ニーチェ 「おのれの世界」
私たちは他者が作った社会の中でルールに縛られて生きる存在ですが、「超人」や『荘子』に登場する「神人」は、「おのれの世界」で子供のように無邪気に遊ぶ存在です。
・おのが精神の世界
・おのれの世界
・完成した世界
・世界を離れて
・世界の外に
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ツァラトゥストラは、三十歳になったとき、自分の故郷と故郷の湖を捨てて、山にはいった。
そこでかれはおのが精神の世界に遊び、孤独をたのしんで、十年間倦むことがなかった。
手塚富雄訳「ツァラトゥストラの序説1」
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小児は無垢である、忘却である。新しい開始、遊戯、おのれの力で回る車輪、始原の運動、「然り」という聖なる発語である。
そうだ、わたしの兄弟たちよ。創造という遊戯のためには、「然り」という聖なる発語が必要である。
そのとき精神はおのれの意欲を意欲する。世界を離れて、おのれの世界を獲得する。
手塚富雄訳「三様の変化」
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わたしは君たちに友を教える、すでに完成した世界をおのが内部にもっている友、善の容器である友を。
──完成した世界をいつも贈り物にしようとしている創造する友を。
手塚富雄訳「隣人愛」
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藐姑射(はこや)の山(神話上の山)に、神人が住んでいる。肌は氷や雪のように白く、体のしなやかさは乙女のようだ。
穀物は一切食べず、ただ風を吸い露を飲み、雲気に乗り、飛竜を操って、世界の外に遊び出ていく。
彼の霊妙なエネルギーが凝結すると、あらゆる物は傷病なく成長して、五穀も豊かに実るのだ。
『荘子』「逍遥遊篇」
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【引用】
ニーチェ、手塚富雄訳『ツァラトゥストラ』中公クラシックス、Kindle版
池田知久訳『荘子 全現代語訳』講談社学術文庫、Kindle版
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