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№6 -birth いのちの誕生  お産のこと -memory of birthing-

朝5時頃に、お腹の痛みで目が覚める。
そこまでたいした痛みではなく、生理痛のような鈍い重い感じ。
トイレに何度もいって、うんち出したいけど出ないが続く。

急に、甘くてふわふわのパンケーキが食べたい!!!という衝動が溢れ出て、近場の美味しいパンケーキ屋さんを携帯で探す。田舎だから、パンケーキ屋さんがないから、美味しいパンケーキの作り方のレシピを探して、今日作ろ~と考えてメモ。
そうしてるうちにおなかの空きが限界になって、ヨーグルトにたっぷりの蜂蜜をかけて、胃にながしこむ。
気付いたらヨーグルト1パックを完食。

主人を起こして、お腹が痛いことを伝えて、助産師さんにラインをした。
不規則な痛みの波で、たいして痛みが強くないので、陣痛だと確信はなくって、まだお産に繋がってくる気はしてなかった。助産師さんに、まだ大丈夫なのでもう少し様子をみてから連絡しますと伝えた。
よく晴れた朝だった。
朝の光がきらきらと畳に入ってきて、気持ちよくって、
縁側に座って、瞑想をする。主人も隣に座る。
光につつまれ、とっても穏やかな時間だった。
痛みのあいだに訪れる、まっすぐにぴんとした心地の良さは深い瞑想状態に入ったときのようだった。

10時。
どうしても銀行と郵便局に行かなきゃいけない用があったので、主人と車で出発。
時折くる痛みの波に悶えて、車から降りれないので、主人に用を済ませてもらって、
車の中で横になって痛みを逃す。
この時まだ、陣痛の痛みはこんなもんじゃないという思い込みから、前駆陣痛だと思い込み、まだ陣痛だと自覚していない。

12時前に、母と姉が家に様子を見にきてくれた。
母は娘の出産に立ち会いたいと決めていた。姉も仕事がお休みだった為、一緒についてきてくれた。
私は来るのはまだ早いよーとか言いながらも、来てくれてとっても安心した。

13時になって、皆でご飯を食べようと、用意してもらうも、食べれない。時折声を出すほど、痛みが強くなる。
痛い時は、歩き回って痛みを逃す。横になったりすると、痛みの感覚が拡張して、
痛みに対して敏感になることを知った。
うろうろ家中を徘徊する。
合間に母に腰をグリグリしてもらったりすると、気持ちよくって楽になった。

子宮収縮の痛みと共に、血が大量に出る。
陣痛で出血するなんて聞いてないぞ!と、焦り、不安になる。痛みよりも大量の出血で貧血で辛い。
呼吸もうまくできなくなり、過呼吸気味に。
頭がボーッと痺れてきた。
うんちがしたい感じが続いてるせいか、何故かトイレに行くと落ち着くので、陣痛が来る度にトイレに向かう。

見かねた母が「早く、助産師さんを呼んで」と主人に催促して助産師さんを電話をする。

しばらくして、いきみたい!と思った。
陣痛の波の質が変わる。
鋭い痛みはなくなり、重低音の波が押し寄せる。
低い唸り声に変わった。
肛門を抑えて~~と姉に頼む。もっと強く!!!と怒ってしまった

15時。
助産師さんと助手さんが到着。
到着するなり、満面の笑顔で助産師さんが「ゆうみさん、素晴らしい~!」と抱きついてくれた。
出血も心配いらないと聞いて、不安がなくなって、力が抜けた。
助産師さんが来てくれただけで、安心。
私が「いきんでいい?」と聞くと、「見てみようね」と確認して、その時すでに子宮口全開。

助産師さんに、いきんでいいと言われたら、気持ちよくなってきた。
いきみと同時に、しがみついた立ち姿勢から勢いよく、しゃがむ。
まさに産綱につかまるような体勢だった。
たまに回転しながら。赤ちゃんと同調し、回転しながら降りてくる動きに合わせて、私も自然と動いていた。

次のいきみで、水風船が弾けるような、パンって音がして破水した。
いきみの波の間に、どうしても歯磨きをしたくなった。
姉が、たらいと歯磨きセットをもってきてくれる。
自分でも、なぜ?今?と思いながら、歯磨きをしてスッキリ。今思えば、禊だったのかしら。
こんな風に、陣痛の波とともに、冷静な自分と獣のような自分が交互に出てきて、自分でもちょっと面白かった。

どうも心音器の管で繋がれてるのが苦しくなって、「これ外したい」と宮川さんに頼む。
心音の機械を外してもらって、服を急いで脱いで、いつの間にか姉と主人が準備していてくれたプールに飛び込んだ。

「気持ちいい……」

プールに入ってすぐ溢れた声。
40度くらいのあたたかな水に全身が包まれて、心地よかった。
一気にこわばっていた身体の力が抜ける。
いきみがまた来る。
今までと違う種類のいきみの感覚だ。

うーんっ!!!といきむ。

次の瞬間、ぼろんっと、赤ちゃんが飛び出てきた。

一瞬、どういうことか理解できなかった。

助産師さんが胸元にもってきて、抱かせてくれる。
玉ちゃんは、何が起こったんだろう?と小さなおめ目を開けて、あたりを見回したあと、小さく泣いた。

10月17日、15時47分。
助産師さん到着から30分で、たまちゃんが誕生した。

あれよあれよという間に、終わってしまえば、あっという間のできごとで、産んだという実感はまだないまま、はじめましての抱っこをして涙が溢れた。

家族がプールを囲んで、ちいさな命を見つめていた。



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