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高次脳機能シリーズ 〜街並失認〜


理学療法士 ゆうきです。


高次脳機能障害の分野から街並失認について説明しようと思います。

街並失認

街並失認とは風景、建物、家具の置かれた部屋などの特定空間に関する情報が認識できなくなることです。

場所は 海馬紡回場所領域
Parahippocampal(PPA)
と呼ばれる部分で、側頭葉内側底面に位置します。



背側視覚路と腹側視覚路

上記に述べたように、街並失認は特定空間における情報処理の問題ですが、優位半球か劣位半球どちらかの損傷によってアプローチを変化させる必要があると考えています。

劣位半球損傷の場合、言語機能に問題がない事から聴覚刺激+腹側視覚路を組み合わせる事で神経回路が更に活性化しやすいと考えます。

腹側視覚路として一次視覚野から四次視覚野へ移行する際、方向や色に反応するニューロンが存在することから、ヒントとしては『この写真はどの方向からの写真か?』『この部分は何色でしたか?』という質問が好ましいかと思います。


優位半球損傷の場合であれば、腹側視覚路からの情報でも良いかと思いますが、神経回路を考慮すると劣位半球が担う空間情報処理に対して背側視覚路を用いる方が好ましいと思っています。

背側視覚路では動きと奥行きの組み合わせをオプティカルフローを利用しながら知覚させます。 


前頭前野の分類

これらが最終的に前頭前野へと投射します。

前頭前野の機能分化として、

背内側前頭前野(DMPFC)→空間ワーキングメモリ
腹外側前頭前野(VLPFC)→物体ワーキングメモリ
背外側前頭前野(DLPFC)→両方のワーキングメモリ

これらを組み合わせると

背側経路→DMPFC
腹側経路→VLPFC

となりますが、どちらか一方だけの障害というのはなかなか珍しいと思われるため、自分はDLPFCをメインに考えていきます。

またヒントの出し方としては、正解の割合が多過ぎず少な過ぎずが丁度良いいので、7割ぐらいの正当数を狙っていきます。

なぜこの難易度かと言うと、

前頭前野においてドーパミンD1受容体との結合能が増加する為に前頭前野が活性化するからです。


まとめと自分の考え


①街並失認は特定の空間障害であるが優位半球損傷か劣位半球損傷を考えると、腹側視覚路+言語情報
背側視覚路+位置情報を考慮する必要がある。

②腹側・背側視覚路は最終的に前頭前野まで投射し、前頭前野の活性化も必要であることから、多過ぎず少な過ぎない正当数が妥当。

③リハビリ以外では、患者の部屋にその写真を提示するか用紙に言語化した状態で、患者自身が見ただけで認識できるようにしておく。その事をリハビリ介入毎に想起させるのも記憶の形成に繋がると考えます。


以上、街並失認について解説させて頂きました。
これからも高次脳機能シリーズを作成していこうと思います。

今回の内容が少しでも皆さんの一助となればと思います。

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