居場所ができる 「帰らないで、ここにいて」
自分のところへ来てくれる子
目が合うと、いつも笑ってくれる子がいる。
「ボール遊びしよ!」
元気いっぱいで、その子がいるときは一緒に遊んでいることが多い。
その子が最近、体調を崩していた。微熱がある、咳も少し。マスクをしている日が続いた。風邪か、熱中症か。
目が合っても、表情は変わらずそのまま目がそれる。今までの笑顔はどこへ。近くに座ってくれたり、話してくれたりすることも多かった、けれど。
声をかけるのもためらわれて、見守った。ただ目が合う時が何度かあるだけ。心配。
そんな日が続いた。
こういう時って、自分の方が、その子と前みたいに遊んだり、話したりすることを望んでいるんだということに気付かされる。この思いを前に出して、うまくいった試しがない。大人しくしておく。不器用な自分。こういうところ、まだまだ子ども。子ども心は忘れたくないとも思っているけれど。
今日もその子の様子を見る。お、ちょっと回復してきたかな?何度か目が合う。特に変化はなし。今日も話したり遊んだりすることはなく、帰る時間になった。子どもたちに「またねー!」と声をかけた、その時。
「ちょっと待って!」
全然違う方向を向いて、その子は叫んだ。
座っていたその子は、全然違う方向へと動き出した。
なんとなく、その子のことを見ていると、近くに座っていた子や机や椅子を避けて、バッとこちらに方向を変えて、走ってきた。
「明日来る?」
「明日は休日だから、みんな来ないでしょ〜」
「あ、そっか…。
じゃあ来週!ドッジボールしよ!」
軟らかい綿のボールで、室内でやるドッジボール。その子と仲良くなったきっかけの遊び。
なんだか、すぐには「いいよ」って言えず、
「元気になったらね」
と返した。言葉足らず。どう伝わったか、ちょっと心配。不器用な自分。
「バイバイ」
そう言って、元の場所に戻るその子。
「いや、やっぱり待って!」
やっぱり、全然違う方向に向かって叫んで、全然違う方向に動き出して、色々避けて、こちらに向かってきた。
「帰らないで!ここにいて!」
帰り道、嬉しさでいっぱいだった。
居場所ができるって、こういうことだろう
「ここにいて」
いるだけで、よかった。
ほんとは、器用に声をかけたり、もう少し近くにいられたりできたらよかったのかもしれない。
いや、違う気がする。別に声をかけなくても、近くにいなくても、子どもたちと同じ空間にいるということ、子どもたちと一緒に「ここ」にいることが大切なんだ。
居場所をつくる
自分が居場所の空気をつくる。
そして、子どもが僕の居場所をつくる。
居場所は相互作用なんだと、最近思う。
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