変わった修学旅行に突如現れたシェフヒーロー

僕の高校の修学旅行は少し変わっていた。

まず期間が13泊15日とめちゃんこ長い。


行き先はハワイなのだが、
ホノルル州がある有名なオアフ島では無く
ハワイ島に行き
その中でも田舎っぽい街で期間のほとんどを過ごし
最後の2日間だけをアラモアナショッピングモール等有名な施設のあるオアフ島で過ごす。

うちの高校は私立高校でクラスが1学年20近くある為、
2クラスずつ旅行に行く。

そして泊まる所はホテルでは無く寮のような所で1組4人の8班程に別れ
炊事や洗濯等も自分達でやる。
食料や洗剤も勿論自分達で近くのスーパーで調達してくるのだ。

スーパーには見た事もない名前のバカデカい真っピンクの洗剤や
見た事もない色をしたファンタなどが置かれており
それらを購入していた。
ちょっとしたギャンブルだ。

約2週間の間それらを自分達で行う。

因みにお昼は外で食べたりするため、作るのは朝と夜の2回
14×2=28食。

皆レパートリーが無くなってきて、
肉を焼くだけや
簡単に出来る「袋の素」を使ってのチャーハンやスパゲティばっかりになって来たり
禁断の手、カップラーメンに手を出す者も現れた。

女子達でも、レパートリーに困ったり上手く出来ない日もあるなど苦戦する。

そんな中めちゃくちゃ凄いご飯作ってる奴がいるぞ!という噂が流れてきた。

いざその噂の人物の居る部屋へ向かうと
美味しそうなミネストローネとチーズインハンバーグとアボカドサラダが置いてあった。

もうココスだ。
ハワイでまさかココスに出会えるとは。

肝心の味は…美味しすぎる。

それまで、長らく美味しい物をあまり食べてない事もあり
とてつもなく美味しく感じた。

「どうですか?僕の料理は?
美味しいですか?それは何よりですね〜」

気持ち悪い敬語で話す彼こそがこの料理を作った人物だ。

この喋り方は全く誇張しておらず
彼は常に何故かこの変な敬語で話すのだ。

そして名前は超大物ミュージシャンと漢字も一緒の同姓同名だ。
仮に吉川晃司としておこう。

そんな晃司はそれまでクラスであまり目立つタイプでは無かった。
それは彼が自分から積極的に話しかけるタイプじゃなかったからなのだが
この料理の腕と意味のわからない敬語というキャラクターで一躍男子のヒーローになった。

しかも更に料理の事を深く聞いていくと
「チーズインハンバーグには実は隠し味でマウンテンデューを入れてるんですよ。」

マママ…マウンテンデュー!?

料理に入れる水分にしては少々個性が強過ぎでは無いかい??

それを説明する言い方も丁度面白い言い方で
僕は晃司の虜になった。

また次の日も「素」からでは無く一から炊き込みご飯を作るというストイックさ。

その後もジャンバラヤやロコモコ風丼
など一癖あるメニューをどれも美味しく作り上げ
その部屋には毎日男子達が少しでも料理を分けてくれと集まった。


そして2週間の「ハワイでサバイバル生活」を無事終え通常の学校生活に戻った僕達は
他のクラスの友人にこの吉川晃司の料理エピソードを話しまくった。

すると吉川晃司は他のクラスでもたちまち、面白ヒーローとして人気者になっていった。

やはり男子だけだったが。

その人気にあやかり彼は「ビストロ晃司」というアカウント名で料理を乗せるだけのTwitterを始めた。

最初に載せた料理がガパオライスだった。

チョイスが面白すぎる。ガパオライスて。
でも、ちゃんと美味しそうだ。

センスが最高だな。と
僕は彼の事がどんどん大好きになっていった。


2つ目の投稿は梅うどん。
当時の季節の夏にも合っておりこれもとても美味しそうだった。

だが、クラスや他クラスの少し悪みがあった奴らから
お前調子乗ってんだろwと晃司は馬鹿にされてしまい
晃司は意外と繊細だったので、梅うどんを最後に投稿を辞めてしまった。

僕の大好きなビストロ晃司を辞めさせたそいつらを僕は本気で憎んだ。





それから幾つもの月日が流れ…

彼が都内で自分のお店を開いたという話を友人から聞いた。

久しぶりに晃司と連絡を取ると、お店を僕の為に貸切ってフルコースを提供してくれると彼は言ってくれた。

僕の為にわざわざそこまでしなくてもと思ったが、その気持ちはとても嬉しかった。


当日、事前に聞いていた店の場所に向かうと店の前で晃司が待っていてくれた。

「お久しぶりですね。青砥さん。
良く来てくれましたね〜」

その全く変わっていない独特の敬語の懐かしさに少し感動した。

その店は都心から少し離れた街の裏路地にあり。

店の外観もとても素敵でオシャレなフレンチレストランという感じだ。
店の上の看板には「ビストロ晃司」と書かれている。

店内に入り晃司に案内され席に着いた。
内装も外観と同じくとても素敵だ。

そう言えばとずっと気になっていた事を僕は晃司に聞いた。

「このお店の料理のジャンルとかコンセプトとか聞いてないんだけど教えて貰ってもいい?
店内を見た感じフレンチレストランかな?って思ってるんだけど合ってる?」

すると彼は少し馬鹿にしたような笑みを浮かべながら店の説明を始めた。
「青砥さん。ここはフレンチレストランではありませんし特に決まっている料理の種類もありません。
あえて料理のジャンルを言うならば【晃司】ですかね。
他では出来ない料理体験が貴方に訪れますよ〜」

彼の自信溢れる言い方に少し腹が立ったが、繊細だった彼からは想像出来ないぐらいのオリジナリティを纏っている彼の姿を見て凄く嬉しい気持ちになった。

談笑も終わると彼は厨房へ向かい
いよいよフルコースを作り始めた。

こちらが彼のお店で出てきたフルコースだ。


1品目 アミューズ 「何も入ってないワイングラス~ポッキーを添えて~」

感想 カラオケやクラブでしか見たことが無いこの料理にまさかこんな素敵なレストランで出会えるなんて。

2品目 オードブル「鶏肉と春の野菜とソーダのガリガリ君のファミマの風香るテリーヌ」

感想 隠し味にマウンテンデュー入れる様な発想が更に進化を遂げていた。
まさかガリガリ君が入ったテリーヌを食べれるなんて。。
お味も口に入れた途端、頭の中でファミマの入店時に流れるあの音が流れてくるような味わいでした。

3品目 スープ「マウンテンデュ・ボ・ソワレ」

感想 あの頃隠し味で使われていたマウンテンデューがフランスの風景が思い浮かぶ様な深みのある味わいのスープへと変わっていた。


4品目 ポワソン「魚のポワレ aka マグロ ~平仮名の「め」の穴の所にギチギチに詰めて~」

感想 こちらの料理はテーブルに運ばれてきた時のインパクトが凄まじかった。
因みに平仮名の「め」の部分は食べられない物で出来ていた。


5品目 ソルベ 「晃司の時うどん」

感想 お口直しにと晃司が、落語の「時うどん」を一席披露してくれた。
落語の方も素晴らしい腕をお持ちだった。


6品目 アントレ 「ガパオライス」

感想 ここへ来てついに大本命の登場だ。
B’zさんのライブで「ultra soul」の演奏が始まった時の様な
ゆずさんのライブで「夏色」の演奏が始まった時の様な
大泉逸郎さんのライブで「孫」の演奏が始まった時の様な
そんな感覚だ。

当時はTwitterでの写真でしか見た事のなかったガパオライス。
いざ食べてみるとやはりその日1番の美味しさだった。
この味は一生忘れる事が無いだろう。

7品目 デザート 「ガトーショコラ ナッツのキャラメリゼ」

感想 とても美味しかった。













僕はアオト イン ティラミスというバンドでギターボーカルをしています!
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