村上春樹に叱られる
「村上春樹の本のことをブログに書くとハルキストに炎上させられる」という都市伝説を吹聴されたことがあり、彼のことを扱うときは十分に気をつけてきた。というか、長文投稿の場ではほぼ話題にしたことがなかったように思う。
自分は熱心というほどではないけど村上春樹氏の作品は好んで読ませていただいている読者であるし、ハルキスト各位に燃やされるようなことをここに書くつもりはないのですが、文学部で美術史を勉強してきたものとしてはそれなりの感想は持っています。で、今回は氏の著作の感想など…
書くわけないでしょう。こんな偉大な小説家の作品に感想だなんて滅相もない。やれやれ。全く。期待を裏切られたと感じる人がもしもいたらブラウザバック頼むよ。
「じゃあどうしてこんな釣りみたいなタイトルにしたんだ?」と煽られそうですが、そのまま。氏に叱られそうだなと思う内容なので。そして語呂がよかったので。
AppleMusicでジャズ聴けるのって便利だよね!ってことを書きたかっただけ
ね? 叱られそうでしょう? でもラジオジョッキーを務め、ユニクロとコラボしたりコレクションをまとめたムック本なんかも出すようになった今の氏なら多めに見てくれそうじゃないですか? なんて思ったりもする。
サブスクリプション
私も最初は抵抗がありました。iPodにはもう十年以上お世話になってきたけどそれでもCDでiTunesに取り込んで新曲を手に入れてた。それが、聞き放題であっても「月額を払って音楽を借りる」ようなの、落ち着かなくないか?と。
実際そうして聞けなくなったアルバムもあった。でもしばらくしたらジャケットや配信元が変わって復活してることもあったし、公式がサブスクでアルバム全解禁してたこともあった。それでもやっぱり気に入った音楽はCDを買って手元に置いてます。「コレクター」というのになれない性分なので、CDを集めているわけではない。あくまでも音楽を楽しめればOK。正直、音質もすこぶる悪くなければそこまで気にしない。というか、違いがわからぬ輩なのである。
ステレオかデジタルか生演奏か
iPodで音楽を楽しむ私に対して、でかいスピーカーでCDをかけてみせる父。音が立体的に聞こえてくるそうで「小さなイヤホンで聞いてて「音楽」を聴いた気になってるのか?」など喧嘩を売られたことがある。吹奏楽部で楽器に打ち込んだ経験のある私は「生演奏に勝るものはない」と言い返した。演奏に比べたら、レコードだろうがデジタル配信だろうが私にとっては同じ価値といっても過言じゃなかった。
他の人の意見を訊いてみたことはないけど、これがジェネレーションギャップというものなのかもしれない。皆さんはどう思うだろうか。というか春樹氏はどう思っているのだろうか。
『ポートレイト・イン・ジャズ』
ジャズにはまったきっかけが氏の著書、和田誠氏挿絵の『ポートレイト・イン・ジャズ』だった。
古本屋で文庫(カラーなので800円くらいする)を購入したものの、雑記ものは手が伸びず長いこと積読だった。だが読み始めたら止まらない。和田氏のイラストが鮮やかで目を引くこともあるが、1アーティスト4ページの字数に納められたエッセーは読みやすく、ページがどんどん進んだ。
その中から何人かに付箋を貼った。ファッツ・ウォーラー、ルイ・アームストロング、そしてビル・エヴァンズ。
ビル・エヴァンズ
なお、多くの場所で「ビル・エヴァンス」と表記されているのだが、春樹氏が頑なに「エヴァンズ」と訳されているので私はこちらに準じている。
エヴァンズの章は「村上春樹にこんな文章を書かせるのか」と思うほど美しく繊細なものだった。彼にこんなエッセーを書かせるビル・エヴァンズの音楽はどんなものなんだろう?と興味をそそられて、まずエヴァンズのアルバムをいくつかAppleMusicで調べた。本当に便利なもので、ジャズ、クラシック、映画のサウンドトラック、洋楽からアニソンまで、使い手が興味さえあれば無限に楽曲が出てくる。エヴァンズも当然出てきた。
濾過装置を経て輝く美しい宝石。こんなにも耽美主義的な表現をする春樹氏はなかなか読んだことがなかったが、音楽を聞いたらまさにその通り。キラキラと宝石が輝くようにぽろぽろとピアノの音色がジャズのリズムに乗っている。そこに入ってくるスコット・ラファロのベースが、その瞬きを引き立てるような漆黒の夜を演出している。
いいなあ。こんな世界があったんだな。調べれば調べるほどジャズにハマった。それもそうだ。私が大好きなディズニーと時代を同じくしているんだ。特に付箋したファッツ・ウォーラー、ルイ・アームストロングなんてどおりでパークの雰囲気を思い出すはずだ。エヴァンズのアリス・イン・ワンダーランドは大好きです。
きっかけとしてのサブスク
そんなジャズとの出会いがあったので、片手でぽちぽちすれば巨匠の作品に辿り着けるサブスクってありなんじゃないかなと思った次第です。そこから本当に好きになって手元に置いておきたくなったら、CDなりレコードなりを蒐集することになるのでしょう。
そんなわけで
『ポートレイト・イン・ジャズ』の第1弾の単行本を買ってしまった。当記事のサムネイル右側がそれである。
文庫とは違い挿絵が大きく、oil on canvasで描かれていることがよくわかる。また文庫のカラー印刷に艶があるのに対して、単行本ではマットな加工になっているので同じ絵ながら感じ方が異なる。何度でも読み返して楽しめる作品だし、また新しいジャズを聴きたくなった時には手引きとしてページを捲らせていただこう。
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