脳がカメラのシャッターを押す瞬間
小学5年生の頃、僕は放送委員だった。
僕が通っていた学校では
学年が始まる4月に各生徒ら1年間務める委員会を決める。
ただ、クラスの代表となる学級委員だけは2期制で4月～9月の前期と10月～3月の後期に別れていた。
僕は放送委員で学年で1番早く学校放送デビューしたり、運動会の実況を学年で1番多く務めたりと
放送委員でそれなりに活躍していた為かなり調子に乗っていた。
そしてその後期の学級委員を決めるクラス会議の日、僕は
「え～！放送委員続けたいけど折角だし学級委員やろうかな～
どうしよう！どうしよう！
ん〜！決めた！学級委員やってみる！」
と威勢よく立候補した。
しかし、前期の学級委員を務めた子も立候補し
僕とその子どっちが学級委員になるかクラスで多数決を取ることになり
結果、その子32票 僕2票と言う
圧倒的大差で負けた。
勿論物凄く恥ずかしかった。
多数決の結果が出た瞬間より
「え～！放送委員続けたいけど折角だし学級委員やろうかな～
どうしよう！どうしよう！
ん〜！決めた！学級委員やってみる！」
と自信満々に大口叩いていたこの瞬間が何より恥ずかしかった。
そして、この瞬間の事は
発した言葉の一言一句、教室の風景、匂いまでも鮮明に覚えている。
この様な
とてつもなく昔の事なのに、
当時の事全てが脳内に刻みこまれる程の恥ずかしい瞬間の事を
「僕は脳がシャッターを押した瞬間」と呼んでいる。
この瞬間のことを少し思い出そうとするだけで写真を見ているかの様に、鮮明に全てを思い出せるからだ。
正確に言えばその瞬間の前後3秒位を思い出せるので
ただのカメラよりiPhoneのLive Photes機能の方がイメージは近い。
更にこう言う出来事が起こったすぐ後に、
「あっこの瞬間一生忘れないかも」という予感がする。
そして、この予感は的中する。
多分この予感が訪れた瞬間こそが
脳がシャッターを押した瞬間なのだと僕は思っている。
他にも
小学二年生の時に女子と喧嘩した際
映画「グーニーズ」にハマっていた僕は
今度絶対にデッカいピタゴラスイッチ作って仕返ししてやるからな！
と意味の分からない事を口にしてしまった。
相手の女子も「は？」みたいな顔をしていた。
意味の分からない発言過ぎてその喧嘩は終わった。
その瞬間脳でシャッター音が鳴った。
他にも小学生時代は何回か脳でシャッター音が鳴った瞬間があった。
ただ中学校に入学した辺りからこの現象はパタリと無くなった。
恥ずかしい体験なら
女の子に振られた等の恋愛絡みの物を初め
思春期真っ只中な中学生時代の方が
小学生時代より沢山あるはずだ。
それなのに全く脳のシャッター音は聞こえなくなった。
成長に伴い脳のカメラが鈍ってしまったのか。
いや違う。
よく良く今挙げたエピソードや他の小学生時代のシャッターが鳴ったエピソードを振り返ると
その出来事はただただ恥ずかしいというだけでは無い事に気がついた。
子供特有のアホさと無邪気さと無知さから生まれた
名前を付けにくいよく分からない恥ずかしさなのだ。
そして、大人になった今だと到底耐えられないレベルの恥ずかしさだ。
もう僕は「今度デッカいピタゴラスイッチ作って仕返ししてやるからな！」なんて言葉を女の子に言う事は出来ないし、
自信満々に大口を叩きながら、重要な役職に手を挙げることも出来ない。
それがとてつもなく恥ずかしい事、ダメな事だと知っているからだ。
行動を起こす前に、それが恥ずかしい事だと分かっていないからこそ出来た事だったのだ。
当時でも例の瞬間達はとてつもなく恥ずかしかった。
その恥ずかしさは脳にも伝えられ、
あまりの恥ずかしさで脳がおかしくなったのだろう。
つまり、あのシャッターは脳でバグが発生して起きた現象なのだ。
だから最近この現象が起きない事は良い事なのだ。
もし大人になった今あの頃と同じぐらいのレベルの恥ずかしさを体験してしまうと
「脳がシャッターを押す」程度のバグで済まないかもしれない。
ただ子供の頃のこういう体験は
大人になった今だと絶対に出来ないので特別で尊いものだ。
あの時撮った写真は脳のアルバムの中にちゃんと閉まっておくこう。
3ヶ月後。
僕は極度の恥ずかしさを体験した為
脳がバグを起こし
脳の色が虹色になり
頭部をブラックライトで照らすと青く光るようになってしまった。
僕はアオト イン ティラミスというバンドでギターボーカルをしています！
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