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火属性ニーチェ 『ツァラトゥストラ』と四大元素

火属性

四大元素(火、土、風、水)は人間の性質を象徴していますが、『ツァラトゥストラ』には四大元素がバランスよく組み込まれています。このことから、ニーチェが非常にバランスの取れた性質の持ち主であったことがうかがえます。ニーチェほどバランスの取れた性質の持ち主はなかなかいません。

ニーチェはほぼ偏りのない性質を持っていましたが、「太陽」が象徴である超人を目指し、絶えざる自己超克に励んでいたため、「火」の性質が他の性質に少しだけ優っていたと言えるでしょう。

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四大元素とユングのタイプ論

火=直感型
火の性質:情熱的、創造的、直感的
直感型:可能性や未来の展望に焦点を当て、新しいアイデアや洞察を重視する

土=感覚型
土の性質:実用的、現実的、安定している
感覚型:五感を通じて現実的な情報を重視し、具体的で実際的なアプローチを取る

風=思考型
風の性質:知的、分析的、論理的
思考型:論理と理性を重視し、客観的な分析を行う傾向がある

水=感情型
水の性質:感受性が強く、共感的、情緒的
感情型:感情や価値観に基づいて意思決定を行い、人間関係を重視する

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【火】

ある朝、朝焼けて赤い空の光とともに起き上がって、太陽に向かってあゆみ出ると、こう語りかけた。

君よ、大いなる星よ。いったい君の幸福もなにものであろうか、もし君にひかり照らす相手がいなかったならば。
佐々木中訳「ツァラトゥストラの序説1」

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自分の教えのために火をくぐる者があるにしても──それが何の証明になろう。まことに、自分自身の烈火のなかから、自分自身の教えが生まれてくることが、もっと意味のあることなのだ。
手塚富雄訳「僧侶たち」

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早くもあの灼熱する太陽がやってくる──大地にたいする太陽の愛がやってくる。無邪気さと創造の欲望が、太陽の愛である。
手塚富雄訳「無垢な認識」

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まことに、わたしは太陽とひとしく、生とすべての深い海とを愛する。そしてわたしにとって認識と呼ばれるべきものはこうだ、──いっさいの深みにあるものをのぼらせること──わたしの高みにまでのぼらせることだ。──
手塚富雄訳「無垢な認識」

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【土】

聞け、わたしはあなたがたに超人を教える。超人は大地の意義である。あなたがたは意志のことばとしてこう言うべきである。超人が大地の意義であれと。兄弟たちよ、わたしはあなたがたに切願する、大地に忠実なれと。
手塚富雄訳「ツァラトゥストラの序説3」

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わたしの兄弟たちよ、むしろ健康な肉体の声を聞け。これは、より誠実な、より純潔な声だ。健康な肉体、完全な、ゆがまぬ肉体は、より誠実に、より純潔に語る。そしてそれは大地の意義について語るのだ。──
手塚富雄訳「背面世界論者」

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【風】

正午の太陽がかれの頭上にかかった。そのときかれは問いのまなざしを空に向けた──高みに鋭い鳥の声を聞いたからである。と、見よ。一羽の鷲が大いなる輪を描いて空中を舞っていた。そしてその鷲には一匹の蛇がまつわっていた。

太陽のもとにおける最も誇り高い生き物と太陽のもとにおける最も賢い生き物──かれらは偵察しようとして出てきたのだ。
手塚富雄訳「ツァラトゥストラの序説10」

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いまわたしは軽い。いまわたしは飛ぶ。いまわたしはわたし自身をわたしの下に見る。いまわたしを通じて一人の神が舞い踊っている
手塚富雄訳「読むことと書くこと」

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強力な風のように、われわれはかれらを超えて生きたい。鷲の隣人、雪の隣人、日の隣人として。強力な風はそういうふうに生きるのだ。そして、いつの日かわれわれは、風のようにかれらのただなかに吹き入り、わたしの精神でかれらの精神の微弱な呼吸を吹きさらおう。

わたしの未来がそれを意欲するのだ。まことに、ツァラトゥストラはあらゆる低地にたいして強力な風である。かれは、おのれの敵と、つばきを吐くすべての者に、こう忠告する。「風にさからってつばきを吐くな」と。──
手塚富雄訳「賎民」

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君たちはまだ見たことがないのか。帆がまるくふくらんで、強烈な風におののきながら海を渡ってゆくのを。その帆のように、精神の強烈な風におののきながら、わたしの知恵は海を渡ってゆく──わたしの荒々しい知恵は。
手塚富雄訳「名声高い賢者たち」

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かれはかれの英雄的意志をも忘れ去らなければならない。かれには、高い飛翔の人になってもらわなければならない。単に崇高な人でとどまっていてもらいたくない。──意志をも捨て去ったかれを、天の大気そのものが、高めるのでなければならぬ
手塚富雄訳「崇高な者たち」

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「根本において、一切は静止している」──だが、それに正反対の教えを説くのは、氷雪を融かす暖風である。この暖風は牡牛である

耕作の牛ではなく──狂暴な牛、怒った角をふるって氷を砕く破壊者である。そして、砕かれたその氷は──橋を打ち破るのだ。
手塚富雄訳「新旧の表8」

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【水】

聞け、わたしはあなたがたに超人を教える。超人はそういう大海である。そのなかにあなたがたの大いなる軽蔑は流れ入ることができるのだ。
手塚富雄訳「ツァラトゥストラの序説3」

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わたしの海の底は静かである。だれが知ろう、それが戯れ好きの怪物をかくしていることを。わたしの深部はゆらぐことがない。しかしそこは、泳ぎ遊ぶさまざまの謎と笑いとで、かがやいている。
手塚富雄訳「崇高な者たち」


【引用】
手塚富雄訳『ツァラトゥストラ』中公クラシックス、Kindle版
佐々木中訳『ツァラトゥストラかく語りき』河出文庫、Kindle版

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