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毎週ショートショート『男子宝石』

僕はいつ輝くのだろうか。
いつのまにか、まわりの奴らは輝く星達になってしまった。
たった一人、取り残されてしまった。このまま全てを終えてしまう。僕は拳を握りしめた。
『大丈夫だよ』
柔らかな声がした。いつの間にか若い女性が隣に立っている。華奢な身体を包む白いワンピースが仄暗い闇に浮かび上がっていた。モザイクが入った瓜実顔が僕を見上げている。微笑みを浮かべている様に何故か感じた。
『あなたは星にならなくていい。あなたはあなたの輝く場所がある。勿論、研磨をする事が必要だけどね』
女は隣に立ったまま、そっと僕の右手に触れた。
硬く握った拳が優しい温もりで解けてゆく。それはまるで細胞の化学反応。新しい力が湧き出してくる。
『良かった。元気になった』
『君は誰?』
僕が問いかけた瞬間、女は消えてしまった。
ただ、一言だけ残して。

『この先で待ってるね』
僕は一つ頷いて、首を向ける方向を変えた。



 

たらはかにさんの企画。『男子宝石』に
参加させていただきました。

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