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2020年9月の記事一覧
〘異聞・阿修羅王19〙亀裂
指の先から冷えて来る感覚を押し留めようと、毘沙門天(びしゃもんてん)は握った手に圧を加えた。
(何と言うことだ……!)
実際に顔色が変化している訳でなくとも、内心、蒼白と言って良かった。
「インドラ様……」
想定し得る中で、これは最悪の状況だった。
説明を求める気持ちと、今さら説明など意味をなさないと言う気持ち、何らかの説明があるに違いないと思いたい気持ちが、入れ代わ
〘異聞・阿修羅王18〙岐れ路(わかれみち)
門番たちの様子は、蛇に睨まれた蛙のようだった。
「何をしておる。早う、開けよ」
硬直する二人。殺気を放たれている訳ではないのに、手の震えも流れる汗も一向に止まらない状態に慄く。
「ほ、本日の謁見の刻限は過ぎておりまする。急を要する理由なくば、例え阿修羅王と言えど、お通しする訳には参りませぬ。御用の向きを承ります故……」
役目を果たさんと口上を述べる門番だったが、阿修羅の眼
〘異聞・阿修羅王17〙歯車
その日、阿修羅が見回りから戻るのを待ちかねていたのか、雅楽(がら)は落ち着かない様子で迎え出た。
「王……!」
「如何した?」
普段、阿修羅と似たり寄ったりの落ち着き具合を見せる雅楽であった。滅多にない狼狽した様子に、何か余程のことがあったと直感する。
「……舎脂(しゃし)が……」
「舎脂がどうかしたのか?」
一瞬、雅楽の返答が遅れた。
「……いまだ戻りませぬ」
〘異聞・阿修羅王16〙遭遇
アイラーヴァタで飛び出したインドラは、須彌山(しゅみせん)の上空と言わず、地と言わず、思うまま存分に駆け巡り、幾日かが過ぎた。
「ふむ。やはり須彌山は美しいな」
その頃には、さすがに機嫌も持ち直しており、城でやきもきしている側近たちの顔を思い浮かべては、笑う余裕も戻っていた。
「さて、あやつら……今頃、どんな面(つら)をしておることやら……」
──と、その時、どこからか聞