徒然なるままに#2 秋を感じる
夏を象徴する蝉の声が消え、秋分の日も過ぎると、秋の訪れを感じる機会が多くなる。毎年、秋を感じさせるものが私の中でいくつかある。
一つ目は金木犀の香りだ。オレンジの小さな花の集まりを見つけるより先に香りを見つける。朝、駅までの道を歩いているとふっと香る甘さに、秋の訪れを感じる。香りを見つけてから、はてどこかに金木犀があったかと辺りを見回して、ようやく晴れやかな秋色の花に目をとめる。北海道出身の友人曰く、北の大地には金木犀はなく、金木犀に秋を感じるのは本州の感覚らしい。
二つ目は朝夕の肌寒さだ。半袖で暑い暑いと昼間はうだっていたはずなのに、朝夕は秋の寒さがそっと肌を撫でる。冷房の効いた室内だけでなく、屋外でも上着が頭をよぎるとそろそろ秋かと感じる。
三つ目は望月。月が丸い日なんて夏でもあるのに、肌寒さを感じながらふと見上げた空に丸い月が浮かんでいると、月を愛でる季節だと感じる。一年中見える月を何故、昔の人は秋の風物として詠んだのだろうと疑問を覚えながらも、月を見上げて秋を感じる私は日本の感覚に染まっているのかもしれない。
四つ目は虫の鳴き声だ。毎朝大音量で鳴り響く蝉の声から鈴虫や蟋蟀の静かな鳴き声に変化する。鈴虫や蟋蟀の鳴き声は音ではあるが、静寂を感じさせる音だ。鳴り響いているはずなのに、心の水面は波風一つ立てず、凪いでいる。
他にも秋を感じられる場面は多い。文化祭のチラシだとか、ニットが並ぶアパレルショップ、紅葉の特集が増えるテレビ番組……。秋は芸術の秋だとか、食欲の秋だとか、スポーツの秋だとかいろいろと言われる季節だ。秋を感じながら、何かしようかと考えてみる。
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