マイク収録における声優や朗読者のリップノイズ対策

この論考はあるていど時をおいて二回に分けて書かれたものです。
本編は一般的な(とはいっても独自の経験の積み重ねによる知見にもとづいています)対処法です。
追記は「現代朗読」というアプローチのなかで得られたオリジナル性の高い対処法についての論考となっています。

リップノイズに悩むみなさんの参考になれば幸いです。
また著者の水城雄は個人セッションもおこなっていますので、本格的にリップノイズの解消をめざしたい方は足をお運びください。

【前編】

ツイッター( http://www.twitter.com/YuuMizuki )で配信した簡易ドキュメント「マイク収録における声優や朗読者のリップノイズ対策(草稿)」をまとめたものが、以下のリップノイズ対策・前編になります。

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音響スタジオにおけるオーディオブックなどのマイクを使った収録時に、大きな問題となるもののひとつに「リップノイズ」がある。ほかにも「ポップノイズ」「ペーパーノイズ」などもあるが、こちらは解決策が明快なので取り上げない。
リップノイズについて2通りのアプローチがあるので、整理しておく。

ひとつは収録する側からのアプローチ。声優や朗読者に読んでもらう際にリップノイズが発生した場合、基本的には読みなおしてもらう。しかし、さまざまな事情で読み直しができないことがある。
また、こちらがリップノイズが混入したことに気づかないこともある。そういう場合は、収録データを編集する際に、ノイズを除去するしかない。波形を見て手作業で細かく除去したり、さまざまなプラグインのイフェクターを使ったりして作業する。
取りのぞけないことはないが、時間と手間がかかる。つまり経費がかかる。
収録後の作業経費が生じる朗読者は、以後、収録側の気持ちとしては使いにくい気持ちになる。なので、もちろんリップノイズがない読み手であることが理想的である。読み手はこれを目指すことになる。

ふたつめは、その読み手側からのアプローチ。
前記のような理由で、リップノイズは表現そのものには影響を与えることは少ないが、オーディオブックなど「コンテンツ」として固着するようなものにおいては、残念ながら「傷」としてとらえられる。また、作業経費の問題もある。
表現は表現として磨く一方で、収録技術としてリップノイズ対策をしておくのは、読み手としては必要なことだろう。
まず、リップノイズの種類について客観的にとらえておきたい。リップノイズ、という単純な単語にまとめられてしまっているが、実際にはさまざまな種類がある。

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