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140字では語りつくせぬ映画愛:どこへ行くの『スターウォーズ』後編

前編では長々と『スターウォーズ』が「何の物語」なのかを述べたが、後編では『スターウォーズ』の主軸がこれまでの「スカイウォーカー家の物語」から新シリーズになって変容しつつある、という部分に話を進めよう。
 まず旧作との最大の違いだが、主人公がスカイウォーカーの血を引いていない。もはやこれだけで「変容しつつある」なんていう生易しい言葉選びをせずとも断言して今回は終了で十分な気がしなくもない。しかし新シリーズはダークサイド側に準主人公のような立場の男がいるわけだが、こいつがスカイウォーカーの血を引いてしまっている。こいつの今後の動向次第では「やっぱスターウォーズはすなわちスカイウォーカーの話ですね」ともなり得るのだ。特に前作『エピソード7 フォースの覚醒』まではその可能性が十分にあった。『フォースの覚醒』は監督がスターウォーズの大ファンだったこともあり、内容はほとんど第一作目『新たな希望』をなぞったものとなった。また、旧シリーズのファンを喜ばせる様な展開が多く用意され、失われたはずの「アナキン・スカイウォーカーのライトセーバー」が登場した。これは大きい。「アナキンのライトセーバー」はルークに受け継がれたのだが、30年の時を経て再登場し、主人公が握ったことで「スカイウォーカーを象徴するアイコン」の様な役割に昇華された。この出来事は後ほど重要になってくる。そんなわけで(ザックリすぎるが)『フォースの覚醒』まではむしろ旧シリーズの匂いがガンガンに立ち込めている様な状態であった。ファンとしてはこれはこれで「どうせやるならしっかり新しい展開を用意せんかい」と不満に思ったが最新作『最後のジェダイ』は不満とか納得とか以前に衝撃だった。端的に言えば『最後のジェダイ』は前作『フォースの覚醒』があまりに旧シリーズに依ってしまったことへの反動で旧作の要素をことごとく切り捨てたのである。
 絶対に旧作に登場する人物に関係しているであろうダークサイドの親玉スノークはその出自が語られることなく物語から退場させられ、主人公レイはスカイウォーカーやその他旧作の人物とは一切関係のない捨て子だと明らかになり、旧作から登場している反乱軍のお偉いさんがまとめて爆殺され、ついにルークも息絶える。極めつけは「アナキンのライトセーバー」が真っ二つになったことである。これは実に印象的だった。スターウォーズファンは本当にうろたえた。何十年にも渡ってスカイウォーカーの名を冠する人間が手に持っていたいわば「伝説の剣」がめっちゃ簡単にぶっ壊れた。前作において再登場させることで「30年の時を経て再び使われた」「なくなったはずなのになぜあるのか」といった感動や疑問と共に伝説となった「スカイウォーカーの象徴」が新シリーズの主人公二人の手によって破壊された。「うっわ」と思った。結局なんの説明もないまま今度は本当に壊れてしまったのだ。深読みでもなんでもなく作り手が「あらたなスターウォーズを創りたいんだ」という意思を示していることは明確だった。それが新作『最後のジェダイ』だ。ヨーダの劇中の台詞はまるで観客に向かって発せられたようだった。「伝統なんて退屈なだけだ。」「わしら(ヨーダとルーク)の役目は若い世代(レイとカイロ・レン)に越えられることだ。」
 俺にはこの台詞がこう聞こえてしまうのだ。「伝統(ちゃちな映像の大昔の映画)は退屈だ。わしら(旧シリーズにこだわる懐古主義者こと沖津)の役目は若い世代(初めて触れるスターウォーズが新シリーズの世代)に越えられることだ。」と。ラストシーンではこの台詞を補強するかのようにスカイウォーカーや以前のジェダイ騎士とはなんら関係のないフォースの使い手が銀河中に誕生し、新たなフォースの時代が築かれようとしていることが示唆される。
 次回作でどう物語が終着するのかはわからない。次回はまた『フォースの覚醒』と同じ監督なのでもしかすると軌道修正されてしまうのかもしれない。しかし、少なくとも『最後のジェダイ』の監督(フォースの覚醒とは別の人)は「旧シリーズからの脱却と変革」を示し、やってのけた。「スカイウォーカー?ジェダイ?知らね。」だ。そして少数ではあったがそれを称える声も上がった。時代が変わっている。『最後のジェダイ』を観てスターウォーズにハマった子供にとって一番面白いのは『最後のジェダイ』だ。これだけ映像技術が進んだ時代に生きる若者にとって70年代の映像は子供だましだ。時代の流れには逆らえない。勝手にシリーズを再開させといて「新たなスターウォーズを確立したい」だなんて大胆な。文句の一つも言いたくなってしまう。「アナキンがフォースにバランスもたらしたんじゃねえのかよ。」「ハッピーエンドだったはずがお前らの一存で何人殺すんだ。」だが、俺たちはこれを享受する。どこかで「違う」と思いながら考えることをやめ、素直に楽しむことにする。置いていかれるわけにはいかないから。どうせ新作が公開されたら観ずにはいられないから。
 こんなこと書いてまだ22歳だから恥ずかしい。これじゃまるで「一年生若ーい。初々しい。」とか「二年生おばさんだわー。」などと言って暗に先輩ヅラをする女子高生だ。

追記

って記事を書いてたんですよねーーー。そしたら新作予告。真逆じゃん。タイトルが「The Rise of Skywalker」って。めっちゃスカイウォーカーの物語じゃん。

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