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コーヒートーク クリア感想

 PS4版にてクリアしました。

 開発はインドネシアのインディーゲーム会社によるノベルゲーム。

 おすすめのインディーゲームによく名を連ねるので前から気になっていましたが、ボリュームは少ないながらも、私好みの小説や映画を見終わったような読後感が心地良いゲームでした。特にキャラクターに合った翻訳のセンスが抜群に良い。

 また、ノベルゲームでありながら、主人公がコーヒーをメインにしたカフェを営んでいるのもあり、プレイヤーがお客様に注文通りの飲み物を提供するというのも面白く、私みたいな飲料の知識に乏しいものにとっては目新しいものだった。

ジンジャーって・・・へぇ~

 では、感想へいきます。


ストーリー

 2020年のアメリカ・シアトルで、夜間にのみ営業するカフェ「コーヒートーク」のバリスタでありマスターが本作の主人公。この店に訪れるお客様にコーヒーなどの飲み物を提供しつつ、それぞれの悩みを聞き、時には相席したお客様同士が心の内を打ち明ける様子を見守っていく、そんな短編物の詰め合わせが本作のストーリーとなる。

 パッケージやダウンロード版の表紙のイラストだけでは分からないことなのだが、このゲームの世界観は現代を基準にしているものの、人間の他にエルフ、サキュバス、ヴァンパイア、人狼などなど、今となってはありとあらゆるジャンルでよく見かける異種族がここでは当たり前のように共存している。

化け猫娘とオーク娘

 では、異種族らしいストーリーが展開するのかといえばそうでもない。種族の異なる者同士の恋物語、数十年以上も付き合いのある物同士の友情物語、父娘のすれ違いによる家族物語などなど。もし登場人物を人間に置き換えても遜色ないような、普遍的なストーリーとなっている。

人間であろうと異種族であろうと

 表面だけをいうとありきたりな話かと思うかもしれないが、キャラクターの個性付けが上手いため、悩み事を言うキャラに対して主人公だけでなく、相席しただけのキャラが意見を言ったり、異種族としての価値観に加え自らの信条に基づいて諭してあげたりと、カフェという特別な空間で裏表なく素のままで交流するところが、読み物として面白いポイントと思う。

 なので、キャラクター物としても目を見張るものがあり、絵柄も日本人向きだから馴染みやすいかな。私はハイドとガラの男友達の関係性が気に入っている。

 ボリュームは人によっては1日あればクリアできる内容。選択肢はないが、注文通りの飲み物かどうかで結末が分岐する。また、2周目の楽しみもある。

雰囲気

 このゲームの1番の魅力は何かと聞かれれば、絵作りであったり、各キャラのセリフ回しであったり、カフェらしいBGMだったり、それらを包む雰囲気が心地良いことかと思う。

 私個人としては、各キャラの個性を引き立てる翻訳された日本語のセリフ回しが優れていると感じた。今の時代に「わんばんこーっ!」なんて翻訳ができるくらいにはね。

わんばんこーっ!

 セリフの魅力をより磨いているのが絵作り。主人公がバリスタなので視点は全てカウンター越しなおかげで、訪れるお客様は常に上半身が見えるようになっている。なので、日本のノベルゲーのようなイラスト差分が顔の表情だけでなく、頬肘をつく、スマホを見る、笑ったり怒ったりして小刻みに体が震える、そして飲み物を飲む、といった上半身の動作が加わったことでアニメのようにキャラクターがより生き生きしているように見える。ここはドット絵の強みかな。

 また、窓越しの風景は1日中雨が降り、街の中だからか人影が横切るのが見えたり、背景ですら静止しているときがない。全体的によく動くゲームと感じた。

 そういったところを丁寧に作り上げているからこそ、このゲームならではの雰囲気作りが上手くいっているように思えた。また、コーヒーを注いだり、食器がカチャリと鳴る音もリアリティあっていいんだよね。

コーヒーと思わせて、はい、シロップ

飲み物の提供

 唯一のゲーム性がこれ。注文された飲み物を出すだけではあるが、プレイヤーが正しい材料を選び、時には正しい順番で作る必要がある。それだけでなく、解放されてないレシピの飲み物を一から作ったり、曖昧な注文をされてもその人にピッタリな飲み物を提供しなければならない。

うん、わかった(わかってない)

 コーヒーだけでなく紅茶、ココア、緑茶と種類は様々。空想の飲み物はないものの、知識のある人ならともかく、私の場合は知らないものが数多くある中、材料まで特定しないといけないものだから、

「ジンジャーラテ? ジンジャーエールの仲間? ジンジャーって何?」
「S T M J? 飲み物の名前ですか? 国連の組織ではなく?」
「ピリッとした? さっぱりしたい? ふぇぇぇ・・・」

 という状態だった。助けてよ、バリスタ。

これくらいならできらぁ

 注文通りでなくても「気にするな」とみんな優しく言って飲んでくれるが、エンディングに影響してしまうので注意が必要。

 また、1番力を入れているのではと思えるのがラテアート。ゲーム進行に影響を与えないオマケみたいな要素だが、意外と本格的な作りをしている。ペンを使ったお絵描き感覚で臨もうとしたら、水に溶けた絵の具の上からペンを走らせる感覚だった。多分、リアルなラテアート体験ができてるのかも。

タイトル「星のカービィ」

 絵描きは学生以来したことないのに・・・私にはムリぃぃぃ。一応、ミニゲームという形でラテアートで遊ぶことも可能。

総評

 ストーリーだけなら1日あればクリアできるくらいにボリュームは少ない。が、読むことに抵抗なければノベルゲームであるからと食わず嫌いしてプレイしないのはもったいないと思う。キャラものが好きな人にはキャラゲーとしてやってもいいし、小説や映画好きには単純に雰囲気を堪能してほしいかな。

 唯一といえるゲーム部分の飲み物の提供も凝っているだけでなく、ちょっとしたラテアート体験が気軽にできるので、絵描きを趣味にしている人はラテアート目的で検討しても良いと思う。

 いやはや、こりゃあインディーゲームのおすすめ常連組なだけあるかな。

ゲーム内トロフィー

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