見出し画像

ニューエイジ・アンビエントを聴く①

ここ数ヶ月でニューエイジ・アンビエントが気持ちよく感じる耳になりました。前から度々聴いていたものの、睡眠導入剤的な聴き方がメインで、気に入ったアンビエント作品は数える程だったんですが、嬉しいことに突然変異しましたね・・・。ちょっと前まで、週に1枚、月1枚聴くかどうかだったのに、最近は一日1〜2枚くらいこの辺の音楽を聴くようになってきた気がします。なので、この辺の好きなアルバムとか最近聴いたアルバムについても感想をメモっとこうと思います。今回は日本から5枚、海外から5枚でいきます。ヒップホップと同じく、これもシリーズ化するかもしれませんし、しないかもしれません。

<Japanese Ambient / New Age>

Hiroshi Yoshimura / Green (1986)

画像1

ジャパニーズアンビエント・ニューエイジの大名盤、吉村弘の「Green」でございます。このアルバムは数多のアンビエント名盤を押し退けて、寝る時のお供ランキング全国No.1。これをかけてベッドに入ったら快眠間違いなし!本人たちがレコーディングの最中に寝たとかいうんだからお墨付きをもらっているようなものだ。
優しく包み込むような音色が本当に気持ちいい‥とろけるね。晴れた日の木漏れ日のような暖かさと柔らかさ。忙しい毎日に癒しを与えてくれるようなアルバムで、意識的にこれを聴く時間を持つことはとても重要なことのように思えてくる
そしてジャケも良い。美しい。もし自分がレコード集めてたら絶対買って飾ってると思う。このアルバムは2020年に環境音楽コンピで有名なLight In The Atticからリイシューされている。マジでグッジョブだ。

INOYAMALAND / DANZINDAN-POJIDON (1983)

画像2

こちらもジャパニーズアンビエント・ニューエイジの大名盤。ヒカシューのメンバーである井上誠と山下康によるユニットのデビュー作で細野晴臣が主宰のYENレーベル傘下MEDIUMからのリリース。細野晴臣考案による水を張った水槽の中にマイクとスピーカーを入れて録音する「ウォーター・ディレイ・システム」によって録音されている。なんかカッコいい!検索してみたら現代ニューエイジ・アンビエントの第一人者であるVisible Cloaksが以下のツイートをしていた。

ウォーター・ディレイ・システムのおかげか?、透き通った音像と遊び心のあるシンセサイザーが気持ちいいアルバムで、40年近く前の音楽とはとても思えない。最高だね。FFKTに行く人は出演するみたいだから絶対拝むように!

Aragon / Aragon (1985)

画像3

ティン・パン・アレーのドラマー、林立夫を中心に、今剛、灘波正司、西松一博、浦田恵司といったトップ・スタジオ・ミュージシャンが集結した作られたニューエイジアルバムで、パーカッションやシンセサイザーがかなり独特の質感を醸し出している。どこか民族音楽っぽくも聴こえ、同時期にリリースされたマライア「うたかたの日々」(これもド名盤)を思い出した。レコーディングに2年もかけていることからもわかるように音へのこだわりは並大抵のものではなく、40年近くたった今でも「あら良い音!」と声に出してしまうほど。デカダン!

Fumio Miyashita / Wave Sounds of the Universe (1983)

画像4

日本のヒーリングミュージック界のレジェンド、シンセサイザー奏者宮下富実夫の自身のレーベルからの記念すべき第一弾アルバム。そもそもこの人の目指す音楽とは精神と肉体の解放を目指したセラピーであるとのことで、要は癒しによる治療ってことですね。東洋哲学、東洋医学を学び、それをもとにしたミュージックセラピーの研究をし、各地での講演、奉納演奏、スポーツ選手のメンタルケア、胎教音楽の作成なども行ったっていうんだから、普通の音楽家とは目指していた場所が違うことがよくわかる。だからか、少なくともこのアルバムにはノイズがなく、綺麗に整理された音が鳴っていて、まさにニューエイジといった内容だ。東洋哲学などの影響だろうか、シンセの音色がどことなく東洋の香りを放っている。聴いていると頭の中のモヤモヤが浄化されてスッキリする・・・ような気がする。

Chihei Hatakeyama / Late Spring (2021)

画像5

今年リリースの柔らかく、暖かいアンビエント。今回紹介するアルバムの中でもトップクラスの柔らかさ。輪郭がはっきりしない一方で、音の粒まで聴こえるような精密な音楽。美しい‥。シューゲイザーからノイズを抜き取って残った粒子を均一に整えたようなサウンドスケープで、ちょっと時期を逸してしまったが、Late Springというアルバムタイトルに相応しく、雪解けした春の暖かな日にぴったりの内容が心地よい。畠山地平の作品は初めて聴いたので、他のも聴いてみたい。

<Non-Japanese Ambient / New Age>

Ernest Hood / Neighborhoods (1975)

画像6

オレゴン州ポートランドの風景をテーマにフィールドレコーディングとシンセサイザーを駆使した極上のアンビエント作品。Ernest Hoodは1923年アメリカに生まれ、40年代にジャズギタリストとして活躍していたようだが、50年代にポリオの大流行の犠牲となり車椅子生活に。そして音楽家生活も断念。その後テープレコーダーを持ってフィールドレコーディングに勤しんだ集大成がこのアルバムとのことである。幼少期に体験したある夏の日を時系列に沿って再現するアルバムで、聴いていると本当に過去のあの夏の日にタイムトリップできる、ノスタルジーに溢れた一枚だ。2019年に再発され、ピッチフォークのアンビエントベスト50枚にも選ばれている。

Suzanne Ciani / Seven Waves (1982)

画像7

アメリカの最初のシンセヒーローと呼ばれるSuzanne Cianiによるデビュー盤。70年代には企業CM?か何かの音楽を作成して生計を立てていたが、ずっとやりたかったことであるアルバム制作をついに実現、1982年にリリースした。彼女のシンセの音色はノスタルジーを誘う鮮やかな音で、「7つの波」というタイトル通り、7つの曲が波のように僕らの気持ちに寄り添ってくれる。実際に随所に挿入されている波の音も相まって、その癒し効果は2割増しだ。80年代の空気感を纏ったロマンチックな作風も印象的。疲れた時の心のBGMにピッタリだ。

Software / Digital-Dance (1987)

画像8

ドイツのデュオ、Softwareによる1987年作で、ジャケの通り、海岸沿いのニューエイジ/ダウンテンポ。最近、ヴェイパーウェイヴ文脈からの再評価が著しいらしい。Stone ThrowのDâm-Funkによる発見、同時並行でYoutubeにアップされた音源にヴェイパーウェイヴ勢が注目、たまたまGeroge Clantonが耳にして彼のレーベルから再発という流れのようだ。M1「Oceans Breath」やM4「Island Sunrise」で聴ける波打ち際のフィールドレコーディング、そしてこの海辺のジャケットがこのアルバムのコンセプトを体現している。曲によってはきちんとビートがあり、また、一歩間違えるとダサくなりそうな、ノスタルジックでドリーミーなシンセとサックスがめちゃくちゃ印象的で、とても聴きやすい。

Tim Hecker / Harmony in Ultraviolet (2006)

画像9

カナダの電子音楽家、Tim Heckerの4枚目。畠山地平がインタビューで「アンビエントにはノイズがあり、ニューエイジにはそれがない」って言ってたんだけど、それでいうなら今作はまさにアンビエント。細かいノイズが波を打ち大きな流れを作ることで、全体がうねるように躍動する。少し前までここで紹介しているようなニューエイジの音楽に重きを置いて聴いていたから、この作品の甘美なノイズと暴力的なノイズの合わせ技には「そうそう、これよこれ‥。これも捨てがたいのよ‥」なんて独り言を呟いてしまう。そしてノイズアンビエントの動の動きの合間に挟まれる静寂‥。パーフェクトです。

Jonny Nash / Make a Wilderness (2019)

画像10

UK出身、オランダ・アムステルダムを拠点として活躍するプロデューサーJonny Nashの2019年作も上質なアンビエント/ニューエイジだね。彼のBandcampによると遠藤周作、JGバラッド、コーマック・マッカーシー諸作から影響を受けているということだが、見事に一人の本も読んだことがない!(すみません)
まず、弦楽器によるキィキィした音が効果的に使われており、これが曲に陰影を与えている。そして、呪術的な雰囲気を持ったコーラスや、地下深くで鳴り響いているような不穏なサウンドスケープが、このアルバムの緊張感を終始保つことに成功している。癒しのアルバムというよりは、深い内面に誘われるような、そんなアルバム。


今回は以上なんですが、アンビエント・ニューエイジ音楽について文字で表現しようとするの、他のジャンル以上に難しくないですか‥。語彙力無さすぎて全部同じ表現になるんですけど・・・これも修行か・・・。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?