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「倍速」で映画を見る世代

最近、「タイパ」という言葉が、もてはやされています。タイパとは、「タイムパフォーマンス」の略。デジタル大辞泉にも意味が載っていました。それによると、「かけた時間に対して得られる成果。また、短い時間で効率を上げようとすること。時間対効果」。なるほど、今っぽい。

特に若い世代の中には、YouTubeの動画はもちろん、映画やドラマも倍速で見る人が少なくないとか。実はうちの社員にもいてビックリ笑。でも特に映画って、アル・パチーノにしろ渡辺謙にしろ、台詞と台詞の「間」を味わったりするものだと思うんです。

ただ、時代が変わっていることは確か。単に「昔の方が良かった」と老害的にケチを付けていても仕方がない。柔軟にエッセンスを取り入れることも大事だとは思っています。最近、トナリズムもTikTok/Youtube動画を撮り始めたのですが、専門家のアドバイスをもとに、公開時は普段の1.2~1.5倍くらいのスピードで話しているように編集しています。

話は変わりますが、私は読書が大好きです。本は1500円や2000円で、著者が考え抜いてきたことや、培ってきた経験・知見に触れることができる。コスパが本当に高いと思います。しかし、「タイパはどうか」と尋ねられると、決して高くない。むしろ、タイパが高くないところに価値があるとも言えます。時間をかけ、長い文章を自問自答しながら読む中で、自分の心やマインドに響くフレーズがたった一つでも見つかれば、それは十分すぎるほどのリターンになると思うんです。

よく、本を読むにも「忙しくて時間がない」という悩みを聞きます。文化庁の調査(2018年『国語に関する世論調査』)によると、回答者(16歳以上)の約47%が1ヶ月に1冊も本を読まないと答えたそうです。確かにみんな忙しい。SNSやスマホといった誘惑も多い。それは私も分かります。しかし時間は探せば、必ず見つかるはずです。

私には二人の娘がいて、下の子はまだ0歳です。私の日課は、下の子が起きる朝の5時半ごろに始まります。まず、おむつを替えて、一緒に少し遊んで。それから抱っこひもで抱っこをしながら、読書をしています。日中は、オーディオブックもよく聴きます。電車に乗っている間や、キッチンでお皿を洗うときでも、耳は空いているので、そこからインプットをしたい。

話は戻って、タイパばかり追い求めて手間を惜しむと、得られるはずのリターンを得られないリスクがあると思います。これは、ビジネスの現場においても言えることです。

例えば、一見すると小さなことですが、1本電話を入れることを手間と思うかどうか。大前提として、私は無駄な電話は嫌いです。メールやその他の連絡ツールで済むのなら、相手の時間を奪う電話は極力避けたい。しかし、例えば商談の席で顧客のために確認したいことがあった場合、会社に1本電話を入れて済む話なら、当然電話しますよね。しかし、問い合わせのメールをスマホで担当者に送り、ひたすら返信を待つばかり。その結果、顧客の時間を逆に奪っているわけです。実は最近、これと似たような出来事に出くわしたのですが、タイパや効率性ばかりを重視すると、大事なことを見落としてしまう。そのことを、改めて実感しました。

私たちトナリズムの理念は「半導体ソリューションを軸に世界を進化させ、あなたが大切な人の「トナリ」にいられる時間を増やします。」です。時間の尊さに関しては、経営者の私が病的にこだわります。だからこそ、「なんとなくタイパが良さそうに見える便利なツール」に逃げず、「一見無駄に見えるが、実はとても意味がある時間の使い方」を探求し、プロフェッショナルな仕事をしていきたい。そう思う今日この頃です。