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W杯前強化試合第2戦を終えて-変化と成果-

 W杯前の強化試合2戦目はAll Blacks XVに27-41で敗れたが、1戦目からの変化と確かな成果が見受けられた。日本代表の最大の目的はW杯で勝利することであり、現段階では選手の強化とチームパフォーマンスを上げる時期である。

 同国との連戦はスタッツから具体的な傾向が見えてくる。注目する点は、ポゼッション(ボール支配率)の数値を上げたことだ。1戦目の41%から56%に上げることにより、日本のスピーディーなアタックをする機会が増えた。結果、3トライを奪取し後半だけを見れば14-12でスコアを上回っている。1戦目の後半は0-27で点差を離されていることから、失速から加速へ変化を起こしたと言える。

 トライ内訳はスクラム、ラインアウトを起点に1トライずつ、ペナルティから速攻で仕掛けて1トライだった。ラックからボールを出すスピードを上げて相手を惑わせ、ディフェンスラインを崩すことに成功した。ラグビーのトライ傾向の多くは、数的優位、1対1の力の差によるミスマッチ、ディフェンスラインのギャップを作り出すことで生まれる。ラインアウトから準備されたサインプレーや多彩な動きを入れて継続するプレーが、その機会を作ったのだ。
 もう一つ着目する数値はゲイン(攻守の境目)する回数とボールを持って走る距離である。ゲイン回数はAll Blacks XVの数値(50回)を上回り、1戦目の46回から59回に増加し、前に出る推進力を上げた。メーター数でも395mで相手を上回り(All Blacks XV 357m)、前回の試合の修正と成果を数値で叩き出した。
 また、直接スコアには繋がらなかったが、スクラムで相手を押すシーンやペナルティを得ることができた。フォワードのセットピースはゲームを大きく左右し、成功率と相手に与えるダメージが脅威となる。更なる強化と一つにまとまることに期待したい。

 また、新たな明るい兆しは、前回の福井に続き、後半途中出場した長田のプレーが光った。日本代表のジャージーに初めて袖を通した長田は、緊張によるプレッシャーを物ともせず、前に出るフィジカルの強さを証明し、トライをお膳立てした。W杯で予選を突破し、決勝トーナメントで勝利するためにはチーム力の層を厚くすることが重要であるため、長田も貴重な存在となった。

 W杯まで残す強化試合は4つである。チーム戦力の充実を図りながら、チームパフォーマンスを上げなければならない。

 思い返せば、2019年のW杯は対戦相手によってボールをキープし続けるポゼッションラグビーとキックでボールを手放しながらもディフェンスで前に出て、エリアを獲得もしくは奪うことに成功するなど変幻自在にコントロールできたことで好結果を生んだ。

 4年経った今、新たなメンバーが加わり新戦術構想も期待できる。日本代表の強みである速い展開ラグビーを追求し、2019年のように世界を脅かす存在になってほしいと切に願っている。

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斉藤祐也(さいとうゆうや)1977年4月28日生
高校1年からラグビーを始める。2年で高校日本代表に選出され、ウェールズ、イングラド遠征に参加。高校卒業後は明治大学に進学し、1年生からロックで出場。大学選手権優勝に貢献。卒業後はサントリーに入社し営業とラグビーを両立。約2年で退社し、フランス1部プロリーグコロミエに移籍する。帰国後は神戸製鋼、豊田自動織機に所属しプロラグビー選手として活動。35歳で引退し、株式会社コーディネーション・アカデミーを設立( http://www.coordination-academy.co.jp/ )。子どもたちに様々なスポーツを指導する教室を展開。ラグビー、スポーツ普及活動を中心にラグビー解説者を務める。フランスリーグ、シックスネーションズ、ワールドカップ2019決勝戦の解説を務めた。
ラグビー元日本代表(CAP14)2000-2002サントリー / 2002-2003コロミエ(仏) / 2003-2006神戸製鋼 / 2007-2011豊田自動織機
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