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三現主義

「三現主義」という考え方があり、私は全ビジネスパーソンに必須だと思っています。

① 現場=直ちに現場に足を運ぶこと
② 現物=直ちに現物を手に取ること
③ 現実=直ちに現実を目で見ること

この考え方は、トヨタ自動車をはじめとする日本の製造業で実践されてきました。そして私自身、トヨタグループ系の豊通マテリアルに勤めていた当時、たたき込まれました。

トヨタグループ内で出た金属スクラップなどを買い取り、もう一度溶かして鉄などの素材として売る。私は当時、そのような仕事をしていたのですが、仙台勤務でトヨタ自動車東日本を担当していたときには、とにかく工場に毎日のように連れて行ってもらいました。

例えば金属部品を運ぶドライバーに朝から晩まで付いて、何が何時にどこへ運ばれているのか、全てメモをするよう指導されます。「ある工程にかかる時間は?」「輸送のためのトラックの移動距離は?」。こうしたことを、現場で自分の目で見て理解する。そのうえで、自分たちが扱っている商品の値付けをするわけです。

言葉で言うのは簡単ですが、実践するのは大変です。若手社員だった私も、当時は「なんでそこまでしないといけないの?」と思うこともありました。しかし、外資系企業への転職を経て独立した今も、私はこの三現主義を大切にしています。

トナリズムは半導体商社です。私は有名メーカーの売れ筋型番であれば、聞いた瞬間に商品の外観が頭に浮かびます。

「この型番が15,000個なら、直径10cmの3,000個リールが5個か。それなら、あのサイズの段ボールで送れば、送料は大体このくらいだな」。こうしたことが一瞬で分かり、送料込みの見積もりを提示できます。単に型番だけで話をするのではなく、「この半導体はFPGAでMSL(モイスチャーレベル)が3なので、真空パックに入っています」と具体的な情報を添えられるだけで、説得力が全く違いますよね。

特にトナリズムを始めたころは、社員は私一人でしたから、発注をかけて届いた半導体は当然、自分で検品したうえで梱包し、出荷していました。これが本当に楽しいんですね。例えば、「これが積層セラミックコンデンサか。3万個で、これぐらいの大きさなのか!」と、現物を見ながら理解できるわけです。この現場感を持っている営業が、一番強いと思っています。

トナリズムは今も川崎の本社で半導体を入荷・検品しており、新入社員には実物を必ず見てもらいます。やはり、まるで商品が目の前にあるかのようにお客様に説明できると、信頼感が全く違います。

私は今でも社長室に閉じこもらず、毎月顧客訪問をして「現場感」をキープしています。

これからも、私たちトナリズムは、この「現場感」を大切にして、半導体商社としてプロフェショナルな仕事を継続していきます。

写真は豊通マテリアル時代。若い!