【米国株】PERの罠(事例:テスラ株)
EV大手のテスラ(TSLA)の24年Q1(1-3月)販売台数は予想45万4200台に対し結果38万6810台でした。前四半期比で約20%減、前年同期比では8.5%減でした。市場予想を下回る悪い数字でした。また、予想値との解離が激しいこと、前年比、前期比ともにマイナス成長であることは非常に印象が悪いです。
株価は2021年の過去最高値から60%下落しました。一方で、一時期は1000倍を越えていたテスラのPERは現在38倍とかなり下がってきました。この現象を見て、もっと株価が下がってきて、テスラのPERがS&P500の20倍を下回る水準まで下がってくれば割安であり、それは買い時なのではないか?と考える投資家もいるかもしれません。
もし、テスラに注目している投資家がいるとするならば、彼らはこう考えていると思います。現状EVの勢いは鈍化してきているが、これは一時的な話であり、いずれは大部分の車がEVへシフトするという世の中の流れは変わらない。であるならば、EVの王者であるテスラは長期的には買いである。またテスラには自動運転技術やロボット、自然エネルギー事業がある。これらも長期的には大きな事業に成長するだろう。そんな将来有望なテスラが割安になってくれば絶好の買い場である。
EVシフトは時代の流れであり、いずれそうなるのかもしれません。その時の王者はテスラなのかもしれません。EV以外の事業も大きく成長するのかもしれません。しかし、それらすべてが現時点では非常に不透明な話です。現時点で判明していることは、テスラの成長率は鈍化が続き、ついに販売台数がマイナス成長にまで落ち込んでしまったということです。
この成長の消失をマーケットは織り込んできて株価は下落し、PERは縮小しているのです。
ただ単にPERさえ下がれば割安であると判断していると、もっとも輝いていた時期が終わり、落ち目になりつつある銘柄、マーケットが終わったと判断した銘柄が割安で魅力的な投資先に見えてしまいます。将来は有望だ、などという買い理由は、魅力的だと思った自分の判断を正当化するための口実にすぎません。まず買いだという判断ありきであり、それを裏付けする理由を見つけ出してきただけなのです。
このようなPERの罠に陥らないためには、まずPERより先に銘柄の成長性を吟味する必要があります。きちんと投資家の期待を上回る成長を出せているのか、をチェックしなければなりません。成長に期待するグロース株投資であるならば、銘柄のPERよりも成長にこだわるべきだと考えます。
どうしても崩れた元成長株を買いたいならば、それはグロース株投資ではなくバリュー株投資です。その株が再評価されるカタリストの有無、それがいつ頃表に出てくるのか、また、なぜ割安放置されているのか、その理由、そしてこの株は放置しておいて良いと判断されている状況が好転するのはいつなのか。そういったことに注目すべきです。単にPERだけを見ていても、ずっと割安という場合も多々あります。
まとめると、投資においては、PERより先に銘柄の成長性やなぜそのようなPERで評価されているのかという背景事情に注目すべきであるということです。でなければ、落ち目の株ばかり割安だと誤認してしまう事態に陥ってしまいます。
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