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母へ送る手紙

母へ送る手紙   作:高木優至


拝啓

元気にしておられますか? こちらは寒さもいくらか和らいで、過ごしやすい日々を送っております。昨年送った手袋は今も活躍してますか? お母さんは飽き性な所があるので少し心配です。頑張り過ぎてないですか? お母さんは女手一つで私たち姉弟を育ててくれました。また熱があるのに仕事に行ったりしてしまう猛者なので、必要以上に無理していないかとても心配です。

篤はちゃんと連絡入れてますか? あいつの事だからきっと何もしてないんでしょうね。でも便りのないのは元気な証拠とも言います。正に篤のためにあるような言葉ですね。聞いていないかもしれないので一応書いておきますが、篤、消防の昇級試験受かったって。「そんなことぐらいでいちいち連絡してられっか。」とか言いそうだけど、念のために伝えておきます。いつも私の陰に隠れていた篤が消防隊員なんて…ちょっと笑っちゃうよね。

覚えていますか? 小学校入学の時、篤が急に「学校行きたくない」って言い出して、二人で無理やり引っ張っていった時の事。篤がすごいワンワン大泣きして、近所の人に笑われてたの凄い恥ずかしかったな。あの時のお母さん「社会に出たら嫌な事なんてごまんとあるんだから、学校行くくらいで我儘言うんじゃないの!」ってすごい剣幕でさ。子供相手にそんなこと言ってもわからないよってちょっと思ってた(笑)いつでも私たちに真剣で、かっこいいなって思ってた。あ、これは内緒だよ?(笑)

私が大学に行くって言った時に、二つ返事で「いいよ。」って言ってくれてありがとう。絶対家計苦しかったのに、姉の私が真っ先に就職した方が良かったのに、何も言わず受け止めてくれてありがとう。もう、お母さんには頭上がりませんわ。足向けて寝られないって思った。けど、たまに足向けてる。ごめんなさい(笑)

そんな私も来年卒業していよいよ看護師の卵です。夢だった白衣の天使になるよ。沢山の人が元気になるお手伝いして、ガッポガッポ儲けるよ。そうしたらさ、やっとお母さんに色々と返して行けるのかな? 本当にやっとだね。

お母さんが脳梗塞で倒れて、施設に入って1年。本当は私たちが一緒に居てあげたかったけど、その時の私たちは本当に無力で。プロに任せるのが一番だって二人で話し合って決めたあの時、本当に悔しかったんだ。お母さん。一緒に居てあげられなくてごめん。

この手紙もどこまで理解できているのかわからないけど、少しでもお母さんの力になれたらいいなと思って今書いてます。ねえ、お母さん。また一緒に小桜公園の桜、見に行きたいね。コメダでコーヒー飲みながらガールズトークしたいね。3人で餃子食べながら、今日の出来事話したいね。篤とバカな話して、バカみたいに笑いたいね。

ねえ、お母さん。今幸せ? 今まで幸せだったかな? たくさん苦労して、また病気でも苦労して、私達も散々苦労かけて。幸せだったかな? 私はね。お母さんの子供で幸せだったよ。色んな事、本当に色んな事があったけど、篤とお母さんがいて本当に幸せだったよ。これからも幸せたくさん積み上げていこうね。約束だよ?

先日、お付き合いしている彼からプロポーズされました。まだ返事はしていません。でも私は受けようと思っています。大学卒業して落ち着いたら結婚式も挙げたいな。その時はお母さんもお祝いしてね? 私もお母さんみたいな母親になります。子供が誇れる母親に。ただ、離婚は絶対にしません(笑)本当にしないよ。お母さんは「最初はみんなそう言うのよ。」って言うかもしれないけど、私は絶対にしません。フラグじゃないからね?

もう少ししたら会いに行きます。その時までお元気で。

敬具

PS:その時は彼氏にも会ってくださいね。ずっとずっと大好きなお母さんへ。

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