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#014 珍品カメラ WITTNAUER Continental

 WITTNAUER(ウィットナー)Continentalという少々珍しいカメラを入手しました。WITTNAUER社は1880年(明治13年)創業のアメリカの時計輸入会社で、スイスなどから時計を輸入・組み立て・販売を行なっていました。
2001年にBulovaに買収され、現在もそのブランド名は健在ということです。
 このWITTNAUER社は1956年にボルシー社を買収、BOLSEYシリーズの継続を行い、「WITTNAUER FESTIVAL」という名前で販売を行いました。これを機に1957年〜63年ごろまでの間に、スチルカメラ・ムービーカメラ・プロジェクターの輸入販売を行うようになります。スチルカメラの多くはPaxette(パクセッテ)で有名なドイツのBRAUN(ブラウン)社がOEM生産し、WITTNAUERの銘でアメリカ国内で販売されたようです。
今回手に入れたカメラはBRAUN 「Super Colorette Ⅱ」のWITTNAUERバージョンです。他にもWITTNAUER銘で以下のようなカメラが発売されました。

WITTNAUERカメラ対照表

※オリジナルのメーカー名のみは機種不明。
ファインダーは距離計連動・二重像合致式
BRAUN社のカメラ特有のギラギラのメッキ
アクセサリーシューの「W」マークがなかなかカッコイイです

謎の標準レンズ WITTNAUER Chronostar Corted 1:2.8 f=50mm

 WITTNAUER Continentalはレンズ交換式カメラで、そのマウントはVoigtländer Vitessa Tと同じ規格のデッケルマウント(旧デッケル)です。
標準レンズとして付けられていたのがWITTNAUER Chronostar(クロノスター)。なんとも時計会社らしい名前ですね。
しかしこのレンズ、輸入業社であるWITTNAUER社が独自に作ったとは思えないんですよね。分解してみると3群4枚のテッサータイプで非常に良くできたレンズです。コーティングもイエロー系のしっかりしたものが施されています。レンズの出来から考えても、おそらく銘板だけ交換しているのではないかと思われます。 

残念ながら入手した時点でフィルター枠が歪んでました

 BRAUN社オリジナルのSuper Colorette Ⅱの交換レンズで50mmのものは
Steinheil Cassarit 1:2.8 f=50(トリプレット型)
Steinheil Culminar 1:2.8 f=50(テッサー型 コーティングがブルー系)
Schneider Xenar 1:2.8 f=50(テッサー型 コーティングがブルー系)
Rodenstock Ysarex 1:2.8 f=50(テッサー型)
の4本がラインナップされていているのですが、テッサー型で絞り羽根の枚数が5枚、コーティングがイエロー系という点を考察するとYsarex以外はどれも多少違うように思われます。そのYsarexもレンズ外装の作りや刻印の方法が異なるのです。
 そこで同じ旧デッケルマウントのVitessa Tの標準レンズ「Voigtländer COLOR-SKOPAR 1:2.8 f=50」と比較してみると、なんと鏡筒・各種リング部品の作り、絞りの羽根の形状や刻印までそっくりです。
上記のオリジナルの4本のレンズに、当時デッケルマウント推しだったVoigtländer社が参画していないと云う点も不思議でもあります。
それらを考慮すると、VoigtländerはこのカメラのOEM生産が決定した時点でWITTNAUER社との協業体制を決定しており、「COLOR-SKOPAR 1:2.8 f=50」を多少仕様変更して「WITTNAUER Chronostar Corted 1:2.8 f=50mm」として生産したものではないかと推測しています。

被写界深度表示爪などの作りや素材などとてもよく似ています。
黒いつまみはピント調節リングですが、その周りの刻印などもほとんど同様です
後玉は若干違っています
Chronostarのコーティングは全てのレンズが黄色系
COLOR-SKOPARのコーティングは青と黄色が混在している

M42ミラーレス仕様への換装

 上記のレンズを海外サイトを含めて色々と調べてみましたが、その詳細はほとんど紹介されておらず、その写りに至っては情報は皆無でした。今回手元にきた本体はチャージができず、このままでは使えないため何れ修理するとして、ひとまずミラーレス仕様に換装しその写りを確認することとしました。
 マウントはデッケルマウントなのですが、通常のデッケルマウントはレンズ側に絞り環がなく本体側で操作するのに対し、Voigtländer Vitessa Tのマウントはレンズ側に絞り環が付いているため、専用のマウウトアダプタがなくとも絞りの操作ができます。
 Vitessa Tのマウントアダプタは現在作られていないのか市販品がほぼ見つからない状態だったので、いつもの3点留ネジでM42化することにしました。

こちらの3点留めネジアダプタは以下で購入可能です。
https://florcamera.base.shop/items/66118198

M42のリングを止めネジで3点留めしました
多少隙間が空いてしまったので、黒い厚紙を円形にカットして遮光しました
レンズフードはKoronaの42mm径がちょうどよかったので装着
M42(12-19mmヘリコイドチューブ)を介してFUJIFILM X-Pro2に装着

 謎のカメラの解明ですっかり長くなってしまったので、「Chronostar Corted 1:2.8 f=50mm」の実写は次回にしたいと思います。

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