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2020年8月の記事一覧
〘異聞・阿修羅王15〙行き違い
目の前に立った者たちを、インドラは順に見渡した。
その神妙な顔つき、また、四天王まで連れていることからも、インドラにとって面倒な話を持って来たことは明らかである。かと言って、話も聞かず、無下に追い返すことも出来ぬ錚々たる顔ぶれ。
インドラは如何にも面倒くさいと言わんばかりの、それでいて、半分は面白いことを期待するかのような笑みを浮かべた。
「揃いも揃って、辛気くさい面(つら
〘異聞・阿修羅王14〙前触れ
須彌山には平和な時が続いていた。
摩伽(まか)がインドラとして立ち、須彌山(しゅみせん)を統べるようになって幾星霜。これと言って、深刻な問題は起きていない。
周囲が気をもんでいるのは、未だ正妃不在の一点、ただそれのみである。こればかりは、幾度促しても、どのような娘を推挙しても首を縦に振ることはなく、進展しないままだった。
一方、阿修羅王(あしゅらおう)と妃・雅楽(がら)の
〘異聞・阿修羅王13〙弥勒の入眠
四天王と八部衆が揃ったことで、各地の押さえが整ったこともあり、須彌山(しゅみせん)は一先ず平和な時を迎えていた。無論、摩伽(まか)が正式にインドラとして立ったことも大きい。
きかん坊な側面は否めずとも、治める手腕に問題はなく、何より決して侮られるようなこともなかった。つまり、力はそれだけ強大だと言うことである。
唯一、周囲が気を揉んでいるのは、インドラとなった摩伽が、一向に正
〘異聞・阿修羅王12〙契
自らが正式な八部衆となった式典の場で魔族掃討の命を受け、そのまま出立した須羅(しゅり)は、数日後、何事もなかったように帰還した。
「留守居、ご苦労だった」
「ご無事のお戻り、何よりでございます」
「突如、あのような形で慣れぬ邸に置き去りにしてすまなかった。が、行き届いた佇まい……しっかりと守ってくれていたことがわかる。感謝するぞ、雅楽(がら)……そして、みなも」
雅楽と家人
〘異聞・阿修羅王11〙新世
式典では、まず四天王のひとりである南方の増長天(ぞうちょうてん)が迎え入れられた。
四天が揃い、八部衆の摩睺羅伽王(まごらかおう)、阿修羅王(あしゅらおう)が配置されて完璧な布陣となったところで、摩伽(まか)が雷帝インドラとして立つのである。
須彌山(しゅみせん)に於ける最大の吉事であり、数日に渡って催される祭りとも言えた。当然、住まう者たちにとっての一大行事で、ひと目でも姿