模索が続いています。

ー米メディア業界では昨年来、記事生成に生成AIを使用し、編集者のチェックを経ずにサイトに掲載した結果、内容の誤りや著作権侵害の疑いが指摘される事例が相次いでいる
ー世界の報道機関・メディア各社は生成AIとの適切な付き合い方を模索

⑬スキルが自動判定される時代

営業スキルをAIが判定。同様の横展開はいろいろありそう。

ー「勝ちパターン」にいるスキルや知識を体系化。商談の言動と成果の因果関係のデータなどをAIに学習させて精度を高める
ー社員が「合意形成」といった営業フェーズなどの項目、商談の録音や録画のデータをシステムに入れると、AIが内容を分析
ー採点結果は設定したスキルごとに1~5点で表示。AIが採点箇所の評価の理由や強み、改善点を文章で具体的に指摘する

⑭AIブームは続くが「収益化」に課題

AIサービスはいま期待値の高さに背中を押されている状態?どこまで売り上げをつくっていけるかが勝負、と。

ーAIの収益化でトップライン(売上高)を上げられる企業はまだわずか。ボトムライン(純利益)で投資家にコミットしていくしかない
ーAIサービスの成果よりも、まずは収益改善をアピールして巨額投資への市場の不安を払拭する。ソフト大手の市場予想を上回る利益は評価に値するサプライズだが、AIサービスが軌道に乗るという市場の期待には肩すかしといえそう

⑮「コンビニやりましょう」→周囲は反対

日本が誇る「コンビニ」ビジネスも、最初は周りから反対されまくった、と。いかに新規ビジネスが大変かよくわかります。

ーセブンイレブンの生みの親である鈴木敏文・セブン&アイ名誉顧問が、これまでで最も印象に残っているのは「周囲が反対したスタート時だね。日本には商店街があるし、それがない米国とは違う。だからこんな小さい店なんかダメだと」
ードミナント(集中)出店を進め小商圏を対象とする日本流のコンビニモデルを確立した。こうした手法も当初、周囲から非常識だと反対されたが、2年で100店に到達
ー鈴木氏も91歳。かつてのような柔軟な語り口は少なくなったが、今回のインタビューでは「自分が納得するかどうか」「挑戦しているのかどうか」を何度も企業経営や世界戦略における要点だと繰り返した

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