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神林慎吾というパン職人(1)

神林さんと最初に出会ったのはベトナム・ホーチミン。かなり過去の事で詳細までは思い出せないものの、落ち着いた雰囲気の男性だなという印象だった。
私が今、手伝いをしている会社で改めてお会いし、インタビューしたことをきっかけに、神林というパンで生きてきた本物の職人を深く知ることになった。

神林さんはその会社のベーカリー事業の礎を築いた本人であり、最近でもメディアにしょっちゅう現れる人物(本人はそういったメディア露出に全く興味がない)で、37年という歴史をパン作りで歩んできた、いわば、本物の中の本物だと思う。その人柄は穏やかで、「職人」というワードに纏わりつく、「厳しい」「堅物」といった雰囲気は一切持ち合わせてなく、父を大工に持つ私からすると拍子抜けするようにとても穏やか人柄の持ち主だ。

神林さんは「あと5年」と自分の職人道の終着駅を見据えている。この辺りは潔くもあり、職人気質を感じるところでもある。今は、商品開発を行ったり、各店のシフトにたまに入ったり、コンサルとして外に出たり、趣味の釣りに勤しんだりと、とても充実したライフスタイルを送っているように見受けられる。


神林さんが釣り上げたマグロ

しかし、
そんな神林さんには大きな葛藤がある。
今の会社にもっと職人を育てたい。
なかなか人が育たない。
定着しない。

あと5年でこのまま楽をすることも出来る。でも、そうではない職人として最後の意地を見せるアクションを取りたい。神林さんはその強い想いから「ラボ」を作って、そこで職人を育てる提案を行ったが、その想いが社内浸透して実現を迎えるには時間をかけなければならない雰囲気が強く漂っていた。

会社が大きくなった事、関わる人数が増えた事、人気店が故の日々の工房の忙しさもある。神林さんの想いは強くとも、現実的に難しい点があり、やりたい事へ進めないジレンマに打ちのめされた神林さんは、恐ろしいほどの発想の転換を行い始めたのだ。

神林慎吾というパン職人(2)に続く

loroはリニューアルオープンから3日が経ち、リピーターもちらほら現れ始めている一方で、オープンした週末から見ると1/3程度の客足の中、スタッフみんなの動きが落ち着いてきている。色々と見えてくるのはここからだろう。


神林さんが焼いたバケット。美しい。


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