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一夜にして借金850万円をプレゼントされて、人生勝ち組になった話①

映画みたいな奇跡なんて、ない。

僕らの毎日はもっと淡々としていて、泥臭くて、平凡。多くの人にとって日常とは、ただ同じように繰り返される日々のこと。

でも、ある日、ふとしたキッカケで当たり前の毎日は姿を変えてしまう。そして、2度と後戻りできないほどにその流れは加速していく…。


※脚色、演出ゼロ。このストーリーは、すべて僕の身に起こった実話です。



1.プロローグ

サイトウ「もしもし、タカハシ!朝早くにごめん!お前、社長のこと知らないか?!」

ぼく「はい、知りませんけど、、」

サイトウ「ああ、高橋、落ち着いて聞けよ。社長…今朝から現場に現れないんだ。飛んじまったらしい」

120万円以上の未払い給料、メガバンク2社の銀行カードローン、クレジットカード6社のキャッシングとリボ枠上限いっぱい、親族から土下座して借りたお金。返済利息も含めると850万円以上にのぼる借金を僕に残し、その朝、社長は消えてしまった。

僕は、ひとりぼっちになった。



2.友達の友達はみんな友達作戦

遡ること10年前。18歳、春。

無事に現役で首都圏の某音楽大学の声楽科に合格し、僕は音楽漬けの充実した日々を過ごしていた。しかし、楽しい大学生活もずっと続くわけではなかった。

プロになれるのは、ほんの一握り。

だいたい、音楽を志してる同世代と数年間共に過ごしてきて、多くの人は、自分の才能の平凡さに気づく。ある時、自分の立ち位置を冷静に理解するのだ。周りの友人たちが就活をし始めた大学3年の春、僕はうたを歌うということを現実的な職業にするにはどうしたらいいかを、ひたすら考えていた。

何故、うたを歌うことを仕事にしたいと思ったのかは、よく覚えていない。というか、未だにわからない。

しかし、毎月安定したサラリーをもらえる生活でないことくらいは容易に想像できた。厳しい業界なら、収入が不安定だろう。


そこで僕は考えた。

収入が不安定ならどうすればいいか?

答えはすぐに出た。

支出を減らせばいい。

そうすれば、生活費のためにアルバイトしている時間を、音楽活動にまわすことができる。


そんなことを考えていたとき、坂口恭平という人の本を読んでモバイルハウスという暮らしを知った。

6畳一間ほどの小さな移動式の家は、ライフラインから独立している。即ち、電気水道ガスが繋がっておらず、基本的にエネルギーはソーラーパネルなどで自給する。場所は駐車場を借りればOK。光熱費はゼロ、家賃もかからないので、1ヶ月10万円もあれば充分だ。

本を読み終わった頃には、僕の頭の中はモバイルハウス生活の妄想でいっぱい。

しかし、冷静になって考えてみる。手先が劇的に不器用な自分。紙ヒコーキすら折れない。紙に線をまっすぐ引くこともできない。ああ、家を自分でDIYするなんて到底無理だ。。

そうか!自分ひとりでできないなら、周りを頼ればいい。この社会は適材適所でできている。僕が苦手なことは、きっと誰かにとっては得意なこと。

でも所詮、大学生。プロに頼むお金なんてないし、人脈もない。そこで、友達の友達はみんな友達作戦を実行。

1.まず、日芸の大工志望の友人にモバイルハウス暮らしの楽しさを熱弁

2.大工志望の友人の友人(看板・塗装屋の息子)を巻き込む。彼の実家の作業場を使わせてもらえることに!

3.高校時代の部活の後輩の友人が建築士の卵だったので、昼飯を奢って図面描いてもらう

4.高校時代の部活の後輩の美大の卒展最終日に2tトラックで乗り込み、展示物の解体手伝う代わりに、ほぼ新品の廃材をタダで大量にGET!

5.廃材で補えないパーツ(ソーラーパネルや屋根など)はホームセンターとAmazonで購入

6.製作過程をブログで公開し、モバイルハウスを置かせてもらう場所を募る

7.ブログを見た友人から、土地を提供してくれる友人を紹介してもらう

8.その友人の友人のご厚意で、土地代0円でモバイルハウスを置かせてもらえることに!

…結果、総額7万円、製作期間1ヶ月でモバイルハウスが完成。
(詳しくはこちらのノートで)



3.悠々自適な0円生活

大学4年の夏。
かくして、神奈川県藤野に家賃0円、光熱費0円、土地代0円で新居(法律的には軽車両)を構えることが決まった。

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半年後。

無事、音大を卒業し、いよいよ本格的なモバイルハウス生活がスタート。ライフラインに繋がっていないが、とても快適な暮らし。


電気: ソーラーパネル(Amazonで15000円程で購入)で自給。ケータイの充電、PC、照明の電源くらいは余裕でまかなえる。

水: たまたま近くに有名な湧き水スポットがあったのでそれを汲んで使う。

ガス: 毎日火起こしするのはめんどくさかったので、火を使う調理のときはカセットコンロを使用。

お風呂: 近所に温泉(400円で入れる)があったので、そこに毎日通っていた。

トイレ: そのまま自然に還すスタイル。これが開放的でなかなか気持ちいい。


家の間取りは「4畳+ロフト2畳」で、ロフトで仰向けに寝ると開閉式の天窓が真上に来るようなロマンチックな設計をしてもらった。

毎日、星空を見上げながら眠りにつく。

アメ横の牡蠣小屋でバイトをしていて賄いを食べられたので、月々の食費もあまりかからなかったのも有難い。月10万もあれば貯金できた。


ほぼ毎日、都内まで出ていたけれど、満員電車とは無縁の日々。音楽活動に専念しながらお金の心配も特にしなくていい。

悠々自適な暮らし。

そんな生活を2年間ほど続けた。

何も心配することがなく、楽しくて気楽な時期だった。


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(写真はモバイルハウス2号)


4.おいしい話

その後、ひょんな出会いからとある元国会議員のおじさまと知り合った。僕の0円ライフスタイルを面白がってくれて、可愛がってもらった。何度かご飯に連れて行ってもらう内に、当時完成したばかりのモバイルハウス2号で「キッチンカーをやったら面白いじゃないか」とアドバイスをもらった。

お酒の勢いもあって話が弾み、いつしかキッチンカーのアイデアは実店舗出店へと膨らんでいた。半分冗談だろうと思いその日は別れると、後日、おじさまから電話がかかってきた。

おじさま「この前の話、友人で物件持て余してる人がいたから話つけておいたわ。来週時間とれる?」

え、ちょっと待って待って。話が急展開すぎん?
そんなお金ありませんけど!!

ぼく「せっかくのありがたいお話ですが、飲食店の家賃を払えるほどお金ないので、、すみません」

おじさま「あ、お金のこと?いいからいいから。そこは俺がなんとかするから気にしないで。じゃあ来週の木曜の3時に…」

僕「え、あ、はい!ありがとうございます!よろしくお願いします!」

ちょっと状況がよく飲み込めないまま、1週間後に物件のオーナーとおじさまと顔合わせすることになった。



1週間後。

山手線の駅から少し離れたところにある、ルノアールに入った。テーブルに着くとおじさまが先に来ていた。

おじさま「おお!今日はよろしく!〇〇(物件のオーナー)さん、厳しい人だけどいい人だから。あ、あと電話で言い忘れたけど〇〇さん、世間では△△って名前で呼ばれていて…」

あれ、ちょっと待てよ。△△って名前、聞いたことある気が。。

おじさま「まあ、きみは若いから知らないかもしれないけどNHKの朝ドラの〜〜〜とか、〜〜シリーズの〜役とかやっている女優さんだから。」

〜〜シリーズと言えば、国民的ドラマやないかーい。完全に僕の親世代のあの女優さんやないかーい。

僕「え、あ。はい。」

おじさま「まあ、別に硬くならなくていいから。前からの友人だし、彼女のパートナーの××さんも来るけど、いつも通りで大丈夫よ」


いやいや。なぜ、顔合わせ直前のこのタイミングで伝えたのか。
しかも相手は2人。知らない間にひとり増えてた。そんなの騙し討ちやん。パートナーってビジネスパートナーのこと?それとも男女の関係的なやつか?うーむ、余計にテンパる。。

そんなことを考えいてるうちに3時になった。
ほどなくして、入り口のほうから明らかに一般人とは異なるオーラを発している2人組が僕らのテーブルにやってきた。


おじさま「おーい!こっちこっち!△△ちゃん、××ちゃん!」

2人組「おー!!□□(おじさまの名前)ちゃん、久しぶり!元気そうだね〜」

彼らは互いをちゃん付けで呼ぶ仲なのか。なんというアウェイ感。

おじさま「まあ座ってよ。いろいろ積もる話もあるけど、今日は例の件で。彼がこの前話した若者だよ」

僕「初めましてっ!高橋ゆうやと申します!!本日は貴重なお時間ありがとうございますっ!!よろしくお願い致しますううう!!!」

直立不動のまま、ルノアールの雰囲気に明らかにミスマッチな大音量で挨拶してしまった。

2人組「おお、君が□□ちゃんの話してた面白い若者か。元気いいね!元気がいいのは素晴らしい!どうもよろしくね〜。まあ掛けて。」

お、意外と好感触だった。部活やっててよかった。

おじさま「で、この前話した件なんだけど、実はさあ…」


ここから、僕の人生は思いもよらない方向に急展開していきます…

つづく

フリーランス7年目/音楽家。大学卒業と同時に、モバイルハウスで家賃光熱費0円生活を開始。カフェ経営、断食トレーナーなどを経て、現在は音楽活動と、NVC(共感コミュニケーション)オンライン講座を運営しています。[https://www.music.yuuya.org]