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できる営業とは?

皆さんの中には、営業職の方も多いかと思います。そこで今回は「できる営業」について、私なりの考えを書いてみます。

私はトヨタグループの豊通マテリアルや外資系の半導体商社「フューチャーエレクトロニクス」などで、長らく営業の仕事をしてきました。何千人、いや何万人という人と会ってきたかもしれません。

営業には、いくつかの小賢しいテクニックというものが存在します。ここでは多くは語りません。しかし、その大半は「悪手」にすぎません。仮に誰かを「騙す」ことができたとしても、その後に相手には恨まれ、通用しなかった人には軽蔑されるだけです。

営業として長く愛されたければ、王道を歩むべき。その一つが、相手に興味を持つこと。シンプルすぎて当たり前のように思われるかもしれませんが、私はこの姿勢をずっと大切にしてきました。

営業にとって、顧客との会話は「知的ボクシング」だと思っています。相手との関係性を深めたいのはもちろんですし、どのような価値観を持っているのか探りたい。ですから、私は顧客との雑談一つとっても、何かテーマや狙いを持って臨んでいます。発する言葉や相手との間。こうした一つひとつの要素にも、営業は何らかの意図を込めるべきだと思うのです。

これはビジネス系YouTuberの宋世羅さんがおっしゃっていたことですが、例えば、ネイリストに何かを売り込みたいとします。営業としては、「そのネイルきれいですね」という声かけだけでは一言も発していないに等しい。「私は営業なのですごい清潔感に気をつけているのですが、やはりネイリストとしては男性の爪とかって見られますか」。こう伝えれば、相手も「じゃあ何か教えてあげようか」「話を聞こうかな」と考えるかもしれない。会話のキャッチボールが始まるきっかけになるはずです。

これはある意味、「返報性の法則」にも当てはまると思うのですが、自分に興味を持ってくれていると感じれば、「相手に何かを返そうかな」と思うのが人間です。相手のことも考えず、ただ一方的に感想を述べたり、自分の言いたいことを伝えたりするだけでは、一人でサンドバックに向かっていることと同じ。そして、相手の話を一方的に聞いているだけでも仕事は取れません。

営業に限らず、プロフェッショナルには2段階あると考えています。一つ目の段階が、何かを依頼したときに安心して任せられる人。この前提がなければ、結局は企業のトップや上司が全てのことにコミットしなければいけない。これでは組織はまわりません。

そして、次の段階が相手の心を動かせる人です。マニュアル一辺倒の営業トークやプレゼンテーションでは、人間の心を動かすことは不可能です。なぜなら、それはインタラクティブではなくて、一方通行だから。相手は今、どんなことを考え、何を求めているのか。常に想像力を働かせる。こうした姿勢が重要ですし、場合によっては、自分の腹の内をさらけ出して相手の懐に入っていく「可愛らしさ」や「チャーム」も大事だと思います。

例えば、スポーツの世界なら大谷翔平、音楽であればジョン・レノン。彼らは自分たちのプレーや音楽を通して、人々を感動させることができる。こうしたレジェンドに限らず、経営者でも会社員でも、自分の仕事を通じて人の心を動かせる人こそ、真のプロフェッショナルだと思っています。

営業は本当にクリエイティブで素敵な仕事です。楽しんでいきましょう!

※写真はフューチャーエレクトロニクス時代